今の時代こんなボロアパート存在するんか?6畳もなさそな一間だけの、風呂もトイレもない部屋は共有廊下を挟んで並んでいる。まるで簡易宿舎。
昭和でも40年代に建てられた感じ?こんな極小ボロボロアパートですが、ちゃんと住人がいて、皆家賃の集金を恐れているような貧乏人。
この物語は、男女5人の住人達の日常を描いています。
中心となるのはフリーターのユリ。ロングヘアは金髪で、一見そこらへんにいるようなヤンキー娘ですが、性格はのんびりおっとりしている印象。
専門学校を頓挫した後、家出をしたユリ。でも、倒れた祖母の見舞いに訪れた病室で母に見つかり、強烈なビンタをくらいうなだれる。このシーンだけで、母親がいかに怖い存在かがわかる。
あまり詳しく語られてないけど、ユリの家庭はとても複雑そう。弟がデキ婚を打ち明けながらも誰の子どもかわからない、自分達きょうだいみたいなものだと苦笑いする。
母は水商売をやりながら一応二人を育ててきたのかな?でも奔放でかなりワンマンな印象。ユリを頭ごなしに責めて罵り、それでもその後母の店をふらりと訪れたユリに店が終わるまで深夜喫茶で待つようにと言い渡す。
明け方になって、母がその喫茶に行くと休業の張り紙。青くなり、店のドアを蹴りながらユリの名前を呼び探す。ユリは路地裏で母をちゃんと待っていたけど、母の声には応じず、母が去るのを確認してほくそ笑みチャリを漕いで住処へ戻る。
こんなシーンが親子の距離と言うか、互いに気持ちを寄せていても折り合えない哀しさを表現していた。切ないなあ。ユリは自分を探す母に満足したのかな。それともざまあみろと思っていたのかな。
他にも逆売春で有閑マダムの紐として生きている男とか、アパートの一室をストリップ劇場にして金儲けとストリッパーの生活を助けるちゃっかりじいさんとか、ヤクザの息子として生まれながらも、土木業を生業とする若い男の純愛や安物の自分のタバコと交換を迫る知的障害のおばちゃん等皆濃くて憎めないキャラが勢揃い。
貧しくてもトラブルなく何となく理解し合って、ほどよい距離で仲良くしている。それが押し付けがましくなくていい感じ。
レビューは並ですが、私的に後味の良い好きな作品でした。