甘い人間

本★ときどき★パン

ぷくぷく 森沢明夫

2019-11-14 18:54:22 | NetGalley


ボクは誰?
イズミのしあわせは、ボクのしあわせ。
でも、ボクのしあわせは-------

空疎な感じの泡がこぼれた。ぷく・・・

金魚小説!室生犀星の「蜜のあわれ」を連想してしまいました。幻想小説ではなく、一途な純愛もの。
散文ふうで、読みやすい。
金魚のユキが健気。
言葉や鳴き声で伝えることができないユキのもどかしさが伝わってくる。
イズミの辛さは痛ましいが、イズミを受け止めてくれる人と分かり合うことができてよかった。


内容紹介
ひとつ屋根の下の「ふたり」もどかしい愛
都内で一人暮らしをしている、恋に臆病なイズミ。
引っ込み思案なのは誰にも明かしていない心と体に「傷」があったから。
そんな彼女をいつも見つめているユキ。
ひとつ屋根の下に暮らしながら言葉を交わすことはないが、イズミへの思いは誰よりも強い。
もどかしい関係の「ふたり」の間に、新たな男性の存在が。
果たしてイズミの凍った心を溶かす恋は始まるのか。
そしてユキの正体とは……。

コゴロシムラ 木原音瀬

2019-11-11 18:28:08 | NetGalley


木原音瀬さん、新境地のホラーミステリーです。
この小説の最大の推しポイントは、冒頭のオカルト的な「謎」が、すべて解明されるところにあります。
読まれた方、とにかくラストのネタバレだけは絶対にしないでくださいませ!!
 ――担当編集者より


内容紹介
祟りと因縁が渦巻く、ホラーミステリー
かつて産婆が赤子を何人も殺した村で、 尋常ならざる夜が始まった――。

カメラマンの仁科は、雑誌の取材のため、ライターの原田と山深い神社を訪れた。
が、篠突く雨が降る夕暮れ、携帯が繋がらない山道で迷い、おまけに原田は足を捻挫してしまう。
ようやく古い民家に辿り着き、老婆の厚意で泊めてもらうことになったが……。
仁科は、コゴロシムラと呼ばれるその村で、出口のない恐怖に晒される。

人間同士の切なさもどかしさを描いて並ぶ者なし、の名手が新境地、ホラーミステリーに挑む!


感想
ホラーだ、ホラミスだと煽っているが、恐がりでホラー読みたくない派の私でも読めた。
内容紹介が大げさ。怖さ成分は1%程度。別の意味での怖さは感じたが...

舞台は四国の小谷西村 通称「コゴロシ村」。
《この村は呪われちょるけんね》猟師の家で人が次々と亡くなる。
そして、新生児に先天性の障害が多いのはなぜ?
これが物語の柱でネタバレ要素。

村に家は一軒しかない。外部から完璧に遮断された「山王さん」の家。
住み込みで家の世話を任されている老婆とその家に住む先天性両上肢欠損の青年:新(あらた)とその兄。

「ぼくは神さま」と無邪気に話す新が幼稚でひたすら美しい。

「にしな、ほてのこと すきやろ」
「すきになっても しかたないわね。ほて、神さまやし、きれいやけんね」

ファムファタル(男だけど)っぷりが見事。
強烈なまでの自己肯定感に、こういう育てられ方もアリかもと納得しそうになるが、いやいや、これって監禁だよ、だめだよ。

BL界の芥川賞!作家 木原音瀬作品にうっとり。














アドリブ 佐藤まどか

2019-11-03 19:33:37 | NetGalley


内容紹介

イタリアの小さな町に暮らす少年ユージ。

フルートとの電撃的な出会いから5年。 ユージは岐路に立たされていた。

本気でめざしてもプロになれるのはひとにぎり。
クラシック音楽界の厳しさを目のあたりにしたユージの決断とは……?

一つの楽曲をどのように表現するのかという芸術観を少年たちが模索し、
自分の限界を知り、それを越えていく。

そんな彼らがオーディションに果敢に挑戦していく爽やかな青春小説。

「本気でなにかに向き合ったことのある人たちは、強いです。
彼ら特有の集中力や粘り強さは、たとえその道で成功せずとも、
必ずほかの道でも役に立つと信じています」(作者あとがきより)


感想

順位がつくコンクールではなく、オーディションの連続。
選ばれる者とそれ以外の者。その違いは“才能”だけではない。
熱意であり、覚悟である。十代の若者たちが自分の道を見つけようともがく。

10歳でフルートを始めたユージ。思い通りの道に進んでいるのに、ちっとも嬉しくない。
演奏するとか、吹くとかじゃなくて、「こなす」になる状況から脱することはできるのか。


マエストロ:マロウ・ビーニとの出会いをきっかけに変わっていくユージが眩しい。
多くの人に支えられ、ユージが一歩一歩、自分の道を進んで行く