妄想日記

本当にあったこと、妄想してみたことごちゃ混ぜにして全部詩にしてみた。

歩くような速度で

2020-09-18 00:30:00 | 妄想日記
君を認識したのは確か、入学して2か月は経った頃だった。授業の発表グループが同じになって、こんな人いたっけ?というくらいだった。発表の準備をしていくなかで君のことを少しずつ知っていった。

雨が降り続いた7月、暗い空に気分も自然と沈んで無意識のうちに不機嫌顔になってしまっていた。購買から出てきた君、雨宿りの屋根の下で嬉しそうに買ったばかりのアイスを食べていた。その日の夜は君のアイスを食べるときの笑顔が離れなかった。

セミが煩い8月はじめ、うだるような暑さに家を出たばかりなのにもう帰ろうかと考えていた。道の向こうで旅行の外国人に道案内をしていた君、英語は苦手って言っていたのに一生懸命に説明している。僕はいつの間にか書店で『英会話入門』を手に取っていた。

はじめての夏休み仲間で集まった8月おわり、みんなの輪から抜けて、君と話したくて君を探していた。息を潜めるように泣いていた君、きっと辛さをいつもそうやって覆い隠していたんだろう。これからは僕と分け合って欲しいと願った。

笑顔に、優しさに、涙に、気がつくたびに君のことが気になって、いつの間にか君のことばかりを考える僕になった。

君に僕の気持ちを伝えた9月秋。「恋」が「好き」が「特別」が分からないという君、そんな君さえ愛おしく思った。「少し考えたい」と言った君に期待してもいいのかなあ。

ねえ、ゆっくりでいいよ。歩くくらいの速度でいいよ。
小さい子どもが積み木をつみあげるみたいに、下手くそでもいい。不格好でもいい。ゆっくり、ゆっくり、ひとつずつつみあげていこう。

ゆっくりと、歩くような速度で僕と君、恋をしよう。




歩くような速度で

2020-09-17 23:00:00 | poem

ゆっくりと

歩くような速度で

君に恋をしていたい


はじめはなんとも思っていなかった

ある日の笑顔に

ある日の優しさに

ある日の涙に

気がつくたびに


ひとつ ひとつ

小さい子どもが覚束ない手で

積み木をつみあげるように


ひとつ ひとつ

君への好きを

つみあげていった


ゆっくりでいいよ

不格好でいいよ

だけどひとつずつ

確実につみあげていこう


きっと終わりのない積み木だけど

ゆっくりと歩くくらいの速さで

君と恋をしていよう


せんとせん

2020-09-16 17:00:00 | 妄想日記
おとぎ話が好きだった。
シンデレラにはガラスの靴、白雪姫には毒リンゴ。眠り姫には糸車、ヘンゼルとグレーテルにはお菓子の家。当たり前に登場する安心感と、それがないなんて考えられないキーアイテム。

そのキーアイテムは私には君だったんだ。
息をするように一緒にいた。ベッド横のぬいぐるみくらい必ずある存在だった。

何をするにも、どこに行くにも、君が当然のように一緒で、ずっと昔から一緒だったような気さえしていた。
だけど、

君には私の知らない18年があって、私には君の知らない18年があった。これからも私の知らない君の人生があって、君の知らない私の人生があるんだろう。

長い長い人生を一本の線で表すなら、私と君の線が交わったのは4年間だけで、この後の人生で交わることはないんだろう。

ねえ、私 君に出会うまでどんなふうに息をしていたっけ?おとぎ話ならこの後はふたり、幸せに暮らすのにね。

せんとせん

2020-09-15 00:00:00 | poem

君といつも一緒にいること

息をするくらい自然なことだった

君がいつも隣にいること

ベッド横の人形くらい当然なことだった


君には私の知らない18年があって

私には君の知らない18年がある

そんなことを忘れていた


この先

君には私の知ることのない人生があって

私には君の知ることのない人生がある

そんなことに気がつかなかった


君と私の線が交わったのは

たった4年間のことで

その後は交わらないのね


君と出会うまでの私は

どんな風に息をしていたのか

忘れてしまったというのに






返しそびれた思い出を

2020-09-13 02:00:00 | 妄想日記
 借りていたDVDの返却期限が今日(日付が変わってしまっているので本当は昨日だけど。)だったのに忙しくて観れずにいた。今夜遅くに観て、明日の開店前までに返しに行こうかとも思ったけれど、明日は早起きできる自信がなくて返しにいくことにした、午前2時。

 外は人もお店も寝静まって、街灯のオレンジが優しく見守っている。その静かさにまるで世界に私だけみたいだと思った。

 何度も何度も観たDVDは、洋画だけど、台詞が聞き取れるようになってきた。そんなに観るなら買えばいいのにとも思うけど、あなたが好きだった映画だから、手元にはなくてよかった。たまに思い出して借りに行くくらいがちょうどいいんだ。あなたのことをたまに思い出して悲しくなるくらいの頻度で。

 閉店後の返却BOXだけが照らされていてまるでスポットライトみたい。(虫がたくさん集まってきているけれど。)
 少し古びている返却BOXはギギと音を立ててDVDを吸い込んでいく。あなたとの思い出もあなたに返却できたらこんなに悲しい夜は来なかっただろうに、返しそびれてまだ私の手元にある。少し悲しくなってきてイヤホンで耳を塞いで、涙も塞いで。

 イヤホンから流れてくるのは季節外れもいいところの卒業ソングで、エモーショナル。

 あの映画のように帰り道は歌って、踊って帰ろうかな、なんて一歩踏み出したら後ろから自転車が通り過ぎて行った。世界には私だけじゃなかったわ。