戦後が一段落つき最早戦後ではない!と世の中が明るさに転じ始めた頃、凄い映画ブームがやって来た。
健さん、文太、鶴田浩二、石原裕次郎……そんな分かり易くて直情型ヒーローの影響なのか?……肉体的な力と激情を男らしいと翻訳する文化は根付いたんだろう。
信義とか信頼を直ぐ天秤に掛けて辛さを避けるってな人は未だに多いのである。それが普段見せているポーズと余りにもかけ離れているから唖然呆然となるのである。
肉体的強さは男らしさの一面ではある。しかしすぐキレて暴言吐き放題ってのは男らしさじゃなく、粗野粗暴って範疇のものである。
その男の向こうに、様々の葛藤とか不安とか迷いとか怒りなんぞが描かれての最終手段の登場ならばまだ観るに堪えると思うけど……。
表題のペペル・モコの少年の様な純情と荒ぶるメンタルの対比を見せ付けられた時の驚きは未だに忘れられない。
人格というものの掘り下げ方なのか?脚本家の力なのか?
現代を生きる時……優しくて力持ちではサバイバル出来ない。
粗暴、乱暴に暴れる前の深い葛藤なんぞ織り込まないとリアリティー自体が霧散してしまう……。
正直……その何処がカッコいい?という疑問はこの歳までずっとついて回った。
非常に『付き合いが悪い人間』になったのはそんなヒーローに拍手喝采を惜しまない人達の稚拙なヒーロー礼讚に対する気遣いだった。
僕の正直な感想は彼等を怒らせるに違いない!……少年の頃から僕はそれを分かっていた様な気がするのである。
正直と直言は時と場合と何より人間を見てから発しなくてはならない。