スローな生活

日々の生活の中で感じたことなどを書き綴ります。
犬や猫などの絵を描いてブログに載せています。

雪の舞

2017-12-08 12:00:29 | 短編小説
ふわりふわり舞い落ちる雪
美しいモノクロームの世界
ゆったりと流れる時間に身をゆだねていると
メールの着信音が静寂な空間に鳴り響いた。

受信メールを読んだ光一の目の前に 
まるでタイムスリップしたかのように
浮かんできたあの日の情景

忘れられないひとり旅・・・



『雪の舞』

東京で珍しく元日に雪が降った。
 
絵を描くことが趣味の光一は
窓越しにふわりふわり
舞い落ちる雪を眺めながら
スケッチブックに鉛筆を走らせていた。

ゆったりと流れゆく時間を満喫していると
静寂な空間にメールの着信音が鳴り響いた。
受信メールを読んだ光一の目の前に
あの日の情景が浮かんできて
まるでタイムスリップしたかのようだった。

2年前の忘れられないひとり旅・・・

当時の光一は25歳
大学を卒業して社会人3年目
気ままなひとり旅が好きな光一は
オホーツク海の流氷を見るために
網走へと向かった。

光一は流氷に会いたくてしょうがないという
はやる気持ちを抑え、流氷砕氷船に乗った。
船が動き出してすぐに流氷を発見。
氷がどんどん大きくなっていき
しばらくすると、流氷が一面に敷きつめられ
周りがすべて白一色の壮大な世界になった。

オホーツクの壮大な白い海をビデオカメラで
撮影していると、女の子が話しかけてきた。
路線バスや観光施設で見かけていて
彼女もひとり旅をしているようだったので
光一は内心彼女のことが気になっていた。

「すいません、そのカメラの望遠であそこをみてもらえますか?あれって、アザラシですよね」
彼女が指さす方向を追ってみると
彼女の言う通り、アザラシが流氷の上で
寝そべっている姿を見ることができた。
「たしかにアザラシですね。でもよくわかったね」
「私って、目がいいんですよ」
「きみも覗いてみなよ」
光一はビデオカメラを彼女に手渡した。
「わあ、可愛い、ほんとうにアザラシですね」
彼女は屈託のない笑顔を光一に向けた。

この出会いを切っ掛けに会話がはずんだ。
彼女の名前は舞子、札幌在住の18歳で
高校3年生。
仲良しの友人達は大学受験の真っ最中・・・
卒業後に就職する舞子は、この時期
無性にひとり旅がしたくなった。

「“舞子”っていい名前だよね」
「生まれた日に雪が舞っていたので“舞子”と名付けられたんですけど、私も気に入っています」
雪のように白い肌をした舞子は
真っ直ぐに光一を見ながら明るく微笑んだ。
「生まれた日に雪が舞っていたということは、2月生まれかな・・・」
「ピンポーン、当たりです。実は2月8日、今日が私の18歳の誕生日なんですよ!
 今回、誕生日の記念旅行としてきました。流氷に会えて本当に良かったです」
「今日が誕生日とは・・・アザラシも見れたし、流氷に会えて誕生日のいい記念になったね」

気ままなひとり旅同士として知り合って
たちまち意気投合した2人は、
流氷を満喫した後、行動を共にした。

「舞ちゃん、お腹すいたでしょ。まずは腹ごしらえということでお昼を食べに行きましょう」
光一はいつの間にか舞子のことを
“舞ちゃん”と呼んでいた。
「せえので食べたいものを同時に言いませんか?」
舞子は明るく満面の笑みを浮かべて言った。
2人同時に「せえ~の」と掛け声をかけた後
2人同時に「おそば~」
2人同時に心から笑った。
2人ともそば好きだった。

入ったレストランで
2人とも山菜そばを注文した。
盛りだくさんな山菜、太目の麺が
なんとなくワイルドな感じで
この地の雰囲気に合っている感じがした。

「光一さんもそば好きなんですね」
「大好き!駅の立ち食いそばを食べてから会社に行くのが日課なんだ」
「私もそばが大好きで、自宅でそば打ちをすることもありますよ」
「自宅でそば打ちとはすごいな・・・そういえば北海道はそばの生産量が日本一なんだよね」
「北海道は“そば王国”なんですよ。そば好きな人が多いと思います。 私の周りは
 そば好きな人ばかりです。"そば"の授業が必修科目になっている高校もあるんですよ」
「光一さんはそばの花を見たことがありますか」
「写真でしか見たことがないなあ・・・可憐な白い花だよね」
光一は白い花が好きだった。

観光スポットのいくつかを見てまわり
楽しい時間を一緒に過ごした2人は
メールアドレスを交換し網走駅で別れた。

光一は宿泊先のホテルまでタクシーで行き
フロントで手続きをし
エレベーターに向かった。
エレベーターのドアが
ちょうど閉まるところだったが
エレベーター内にいた先客が光一に気づいて
ボタンを押して開けてくれた。

「ありがとうございます」
お礼を言って先客をみた光一は驚いた。
なんと先客は舞子だった。
舞子も驚いた様子で
「びっくり、同じホテルだったんですね」
と言った。
舞子に「何階ですか」と聞かれ
「5階です」と光一は答えたが
すでに5のボタンに灯がついていた。
「同じ階とは偶然ですね。」
舞子はとびきりの笑顔で光一に言った。

2人はホテルのロビーで待ち合わせ
夕食を一緒に食べることにした。

夕食時に光一は舞子の誕生祝いとして
アメジストのブレスレットを贈った。

アメジストは舞子の誕生石だが
舞子へのサプライズとして
待ち合わせ前に買っておいたのだ。

「男の人からプレゼントをもらったことがなくて・・・すごく嬉しいです」
そのブレスレットを着けて
舞子は嬉し涙を流した。

網走駅で別れたはずの2人が
ホテルのエレベーターで再会
こんな偶然ってあるんだな・・・
その夜、光一はなかなか寝付けなかった。

あくる日、2人は札幌まで一緒に行ったが
贈ったブレスレットを
舞子が着けているのを見て
光一は嬉しくなった。

札幌に着くまでの間
2人はとりとめもなくいろいろな話をした。

「東京に来ることがあったら案内してあげるよ」
「4月から社会人なので、お金をためて東京に遊びに行きます。そのときは東京案内して下さい」
「舞ちゃんは雪が似合いそうだね・・・東京で5月に雪が降る場所があるんだけど、
 舞ちゃんに見せたいなあ」
「網走なら5月に雪が降っても珍しくないけど・・・」
舞子は訝しげな表情をして光一を見つめた。

その旅での出会いをきっかけに2人は
メールのやり取りをするようになった。
当初の光一にとって
舞子はいとしい妹のような存在だったが
メールのやり取りを続けていくうちに
舞子への気持ちが膨らんでいき
かけがえのない大切な存在になっていた。


受信メールは舞子からのものだった。
そのメールには
「あけましておめでとうございます。5月の連休を利用して東京に遊びに行こうと
 思っているんですが、案内してもらえますか?雪が降る場所を見せて下さい。
 光一さんと再会できることを楽しみにしています」
と書いてあった。

5月3日、舞子との再会当日
光一はスケッチブックを抱えて
はやる気持ちを抑えながら
雪が降る場所に向かった。

光一の自宅近くの公園に
“なんじゃもんじゃ”という木があり
その白く美しい花は木を包み込み
その白い花のかたまりが
まるで雪が降り積もっているように見えて
とても風情がある。

雪が降る場所とは
なんじゃもんじゃの木がある場所のことだ。

「お久しぶりです」
舞子が満面の笑みを浮かべ
小走りになって駆け寄ってきた。
舞子は驚くほど美しく変身していた。
「あれ・・・ずいぶん変わったね、すごくきれいになったよ。」
「お化粧して化けているんで・・・」
舞子は笑いながらはにかんだ。

光一はひとり旅をしていたあの時の女の子と
目の前にいる女性とを結びつけようと
舞子の顔を覗き込んだ。
舞子は驚いた表情で見返してきたが
光一はその澄んだ瞳のまぶしさにひるんで
思わず瞬間的に目をそらした。

予想した通りの感情が湧いてきて
光一の心を締め付けた。

そのとき風が吹いて
なんじゃもんじゃの白い花が雪のように
ふわりふわり舞い落ちてきた。
舞子は雪のような白い花を
手のひらで受け止めようとした。
その仕草に光一は驚いた。
光一がずっと思い描いていた仕草だった。



「やっぱり、舞ちゃんは雪が似合うな」
光一はつぶやいた。
「舞ちゃんに見せたいものがあるんだ」
光一は持っていたスケッチブックを
舞子に向かって開いて見せた。
そこにはふわりふわり舞い落ちる雪を
手のひらで受け止めようとしている
女性が描かれていた。
「舞ちゃんをイメージして描いたんだ」
「すご~い、私に似てますか?」
スケッチブックを受け取った舞子は
その絵を顔の横に掲げながら言った。
「そっくりだよ、絵が完成したら舞ちゃんにあげるね」
「わあ、嬉しい」
舞子は光一がイメージした通りの
美しい女性になっていた。

「北海道では8月に雪が降る場所があるんですよ。光一さんに見せたいなあ」
舞子はいたずらっぽい笑顔で言った。
「雪が降る場所はそばの花畑がある場所のことだよね」
可憐な白いそばの花が一面に咲く風景を
思い浮かべながら光一は言った
「ピンポーン、当たりです。北海道のそば畑は広くて綺麗ですよ。案内するので、ぜひ遊びに来て下さい」


「光一さんからもらったブレスレット、大切に使っています」
「懐かしいなあ、舞ちゃんに贈ったブレスレットだね」
ブレスレットを着けた舞子の左手を持ち上げ
光一は言った。

そして自然な流れのままに
どちらからともなく手をつないだ。

「舞ちゃんのそばにずっといたいな」
光一がつないだ手を強く握ると
舞子はさらに強く握り返した。

「舞ちゃん、お腹すいたでしょ。まずは腹ごしらえということでお昼を食べに行きましょう」
せえので食べたいものを同時に言いませんか?」
舞子は明るく満面の笑みを浮かべて言った。
あのときと同じシチュエーション!
2人同時に「せえ~の」と掛け声をかけた後
2人同時に「おそば~」
2人同時に心から笑った。
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折り鶴が舞い降りる

2017-11-27 12:35:00 | 短編小説
夢だと気付かずに夢を見ているように
今見ているこの現実が夢だとしても
不思議ではありません。

主人公の舞子は高校1年生で
夢と現実の区別がつかない
不思議な体験をします。



『折り鶴が舞い降りる』


昨夜から降り出した雪は
今朝になっても降り続き
あたりをすべて静寂な
白一色の世界にしていた。

高校1年生の舞子は
いつものように学校に向かったが
自宅から学校まで徒歩三十分程の道が
降り積もった雪によって
白く覆い隠されていた。
見慣れた風景は全て白く染まり
舞子は自分がどこにいるのか
分からなくなってしまった。

「いったいここは何処なんだろう」

音もなく降り続く雪は
舞子を白く染めていき
舞子の意識はだんだん遠のいていった。

学校には舞子の居場所がなかった。
朝、教室に入って
「おはよう」と声をかけても
誰も挨拶を返してくれない。

クラスの皆は舞子に見向きもしないで
いくつかのグループに分かれて
談笑している。

座席は入学当初のまま
出席番号順に並んでいて
舞子の席は窓際の一番後ろだったが
まるで教室の後ろ隅に隔離されているような
孤独感があった。

窓際の後ろから二番目の席
つまり舞子の前の席に
「陽子」という名前の子がいた。
舞子と陽子は入学当初から気が合い
お互いを「舞ちゃん」「陽ちゃん」
と呼び合い
まるで姉妹のように
仲が良かった二人だったが
陽子は夏休みを境にして
舞子に何も伝えずに転校してしまった。
夏休み明けに担任からの説明で初めて知り
舞子はショックを受けた。
親しくしていたのに
なぜ話してくれなかったのか・・・
舞子の前の席はずっと空いたままになった。

おとなしい性格の舞子とは対照的に
陽子は誰とでも仲良くなれる
明るい性格だった。

高校に入学したばかりの頃
陽子は休み時間になるたびに
折り紙で折り鶴を折っていた。

「なぜ折り鶴を折っているの」
舞子は折り鶴を折る理由を聞いてみた。
「祖母が入院しているの。お見舞いに千羽鶴を作ろうと思って・・・」
「早く元気になるようにとひとつひとつ願いを込めて折っているの」
「私にも折らせて。心を込めて折るから・・・」
陽子が魂を込めて折っている姿を見ながら
舞子は言った。

それからしばらくの間、休み時間になると
ふたりで折り鶴を折るようになった。
折り鶴に命を吹き込む共同作業は
舞子にとってとても楽しかった。
ふたりにとって折り鶴は
単なる「紙」で折った鶴ではなく
命を宿した生き物のようにも思えた。

陽子は手のひらに折り鶴を乗せて
満面の笑みを浮かべながら
「このまま空に飛んでいきそうだね」
 と言った。

陽子がいなくなってから
クラスの皆から避けられているような
違和感を舞子は感じるようになった。
まるで魂の抜け殻のような舞子の佇まいが
他を寄せ付けなかったのかもしれない。

屋上へと続く階段を上りきったところにある
踊り場は二人にとってはお気に入りの場所で
昼休みにお弁当を食べたり
放課後に他愛もない話をして過ごす
贅沢な空間だった。

踊り場にある扉には
「立ち入り禁止」の張り紙があり
鍵がかかっていて
屋上へいけないようになっていた。

陽子がいなくなってからも
舞子はその場所に足を運んだ。
陽子との思い出を確かめるためだったが
居場所のない舞子が
避難する場所でもあった。

ある日の昼休みにその場所に行くと
鍵がかかっているはずの扉が開いていた。
舞子は不思議に思いながら
屋上に足を踏み入れると
そこには一人佇む女子生徒がいた。
舞子と彼女の視線が交わり
どちらからともなく会釈をした。
「いつもは鍵がかかっているんですけど・・・」
舞子は訝しげに言った
「私、鍵を開けることができるんです」
と彼女はこともなげにそう言ってから
「教室には私の居場所がなくて・・・」
と言って寂しげな顔を舞子に向けた。
「私もそうなんです」
舞子は共感した。
会話が弾んだように思ったが
不思議なことに後で振り返ってみると
その時どんな話をしたのか
思い出せなかった。

それ以来、昼休みになると
舞子は引き寄せられるように屋上へと向かい
彼女との会話を楽しんだ。

彼女についてわかっていることは
上履きの色から同じ一年生だということと
扉の鍵を開け閉めできて
扉が開いているときに
彼女が屋上にいるということだった。
舞子が不可解に思ったことは
同じ一年生なのに屋上以外の場所で
彼女を見たことがないということだった。

やがて舞子は気になる噂を耳にした。
過去に屋上で飛び降り自殺があり
それがきっかけで屋上が
立ち入り禁止になったということだった。

まさか彼女は・・・

舞子は思い当たる節があり胸騒ぎを感じた。
舞子は彼女に会って確かめたかったが
その噂を聞いて以来
彼女に会うことはなかった。

ある日、いつものようにその場所に行くと
ずっと閉まったままだった扉が開いていた。
前夜から降り出した雪が
屋上一面に敷きつめられていた。

降り積もった雪の上を歩いて
足跡をつけることが楽しかった・・・
舞子は無邪気な子供の頃を思い出しながら
自分の存在を確かめるように
一歩一歩雪面に足跡をつけていった。

ふと気配を感じて振り返ると
彼女が舞子を見つめながら佇んでいた。
彼女がゆっくりと近づいてきたとき
舞子は彼女の正体を確かめることができた。

雪面に彼女の足跡がついていなかったのだ。

彼女は舞子に向かって
静かな口調で話し出した。
「私はここから飛び降りて自殺したけど、自殺しても居場所がなくて・・・」
「自殺しなければよかったとすごく後悔しています。」
「居場所って自分で作るものだということがわかったし・・・」
「私のことを大切に思ってくれた家族や友人がいたのに・・・」

彼女の話を聞いているうちに
だんだんと意識が遠のいていき
気が付くと舞子は雪面に独り
仰向けに横たわっていた。
視界いっぱいに広がる冬空から
真っ白で綺麗な雪がふわりふわり舞い降りて
あたり一面を白く染めていた。

「いったいここは、何処なんだろう」
舞子は起き上がろうとしたが
身体が動かなかった。
「このまま雪と同化して、雪と共に解けて消え去るのも悪く無い・・・ 」
スローモーションのように
ゆっくりと舞い降りてくる雪をみていると
まるで空中を浮遊しているような
不思議な感覚があり心地よかった。
舞子は静かに目を閉じ
その心地よさに身をゆだねた。

「舞ちゃん、起きて」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
舞子が目を開けると
舞子を覗き込む陽子がいた。

「舞ちゃん、ごめんなさい。黙って転校しちゃって・・・」
「実はいじめを受けていて、学校に行かれなくなってしまって・・・」 
「一番ショックだったのは、舞ちゃんと一緒に折った千羽鶴をお見舞いに持っていこうと思って
 ロッカーから出したら取り上げられて教室の窓から投げ捨てられたこと・・・」
「他のみんなは見て見ぬふりをしていて・・・」

舞子は陽子がいじめを受けていたことに
気付かなかった。
陽子はいじめにあっていることを
周囲に気づかれないように
明るく振る舞っていたのだ。

そのとき舞子は神秘的な光景を目にした。

雪がやんだと思っていたら
無数の折り鶴が空から
ふわりふわり舞い降りてきたのだ。

「舞ちゃん、起きて」
陽子の声と共に自殺した彼女の声が
どこからともなく聞こえてきた。
「自殺しても居場所がなくて・・・」
「居場所って自分で作るもの・・・」

 すると突然、舞子の身体が宙に浮かんだ。
 舞子が横たわっていたのは雪面ではなく
 巨大な白い折り鶴の背中だった。
 その心地よい浮遊感によって
 舞子の意識は静かに遠のいていった。

右手に温かいぬくもりを感じ
再び目を開けると
舞子は病室のベッドの上にいた。
ベッドの傍らで陽子が舞子の右手を
両手でしっかりと握りしめていた。

舞子は学校の屋上から
飛び降り自殺を図った。
幸い降り積もった雪がクッションになり
一命はとりとめたが
意識不明の状態が続いていた。
舞子は意識を取り戻したが
夢と現実の区別がつかなかった。
舞子が今見ている光景が現実だとすると
夢と現実が奇妙に一致していた。
現実ではいじめを回避するために
陽子は転校し
いじめにより精神的に追い詰められて
舞子は飛び降り自殺を図った。

二人に共通していたことは
弱い部分を見せたくないという
気持ちがあって
いじめにあっていることを
周囲の人に知られたくなかった
ということだった。



ベッドサイドには千羽を超える折り鶴と
一際目立つ大きな白い折り鶴が飾られていた。

大きな白い折り鶴を折ったのは陽子だった。

人間は、目の前にあるものを
五感を使って認識しているが
五感では認識できなくても
実際に存在しているものがある。

舞子は今見ている世界が
全てではないと思いながら
窓越しに外の景色を眺めた。

窓の外では、無数の折り鶴が
空からふわりふわり舞い降りていた。
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