小学校へ入学してすぐに友人ができた。
入学式の日、初めての教室で出席番号順に座った後ろの席の女の子だった。
クラスで彼女だけ年季の入ったランドセルを背負っていた。親戚のお姉さんの使わなくなったランドセルを貰い受けたそうだ。
そして、笑うと見える前歯はほとんど溶けていた。
平成初期の時代、みそっぱと呼ばれたそんな子供が少なからずいたのだ。
彼女は小学校低学年で少女マンガを読んだり、芸能人に詳しかったり大人びて見えた。
私の知らない言葉や世界も沢山知っていた。
一緒にいて刺激的で楽しかった。
彼女の家に遊びに行くと、
壁にトタンが貼り付けてあるとても古い小さな家だった。
汲み取り式のトイレで、当時でも珍しかった。
離婚してシングルマザーのお母さんは外に働きに出ており、
おばあちゃんが子供たちの面倒を見ていた。
家にはおばあちゃんの友人達、近所の爺さん婆さん連中が遊びに来ていることが多く、畳の上で賭け花札をやったりしていた。
大人になってから思い返してみると、彼女の家庭環境がどんなものであったか考えてしまう。
少なくとも裕福ではなかっただろう。
けれど土曜日の半日の学校帰りには、彼女のおばあちゃんにお昼をご馳走になったり、
休日には、彼女のお母さんに車で色々な所へ遊びに連れて行ってもらった。
大人になり、それがどんなにありがたいことだったのかがわかる。