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合言葉はヒュッゲ

瑠璃色の10代 「永遠の出口」

森絵都氏の小説を初めて読んだ。

タイトルは「永遠の出口」

主人公紀子の10代各ステージのエピソードが階段を登る様に軽やかに描かれている。

ギャングエイジと呼ばれる時代、友人グループとの誕生日会エピソードには、懐かしさを覚えた。

プレゼントを入念に選び、お呼ばれの席でのご馳走によその家庭の色を知る。

高学年となり、ベテラン女教師が受け持ちに。自信家で身勝手な担任のやり方にクラスが不穏となる流れには、ぐいぐい惹きつけられる。なんと豊かな表現力を持つ作家だろう。

ひいきをする中年女教師に翻弄され、皆次第にギスギスして行くが、子ども同士で話し合いの場を作り,スクラムを組む事で担任からのパワハラを阻止。

このおばちゃん教師マジヤバイ。エビデンスもないのに子どもを脅すような話をする。心得が悪いとガンになるとか。グロい形成手術のやり方とか。実際見たこともないのに盛って話して子どもを怖がらせる。いたよなあ、こういう教師。

中学生になると、紀子は反抗期から不良仲間の家へ入り浸り、酒を飲んだり万引きを繰り返し親を泣かせるのだけど、受験の頃には改心し、バラバラだった家族で二泊の温泉旅行に出かける。

気乗りのしない旅だったけど、この旅が両親の不仲を緩和し、ささくれてひとりごちていた自分に気づきを与え、さらに姉の失恋を癒す傷心旅行としても素晴らしい役目を果たす。

高校に入ると、がらりと生活習慣を変え、フレンチレストランでアルバイトに励むようになる。そのバイトがツボにはまり、接客の楽しさや従業員同士の関係に影響を受け、大人びた気分を味わい飛躍的に成長。

飲食店のアルバイト、私も経験あるけどそうそう、お店仲間ってなんとも言えないシュールで密な人間関係なんです。懐かしい。

紀子はそのアルバイトを本業である学生生活よりも入れ込んでいたけれど、慕っていた責任者を追い出すように黒幕だった従業員の策略で店の経営方針が変わり、正義感の強い年頃だからスパっと辞める。

ほんと、トップが変わると雰囲気変わるもんね。

それから高2になると、同級生との淡い恋が芽生え、デートを交わすうちにメロメロに。
でもそのうちに、相手は冷たくなり遠のくが、紀子は信じ続けていた。イプの夜、彼のために編んだセーター抱え、駅で待つ紀子の前に彼が女の子と電車を降りて来た。その時の衝撃、読み手の私にも伝わり切なくて泣けた。

結局、ほんとは両思いだったって、後々わかるのだけど、プラトニックだっただけにやりきれない。
でもこの失恋が紀子を成長させたのは事実でしょうね。

大学受験に失敗して、高校卒業式を済ませ、天文部の仲間と打ち上げする。

その後、紀子の人生はエピローグで語られるけど、結構な紆余曲折の人生を送り、離婚をした後、デザイナーとして再就職を控えた時点で締めくくられていた。

若いうちの人生の方が絶対短い。歳をとってからの人生は長く重い。

しかし、あっという間に過ぎ去った10代の頃って、相対的には短いけれど、美しく凝縮され満ち足りている。

まさに彗星の如く。つかみどころがないけど輝きを放ち続ける。若い頃の思い出って、たぶん永遠に消えないんだろうね。



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