デジブック「紫陽花」を御覧ください
落札
著者: Robert Strand
翻訳: polo181
イギリスの大富豪フィッツジェラルド男爵には息子が一人いて、
当然のことながら、目に入れても痛くないほどの存在で、
彼の愛情の的であり、家族の注目の的でもありました。
その息子はすくすくと育ったが、10歳そこそこの時に、
彼の母がこの子と父を残して死んだのでした。.
フィッツジェラルドは彼の妻の死を大変悲しんだけれど、
彼は息子の父親としての役目に力を注いだのでした。
そうこうするうちに、その息子が大きな病にかかり
10代の終わりに死んでしまったのです。.
一方、フィッツジェラルド所有の証券価値が驚異的に上昇し、
その結果彼は巨万の富を得て多くの
著名な画家の作品を獲得し蒐集していた。
そして、時がさらに進み、フィッツジェラルド自身が
病死することとなったのです。
かれは死ぬ前に、彼の絵画のコレクションを含む
財産すべての処理方法を、
正規の遺書として書き残してありました。
もちろん、弁護士に委託してあったのです。
何よりも前に、彼はすべての絵画を含む収蔵品を
オークションにかけて売りさばくように遺言していたのだった。
彼のコレクションはその質と数の上で半端ではなかった。
イギリスポンドで何億ポンドもする価値があった。
ついに、オークションの日がやってきて、
そこには数知れぬほどのバイヤーが集まり,
固唾をのんで、その時を待ったのだった。
彼らの中には著名な美術館の学芸員や是非とも
落札したいと狙う個人のコレクターも混じっていた。
美術品はオークションが始まる前に人々の前に
一つずつ示されたのだった。その度に、どよめきが起きた。
それらの中に一つだけあまり注目をされない作品があった。
それは粗雑な質のもので素人もどきの画家によって
描かれたものだった。
それは、フィッツジェラルドの一人息子の肖像画だったのです。
そうこうするうちに、オークションを始める時刻となりました。
競売人がツチを振り下ろし、そして会場の人々に宣言した。
「競売を始める前に弁護士から話があります。」
弁護士は大きなしかもしっかりした口調でこう述べたのです。
「フィッツジェラルド男爵は次のような遺言を残しております。
したがって我々はそれに従わなければなりません。
遺言は“オークションの順序にはとやかく注文しないが、
最初のオークションだけは注文をつける。
すなわち、最初のオークションは、
私の愛する息子の自画像だ”となっております。」
その遺言に従ってセリが始まった。
しかし、この絵に興味を示す者はいなく、みな無口となった。
しかし、そのみすぼらしいタッチの自画像の競りに
手を上げた者が一人居ました。
そのたった一人の競り人はその息子のことを
承知していた年老いた召使いだったのです。
異を唱える者は一人も居なく、
その絵はたったの1ポンドで落札されたのです。
競り人達はセリを止めて、
その弁護士にその遺書とやらを全部読むように申し出た。
群衆は騒わがしくなり異常な状態となった。
そこで、その弁護士はフィッツジェラルドの
遺言を読み始めた。ぞの遺言の核心はこうだった。
つまり“だれが、私の息子の自画像を買うか知らないが、
それを買った者に私の財産のすべてを相続させる”と。
書いてあり、それが実行されることになったのです。
※ その後、オークションは続けられたと考えるのが
物語の整合性を保つには正しいと思われる。 polo181
お願い:今日的な邪推や矛盾に拘泥しないで下さい。原文に忠実に
翻訳しております。愛がテーマです。邪推はすべてを壊します。
また、初期の書面には誤植があったことをお詫びします。