あれは、私が24,5歳の頃だろうか。高校の同級生Uさんから実家に電話があった。
当時、携帯などは当然存在しない。
Uさんは私と連絡が取りたいと母に電話番号を告げた。
Uさんとは女子生徒が極端に少ないクラスであったにも係わらず親しく話をした間柄でもない。けれど、彼女は真面目で優等生だった。印象は良かった。
職場近くの地方都市の駅の喫茶店で待ち合わせをした。
Uさんは大学卒業後、大手の会社に就職をしたという噂は聞いていた。
落ち着いた色調の服を着て相変わらず眼鏡をかけていてちっともかわっておらず直ぐにわかった。
挨拶もそこそこにお互いの近況報告。
何とUさんは結婚していた。お相手は宝石商らしい。Uさんは会社を辞めてその方の仕事を手伝っているとの話。
えっ宝石の販売?
私は生活していくので精一杯。宝石なんて無理。と思ったら、
「貴女に是非会ってもらいたい人がいる。貴女の人生に役立つお話が聞けるから」等と言ってきた。
そして、彼女の誘導に従ってビルの一角に入って行った。
小さな事務所らしき部屋に通されるとそこには身なりのきちんとした中年男性が。
そこで、どのような話を聞いてたのか今では正確には覚えてはいない。
けれど、宗教の勧誘ではあるなと世情に疎い私でもうっすらと
理解した。
宗教か、まっ興味はないけど直ぐに拒否するのも何だか悪いなあ~と思っていたらあれよあれよとういう間に研修会という
ものに参加するという事に話を持って行かれた。
一泊二日で参加費は食事代のみ。駅まで来れば、Uさんと関係者が現地へ案内するとのこと。
土曜日集合の日曜日解散であったので渋々参加することにした。
研修会の場所は住宅街の中の結構広い家だった。集まったのは10後半から20代前半の男女凡そ20人から30人位だろう。自己紹介では結構名の通った会社員や大学生が多くちょっと肩身が
狭かったりした。
一日目はその宗教の成り立ち、教議などの講義がある。その後、参加者達との交流。
二日目は近くの公園で運動会らしいものを行って解散。運動会が一番楽しかったのだが。
普段、会社という狭い組織の中で生きていることに飽きていたのか宗教も悪くはないな、とも正直思った。
けれど、何だかひっかかる事があった。
参加者か世話役かわからないのだがある一人(女性が)手相を
見ようといって私の手をとった。
まあ、こういう性格だ。こういう生まれだ、だの当たっているとも外れているともわからない事を言われてたが最後「貴女は頭がキレるけれどそれが犯罪に結び付く可能性がある」
と言ったのだ。
私は学歴コンプレックスを持っているので一瞬嬉しかったがそれは一瞬。私は将来犯罪者になると予言されたようなものだ。
ムカムカと腹が立ってきたのである。その場では素知らぬ顔をしていたが。
研修会が終わってレポートを提出しろというので、その手相占いの事を非常に心外であると書いて提出した。
その後、何回か実家にUさんから電話があったらしいが、私の
アパートには電話がなく入信は消えてなくなった。
もし携帯が存在していたらまた違う事態になっていたかも知れない。
もし、入信していればあの桜田淳子さんのように合同結婚式を挙げていたかも知れない。
そう、その宗教とは今、話題になっている統一教会なのである。