男の哀愁
朝の雨が降る ふるい飛行場 着古したジャンバー 砂混じりポケット 小銭握りしめ 行くあて...
厄除け
それは疾風のごとく走り、太鼓と鐘の音のリズムに合わせ弾むように跳び上がると頭を一撃。その姿を遠目にしただけでも恐ろしくて体がこわばったものだ。だが、今は子どもたちや...
東京
上京して数年が経った頃、突然帰って来たいとの言葉。小さな町の生活は嫌なのかと思っていた...
夏目漱石 『硝子戸の中』 より
二十九 私(漱石)は両親の晩年になってできたいわゆる末(すえ)ッ子(こ)である。私...
在日
私は広場を真ん中に長屋が囲むところで育った。当時は醤油や砂糖を借り合う風情が残っていた。数件隣に在日韓国人の家族がいた。周りの人たちとの屈託のない交流があった。寒空の下、何かのこと...
「硝子戸の中」より
ヘクトーは多くの犬がたいてい罹(かか)るジステンパーという病気のために一時入院した事が...
喫茶店
午前中の約束をしたものの 朝からの雪 連絡できそうな喫茶店に入る 「今日はやめよ...
禅寺の若い修行僧 その1
わたしの父の家は南国にある。 太陽が穏やかにその家をあたため、海の微風が吹く。 わ...
小さな訪問者
聞き慣れない声に惹かれ 庭にやってきた 北国からの訪問者 その鳴き声の主の 姿は見たことがありません 家の曇りガラスを透し 籠の形がうっすらと見えるだけです それでも...
プロローグ
世界は産みの苦しみのように 派生しました それでこの世界は 苦痛だけでなく 歓喜にもあふれている のです ...