名張から普通に乗り換え、桜が満開の室生口大野に着いたのはまだ午後もごく早い頃。駅前に待っていたバスに乗ると、ひどく急な狭い坂道を下って行く。数分すると窓の外が華やかで人も沢山いる。大野寺だそうな。境内には枝垂れ桜が満開で、しかも何本もある。桜祭りの雪洞まである。こちらは全く知らなかったが、地元ではさぞ有名な桜の名所なのだろう。下車して見物したい所だがバスは1時間に一本だけなので、目的の室生寺へ直行する。
写真などでは何か開けた印象もあって、ごく侘びた場所への期待は薄かった。たしかに最近は寺を訪れる人が増えたらしく、随分整備されたように思ったが、それは嬉しくも外れ、進むほどに深山の印象が深くなった。
石楠花の時期が良いよ、と人伝に聞いていたが、確かに本堂への階段はもとより、周り中石楠花が植えられている。しかし、そこここに咲いている桜は実に美しかった。なまじ大木や由緒ありそうな古木ではなく、適当に若く適当に大きな木々であるのが心地よい。
参詣の人もさ程多くはないが、数人抱え程もある杉の大木にも気圧されて、実に静かだ。
かの有名な五重の塔へ行き着くまで、室生寺の心地よい雰囲気に浸ることができた。