妄想日記

本当にあったこと、妄想してみたことごちゃ混ぜにして全部詩にしてみた。

秋霖

2020-09-24 23:00:00 | 妄想日記
朝に目が覚めたはずなのに薄暗くて静かな部屋。カーテンを開くといつも飛び込んでくる光はなくて、暗い空がそこにあった。雨が降っている。音もなく降っている。秋の雨だ。

秋は切なく、美しく、楽しく、寂しい。雨は音もなく降って、記憶はグレースケールで、まるで昔の無声映画のよう。君との思い出も遠い昔のことのようで、どんな色をしていたのかはもうあまり覚えていない。

今日みたいな日はお気に入りのカフェでコーヒーを飲もうかと思い、身支度をはじめる。出掛けるのに半袖は頼りなくて、値札も取っていない、買ったばかりの長袖を着た。


駅までの道、新築に引っ越してきた五人家族。休みの日は笑い声が響いている。駐車スペースに並べられた自転車はまるで幸せのしるしのようで少し眩しい。私にはこない幸せ。

駅について電車を待つ。貨物列車が知らない誰かの大切な荷物を載せて通り過ぎていく。きっとあの中には誰かの希望とか、誰かの喜びとか、誰かへの優しさが詰まっているんだろう。

ふと君が恋しくなってホームのコンクリートに傘の先で君の名前を書いた。

秋霖

2020-09-24 22:30:00 | poem

静寂

音を立てずに雨が降る

この時期の記憶は

グレースケール

まるで昔の無声映画


出かけるには

半袖では頼りないから

買ったばかりの秋を纏う


こんな日は

お気に入りのカフェに行こうか

コーヒーに

ミルクと砂糖と君との思い出を溶かし込んで

ゆっくり ゆっくりと 飲み干そう


駅までの道

新築の家に並ぶ大中小の自転車は

幸せのしるし


通り過ぎる貨物列車は

誰かの希望と優しさと未来を運んで

電車待ちのホームのコンクリート

傘の先で君の名前書いた