今回は、久々に拙者(クロ)の解説でご主人様の里山暮らしをご紹介することと致したい。
富士山が見える場所を、なんと大胆にも「富士見台展望スポット」と命名したご主人様は、そこを名前負けしないような場所にしなければと気合を入れて、鬱蒼たる竹薮ジャングルの大掃除に取り掛かったのであります。
竹薮ジャングルの中から、倒れて折り重なっている枯竹や古木などを「ヨイショ、ヨイショ!」と引っ張り出し、そして邪魔な雑木などを「エイヤッ!」と切り倒して見晴らしを良くした場所に、ご主人様は青竹のベンチを設置しました。
更には、聳え立つ楠の大木に長いはしごをかけて、樹の上に登って行きました。
そんな作業を、拙者が呆れ顔で眺めていると、
「おいクロ、ここからの富士の眺めはまた一段と素晴らしいぞ。ここで富士山を眺めながらコーヒーを飲んだら、さぞかし気分が良いだろうなぁ。なぁクロちゃん」
と、ご主人様は樹の上から得意げに言うのであります。
しかし拙者には、あのお山には全く関心がないので、大きなあくびをしてゴロっと横になりました。
しばらくすると、裏山に住むオヤジさんが散歩の途中に顔を出しました。
「おやおや、なかなか精が出るねぇ。そろそろ音(ね)をあげるんじゃないかと思っていたんだけどねぇ・・・」
裏山のオヤジさんも、半分呆れ顔で辺りを眺めながら言いました。
「この辺りは、昔は畑だった所でね。そこの2本の杉の木も20年程前は苗木だったけど、今じゃすっかり大木になってしまたなぁ」
「ここから富士山が見えるもんで、少し整備しているところなんですよ。この辺りは楠やケヤキなどの大木に囲まれていますから、夏には森林浴にも良い場所ですよね」
樹の下に降りたご主人様が、顔の汗をふきながらそう言うと、
「そうだねぇ。都会から来た人たちは珍しがるかもねぇ。ところで我が家の居間からも富士山が見えるんだよ。朝の富士山も良いけど、夕方の富士もなかなか風情があるよ。夕陽が沈む頃に富士山が影絵のように浮かび上がってくるんだ」
「へぇ・・・。そうなんですか。それは良いことを聞きました。夕方が楽しみですね」
ご主人様はそう言うと、鼻唄まじりでまたセッセと竹薮掃除に取り掛かったのでありました。
続く・・・・・・・。