山門をくぐると、眼前には池が広がる。馬酔木は参道程ではないが、池周りにも静かに咲いていて、このお寺を趣あるものにしている。右手の灌頂堂へ進み本堂に入る。裏側を一回りして九体仏に参拝。全て国宝か重文だが、静かなこの寺の佇まいとも合わさって、何か豊かなものが胸を満たすように感じる。
吉祥天女にも会うことができた。
庭園に出て、池の端に出ると対岸に三重の塔を臨む。花盛りの森に久しく聞いていなかった鶯の鳴き声が響いていた。
小さな寺院だから、心ゆくまで浸っていても1時間半もあれば、再び山門に着いてしまう。
やはり交通の便が心許ないので、帰りのバスも気になる。
ごく緩々と降って来たら目の前にバスが来た。古い時刻表を信じていない連れが、走って行って運転手に行先を確かめていた。
加茂の駅に行くという。古い時刻表を信じたら1時間待ちぼうけだった。
バスに飛び乗り明るく人里の中ではあるけれど、信じ難いほど深い山の中から40分掛けて関西本線の加茂駅に着いた。
京都駅に辿り着くには、まだまだ長い時間がかかったが、長年計画倒れだった春の大和路旅行は、ひとまず終わった。