キムラトモミの絵と版画 制作ノート

日常の中の非日常、目に見えない大切なものを
少しでも形にしたくて制作しています。猫のいるこの世界が好きです

「エレンディラ 」 ガブリエル・ガルシア・マルケス

2019年07月09日 | 読書メモ
短編集
ちくま文庫

大人の為の残酷な童話として書かれただけあって
不思議な....
奇妙なお話しばかりです。

何をどう感じたら良いか
未処理なままの感情で
読み進めておりました
絵画で例えるなら、ダリのシュールリアリズムのような
独特なファンタジーがリアルに描写されているように
ユニークなのでした。

「大きな翼のある、ひどく年取った男」
タイトルだけでも
十分に不思議です

個人的には
「この世でいちばん美しい水死人」
すごく好きな物語でしたー

お話しは海に漂う水死人を村人達が引き上げるところからはじまります。
最初、村の男達は死人を厄介者に思っていたのですが
女達がその美しい死人の身体を清めるうちに、名前・や素性や性格をあれこれ空想していくんです
他者の手で語られ、彼の背景や人格が勝手に形成し育てられていくという可笑しさが愛に満ちていて面白かったです。
しまいには、村人達は彼のために同情を寄せ、素晴らしいお弔いをし...村は彼の名前が付けられるという(それは架空の名前でしか無いのに...まるでそうだったかのように)
愛のある不思議な幻想が 人々の空想が リアルなものになって、共同体の認識にかたちづくられる。
うーん😌非常に気に入りました。

諸星大二郎先生の短編漫画とか、村上春樹さんの不思議なパラレルワールドにも共通するように思います。

しかし、読後感になんとも気持ちがブルーになったのが
最後のお話し
「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」でした

浅野いにおさんの漫画「おやすみプンプン」を読んでた時にも同じ気持ちになったナと 蘇ります。
多分
それは 虐待や性被害が物語に組み込まれていたからだと思います。
作者のメッセージがそこには無いのかもしれないけれど
虐待がうむ悲劇 とか
性の問題 とか
自分では抱えきれない問題を
目の前に突きつけられ
どうしようもない
途方もない
悲しくて
腹が立つ
感覚になってしまうからでしょうか。
エレンディラが最後に解放されても
複雑な気持ちしか無いという



緑の血が何かの隠喩なのか

それとも幻想なのか
人間では無いという事なのか
謎の多いお話しでございました。
他の方の感想が気になるところです

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