三年目っていうのは重要な節目……自分や仕事に厳しい向き合い方をしているな?と感じた。すごい変化している。
しかし……今……壁なんですと彼女は言った。同期で既に役職に就いた人がいるのに……私は何を?と感じるのだ……と。
先ず……マラソンで二キロ地点での順位を気にするのはアホだと僕は言った。
それより……君は日々何か具体的な『自分の負けを発見』しているか?と聞いた。
ポカン?となった彼女に……この歳になって分かった事が一つある。
人生は日々……『自分の負けを発見する旅』だということだ……と僕は言った。
『自分が負けている事の発見』即ちそれが自分のノビシロそのものになるのだと……。
それは?装い術かも知れないし、ある分野の知識かも知れない。単純作業の処理スピードやその仕上がり具合かも知れない。発見はモチベーションとなり自分のモノとなっていく。
名人達、達人達は周囲がリスペクトし十二分にその実力にひれ伏しているのに、毎日、『自分の負けている事は何か?』と探し続けている。
見付ければ即座にその克服に入る……そして『また伸びる』のである。
詰まらない人間ほど『自分の勝ちばかり』を集めそれで自分を飾る。そりゃ誰の人生にも勝ちはあるんだろう……。
君にもね?……それもあって今の君になっている。その今の君で良ければそこまでだ!……と僕は言った。
今の君の勝ちなんて相撲で言えば『わんぱく相撲で優勝した』レベルじゃないか?……相撲なら国技館で取らなきゃカネにはならん。
ソコには君を国技館に向かわせない『君の数多くの負け』が君の中に潜んでいる……。
負けを発見すればモチベーションが生まれ、結果克服出来る。君は日々数多くのノビシロ『君の負け』をドブに捨てているかもよ?……宝物なのに……。
彼女は昔アルバイトの面接に来たとき……自分が如何に辛いか?喋った。
引き籠り寸前……容姿コンプレックス、大学に馴染めない等々……そして泣いた。
確かに全身からオブスが漂っていた。
話す内に彼女は『自分の負けが見えた』のである。結果彼女は激変し、誰からも可愛いと言われる様になり、何より顧客さんに『あの娘でなきゃ!』と言われる存在になった。
髪を切れ、それじゃ貞子だ、メガネを止めてコンタクトに!(泣いている目だけが綺麗だったのを発見したからそう言った)……全身を清潔感で埋め尽くせ……今の君は不潔感満載だ!……そんな容赦のない指摘をした。
彼女は短期間(三ヶ月)で『見事に様々の要素で負けて見せた』のだった。
『あの時のお陰で克服の仕方は学べた!』と彼女は言った。
これからはもっと『見事な負け』を沢山たくさん稼ぎなさい!……『一番多く大きく負け続ける奴』が一番自分から才能を引き出せる人間なのだから……。
久しぶりに話し込んだ。
朝から食事を抜き……アレもコレも食べたい❗とやって来た甲斐がありました……送っていく車の中で彼女はそう言ってくれた……。
『私の購買意欲をそそるモノ増やして下さい』……そうすれば幾らでもお買い上げしますからね?……車を降りるとき笑って彼女はそう言った……。
『負けた❗』……と僕は思った……。