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蝶ヶ岳を目指し麓の三俣から川沿いをしばらく歩きやがて急登な登山道を延々と6時間、ようやく稜線に出ると穂高連峰の大パノラマが目の前に広がった。
疲れが吹っ飛ぶほど感動した。
遅めのランチをしていると男女10人程のパーティーが隣りで食事の準備を始めた。
「係長、疲れたでしょう?」
「係長、荷物持ちますよ」
と会話が聞こえ係長と思しき方に眼をやると白髪のご年配の男性だった。
その男性が
「係長、係長って言うなよ。恥ずかしいじゃないか⁈」
定年間際でまだ係長で恥ずかしいと意味で発したのか本意はわからない。
しかしこれだけ歳の離れた部下達から慕われている上司はきっと情も信頼も厚いのだろうと感じた。
「係長、これ食べてください」
相変わらずその調子で会話が続く。
雄大な山容を背景に微笑ましい山での一コマだった。
※GBS:ギラン・バレー症候群