甘い人間

本★ときどき★パン

電気じかけのクジラは歌う 逸木 裕

2019-08-25 18:50:04 | NetGalley


【あらすじ】
ヒトはもう、創作らなくていい―― 人工知能が個人にあわせて作曲をするアプリ「Jing」が普及し、作曲家は絶滅した。
「Jing」専属検査員である元作曲家・岡部の元に、残り少ない現役作曲家で親友の名塚が自殺したと知らせが入る。
そして、名塚から自らの指をかたどった謎のオブジェと未完の新曲が送られてきたのだ。
名塚を慕うピアニスト・梨紗とともにその意図を追ううち、岡部はAI社会の巨大な謎に肉薄していく――。
私達はなぜ創作するのか。この衝動はどこから来るのか。

横溝正史ミステリ大賞受賞作家による衝撃の近未来ミステリー!


感想
冒頭の20秒に空白のある曲を残して友人が自殺した。
創作活動の意義にミステリ要素を絡めた展開。回りくどさを感じたが、
空白の20秒の意味に気づいたラストに感動。派手さはないが、読み切った満足感が得られる作品。
人工知能が音楽を作る。ソフトに手伝ってもらう創作は既に行われている。
AIが作曲家の仕事を奪う日は来ない。「音楽の本質は波及だ」名塚の言葉に同意。

プロ奏者は仕事は減るが、価格が下がるかも知れないので、消費者にはよいことだ。
著作権使用料も下げてほしい。



空は逃げない まはら三桃

2019-08-19 19:44:31 | NetGalley
#空は逃げない #NetGalleyJP

内容紹介
佐藤倫太郎と佐藤林太郎。ふたりは同じ大学陸上部の棒高跳びの選手。周囲からはA太郎、B太郎と呼ばれている。そこに芸術学部の女子・石井絵怜奈が入部を志願。そんな3人の前に、ある日、大きな転機が訪れる。


感想
「棒高跳びの基礎は美しさ。芸術に通じる」
2011年と2018年(現在)が短いスパンで現れる。A太郎・B太郎、これはどちらのこと?
読み始めは不安定だったが、話が進むにつれて気にならなくなる。
科学的に適性を見つけてもらっても、結局は性格や気質の要素が決め手になる。これには納得でした。
数秒の動作が見事な描写で表現され、自分の限界を感じる瞬間の切り取り方が絶妙。
スポーツがらみの青春もの。よかったです。



虎を追う 櫛木理宇

2019-08-16 06:32:48 | NetGalley



内容紹介
SNSで世論を動かせ!
栃木県警捜査一課を5年前に定年退職した星野誠司は、ずっと心に引っかかっている事件がある。
1987年~88年にかけて起きた『北蓑辺郡連続幼女殺人事件』。
亀井戸健、伊与淳一を逮捕、二人には死刑判決が下った。
星野は実はこの事件には真犯人がいるのではないかとずっと思ってきた。

その亀井戸が喉頭がんを患い東京拘置所内で死んだ。
亀井戸の死をきっかけに、再度事件を調べ直したいと思った星野は、
昔馴染みのフリー記者・小野寺に相談し、世論を動かすことが必要であると認識。

孫である旭とその友人・哲に協力を仰ぎ、SNSや動画投稿サイトを使い、
”冤罪事件の真相解明をリアルタイムで見せる”という形で拡散することに成功。
被害者遺族の協力も得、新たな証拠・証言を見つけ発信していくうち、
「虎」と名乗る男から真犯人しか知り得ない情報を含んだ小包が届く――

べストセラーノンフィクション『殺人犯はそこにいる』を彷彿させる冤罪事件解明劇!
『死刑にいたる病』の著者による骨太社会派エンタメミステリー、堂々誕生!


感想
SNSと動画サイトで再捜査を進めやすくするアイデアには驚きました。
ネット主流の世の中のように捉えがちですが、テレビの影響力を持ってくる点にも納得。

残虐な犯人に憤りと嫌悪感を持たせつつ、30年の歳月が流れた困難な捜査にも関わらず、
人々の関心を呼び起こし、事件の解決と冤罪を防ぐ流れが圧巻で、一気読みしました。

拘禁症状「ガンゼル症状」、幼児期の「トゥレット症候群」など、亀井戸には同情すべき点が多い。

ロム専、サイレントマジョリティーなどのネット利用者にはいろんなタイプがいる。
ノイジーなマジョリティーは少数だけど、うるさい。なるほど、そうです。

犯人に対して強い嫌悪感を持った。承認欲求の異様なまでの強さが解決に繋がった。
伊予が、早い時期に真相を伝えていたら...

さすらいのキャンパー探偵 降らなきゃ晴れ 香納諒一

2019-08-12 19:17:46 | NetGalley

「さすらいのキャンパー探偵」シリーズ開幕!

カメラマンの仕事をしながら「キャンパー探偵」

双葉社WEB「カラフル」に掲載中


改造したフォルクスワーゲン・タイプ2、通称ワーゲンバスを塒に、フリーのカメラマンと探偵の二足の草鞋を履く辰巳翔一。
様々な依頼に応えて、今日も全国を東奔西走。

いきなり文庫で、3ヶ月連続刊行!(各巻3話収録)


第2弾は「さすらいのキャンパー探偵 水平線がきらっきらっ 」(双葉文庫)9月初旬発売予定


愛車のフォルクスワーゲン・タイプ2を駆って各地をさすらう辰巳翔一。 人は彼を「キャンパー探偵」と呼ぶ。

架装したフォルクスワーゲン・タイプ2をねぐらに、フリーのカメラマンと探偵の二足の草鞋を履く辰巳翔一。

「降らなきゃ晴れ」「バーボン・ソーダ」「石売り伊三郎」の3話。

感想
読みやすい文体で、さくっと読了。
中篇が3つ。
事件のカラーが異なるので、結末にほっとしたかと思うと、次の作品はラストで“狂気”を蘇らせた結末になったりして油断できない。
「降らなきゃ晴れ」「バーボン・ソーダ」「石売り伊三郎」。伊三郎さんの活躍がよかった。
宝石箱の中身は...偽物だった。さすが伊三郎さん。
来月には続刊が出るので楽しみ。