クロの里山生活

愛犬クロの目を通して描く千葉の里山暮らしの日々

アズマヤ作り

2014-12-25 22:22:00 | 日記

久しぶりの投稿になってしまいました。

実は、我が家の裏山竹林に東屋(休憩所)を作ることを思い立ち、この2週間程、その作業に没頭しておりました。

ようやく「東屋もどき」が完成しましたので、お披露目させていただきます。

 

 

 

東屋というよりは、開拓村の掘っ立て小屋という風情ですが、竹林から聞こえる「サワサワ」とした風の音を聴きながらコーヒーなどを飲むと、なんとも良い気分になります。

この里山は、真冬でも天気の良い日はポカポカ陽気になるので、ランチの後のコーヒータイムにはちょうど良い場所になりそうです。

近くにお越しの際は、お気軽にお立ち寄り下さい。

 

そんなこんなで、耕一物語をUPする暇がありませんでしたが、近々に続きを書きたいと思っています。乞ご期待。

 

 

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耕一物語ー人肌の温もり

2014-12-11 05:34:25 | 物語

 

冷たい荒海に投げ出されて、何時間経ったのだろうか。

東の空が白々と明けてきた。

あけぼの丸のロープを抱きしめる耕一の意識が、次第に薄らいで行く。

《このまま眠れたら楽になれる・・・・》

耕一は、薄れる意識の中でそう感じていた。

 

耕一の手からロープが離れた。

耕一の身体があけぼの丸から離れた。

意識を失った耕一の身体が、冷たい海を漂って行く。

漂うその男の姿を、昇る朝日が照らし始めた。

 

 

 

その時、潮の流れが少しづつ変わってきた。

日の出の動きに合わせるように、潮の流れが変わったのだ。

穏やかになった海原を、耕一の身体が陸に向かって流れ始めた。

 

襟裳岬に近い広尾の浜に、耕一は打ち揚げられた。

その浜には、既に数名の遭難者が流れ着いていた。

浜の漁民達が、流木を積んだ焚き火をあちこちで燃やしながら、救助活動を行っていた。 

 

「おーい! 若いの、しっかりしろ!」

身体が冷えきり、唇が紫色に変色した耕一を、毛布を持った漁師が抱きかかえた。

だが、意識を失った耕一の身体の振るえは止まらない。

漁師は、焚き火の近くに耕一を運んで、彼の身体を温めようとした。

その様子を見ていた漁師の女房が叫んだ。

「ダメだよ! 火で急に温めたら死んじまうよ!」

女はそう云うと、着ていた自分の衣類を脱ぎ捨て、上半身裸になった。

そして、耕一の上半身も裸にすると、その身体を抱きしめて毛布をかぶった。

自分の身体の温もりで、耕一の冷えた身体を温め始めたのだ。

 

 

 

やがて耕一は、気持ちの良い人肌の温もりの中で意識を取り戻した。

最初に目に映ったのは、真っ赤に燃え上がる炎であった。

あたり一面、紅色(くれない)の世界だった。

強運の男が、死の淵から生還した瞬間であった。

 

昭和23年9月中旬に関東地方、三陸地方そして北海道東部を襲ったアイオン台風は、死者512名、行方不明326名という記録的な犠牲者を出した。

この時、あけぼの丸の乗組員10名のうち、5人が行方不明となり帰らぬ人となった。

あの正一も、荒波の中に消えたまま、二度とその姿を見ることはなかった。

 

  

 続く・・・・・・。

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耕一物語ー仲間の運命

2014-12-07 21:57:28 | 物語

あけぼの丸の乗組員10人は、真っ暗な荒海に投げ出された。

9月中旬の北の海の水は、既に冬の冷さだった。

その冷たい海の荒波に飲み込まれまいと、仲間達は転覆した船に必死でしがみついた。

だが、しがみついている手がかじかんできて、次第に指の感覚がなくなってくる。

 

陸の方を見ると、波のうねりのかなたに、灯台の明かりが小さく見えた。

「おい、俺はあの灯台まで泳いで行くぞ」

仲間の一人は、そう云うと、船から手を離して荒海の中に身を入れた。

それにつられて、他の男がもう一人、

「俺も行くぞ!」

と叫んで、後を追った。

《いくら泳ぎに自信があっても、この荒波の中を泳ぐのは無謀だ》

二人が暗い海に消えた時、耕一はそう思った。そして、

《死んでもこの船から身体を離さないぞ!》

と、船のロープを、しびれる手で必死に自分の身体に巻きつけた。

 

 

 

耕一が幸運だったのは、船から脱出する時に、係留用ロープが手に引っかかったことであった。

無我夢中でそのロープにしがみついたことにより、耕一は波に飲まれずにすんだのだった。

耕一の近くで、ロープにしがみついている男がもう一人いた。

「台風が来た!」

と、真っ青な顔で機関室に駆け込んできた正一だった。

真面目で良く働く若い正一を、耕一は弟のように可愛がっていた。

「正一! そのロープを絶対に離すなよ! ロープを身体に巻きつけろ!」

ロープを離しそうになる正一を、耕一は懸命に励ました。

だが、しばらくすると、ロープを巻きつけた正一の身体が動かなくなった。

意識を失いかけているのかもしれない。

耕一は、正一の近くに身体を動かして、その顔を平手打ちした。

「正一! しっかりしろ! 眠るんじゃないぞ。眠ったらおまえは死ぬぞ!」

耕一の平手打ちで、意識を取り戻した正一は、また、必死にロープにしがみついた。

次の瞬間、強風と共に、また大波が船を襲った。

その大波の中で、耕一も意識を失いかけた。

そしてその大波と共に、正一の姿が消えていた。

 

 

 続く・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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耕一物語ーアイオン台風

2014-12-04 21:43:57 | 物語

耕一は夢を見ていた。

ブランコに乗っている夢だ。

ブランコが高く上がると、遠くの山が見えた。

《気持ち良いな・・・・》

耕一は、身体がゆっくりと大きく揺れる感覚の中で、そう思っていた。

ブランコの振れが、次第に大きくなって行く。

自分の身体が、青い大空に吸い込まれて行くのではないかと心配になってきた。

 

  

その時だ。

「機関長! 機関長!」

部屋のドアを、誰かがドンドンと叩いた。

耕一は、慌てて簡易ベッドから飛び起きた。

船が大きく揺れている。

中古船「あけぼの丸」の船体が、「ギシギシミシミシ」と悲鳴を上げている。

「機関長、台風が接近しているようです。このままだと、船が転覆します。船頭が、直ぐ船を出してくれと云っています!」

千倉から一緒に来た若い乗組員の正一が、真っ青な顔で叫んだ。

 

時計の針は、午前2時を指している。

《随分足の速い台風だな。もうこんなところまで来たのか・・・》

耕一は、エンジンルームに飛び込むと、かけっ放しにしていたエンジンの回転数を、マックスに引き上げた。

「いつでも船が出せると、船頭に伝えろ!」

激しく揺れる船内を、正一はまともに歩くことが出来ず、狭い廊下の壁に身体をぶつけながら、船頭がいる操舵室へ向かった。

 

耕一は、揺れる機関室の窓から外を見た。

夜半まで、同じ漁場で常夜灯を灯して停泊していた他のメカジキ船は、一艘も見当たらない。

既に、釧路港に避難したのだろう。

古い船体のあけぼの丸も、高いうねりの海原を、波しぶきを頭からかぶりながら、釧路港を目指した。

だが、激しい暴風雨の中で、船はほとんど前に進まなくなった。

あけぼの丸のその姿は、まるで木の葉が波に弄ばれているようであった。

耕一は焦った。

《燃料が足りない。このままでは港に辿り着けない。クソー、どうすれば良いんだ・・・・》

 

そんな耕一の焦りをあざ笑うかのように、暴風雨は刻々と激しさを増してくる。

横からの高いうねりが怒涛となって船を襲ってくるのが耕一の目に入った。

その瞬間、彼の身体が宙に浮き、そして天井板に叩き付けられた。

 船が転覆したのだ。

 

続く・・・・・。

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耕一物語ー北の漁場

2014-12-02 17:51:45 | 物語

小名浜港を出港した船は、全速力で北の漁場を目指した。

台風が来る前に、漁場に着いてメカジキを獲らなければならないのだ。台風が来る前に・・・・・・。

耕一は機関室に張り付いて、大型エンジンをフル回転させた。

陽が中天に昇る頃、船は三陸沖を過ぎて下北半島沖を抜け、津軽海峡にさしかかった。

うねりがやや高くなってきた。だが、耕一は懸命にエンジンを回して船を走らせ続けた。

舵を握る船頭は、津軽海峡の手前でやや東に進路を取り、船を漁場の釧路沖に向けた。

次第に高くなるうねりに挑むかのように、中古の船はその船体を震わせながら、白波を蹴立てて突っ走った。

 

 

やがて、前方左に尻羽岬の白い灯台が小さく見えてきた。

耕一は、甲板に出て西の空を振り返って見た。

普段であれば、紅の夕陽がゆらゆらと海原に沈む時刻であったが、その時の西の空は、黒い雲に覆われて不気味に静まり返っていた。

機関室に戻った耕一は、無線機のスイッチを入れて、台風情報を確認しようとした。

だが、中古の無線機の感度が悪い。

「ガーガーガー」と雑音が入るばかりで、応答が聞こえてこない。

嫌な予感がした。

《一旦、釧路の港に入って様子を見た方が良いかもしれない・・・》

 

耕一は急いで操舵室へ行き、船頭と相談した。

「わしも、さっきからその事を考えていたんだが、でもこの程度のうねりならまだ大丈夫だろう。もう直ぐ漁場に着くから、そこで様子をみよう」

船頭はそう云うと、暗くなった海にライトを照らし、更に船を前に進ませた。

やがて前方に、数隻の漁船が常夜灯を付けて停泊しているのが見えてきた。

釧路沖50マイルの漁場に着いたのだ。

漁場に近づくにつれ、北からの親潮の流れの匂いがしてきた。

《この分なら、明朝明け方からの操業ができるかも知れない》

耕一はそう期待しながら、潮の流れの上流に舳先を向けて船を停止させた。

エンジンはかけたままである。潮に流されないよう、停泊中もエンジンを回し続けるのである。

 

《台風は今、どの辺りなのだろうか・・・・》

耕一は、もう一度無線機のスイッチを入れてみた。

だが、無線機からは雑音しか聞こえてこない。

食事当番が作った晩飯を食べ終えた耕一は、波の音を気にしながら機関室の寝床に入った。

 

 

その頃、西日本に上陸するとみられていたアイオン台風はその進路を変え、紀伊半島をかすめ、速度を速めて列島沿いを北東に進み始めていた。

夜半には房総半島を直撃し、更に三陸沖を通過する進路だ。

そして、翌未明には・・・・・・。

 

 

続く・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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