ー a frog in slowly-boiling water その2 ー
「へその緒が語る体内汚染」
森 千里 戸高恵美子 技術評論社
人間は地球のガンだ、と言った人がいる。
ひどいことを言う人もいるものだ。しかし、思い当たるフシもある。考えてみると人間以外の生き物はみな、なにがしか世のため地球の同居人のためになって生きている。キャベツは青虫に葉っぱを提供している。青虫はスズメに体を提供している。スズメもどこかでもっと大きな鳥のエサになっているのだろう。そこへいくと、人間を常食にしている生き物には会ったことがない。早い話、役立たずということだ。
役に立たないだけなら人畜無害である。ガン呼ばわりされるいわれはない。ガンなどと言われるのは地球を汚しているからだ。人間が作った化学肥料や農薬は土を汚し、地下水や川の水を汚し、海や湖の水を汚す。
海から先は行き場がない。どんどん溜まる。ここで困ったことが起きる。人間は海の魚を“エサ”にしているということだ。
この魚はただの魚ではない。米国オンタリオ湖の調査結果が出ている。
湖水の中の汚染物質を微生物が取りこむ。その微生物をプランクトンが食べ、それを小さい魚が食べ、さらにそれを大きい魚が食べる。この過程で汚染物質の濃度はどんどん高くなっていく。マスはこのつながりの最後の方にいるが、その体内に残留しているPCB※1という汚染物質の濃度は実に、湖水中の濃度の280万倍になっているという(「奪われし未来」シーア・コルボーン 他著)。
ここまでくると、自分が海という五右衛門ぶろにつかっているカエルに思えてくる。海には農薬だけでなく、人間が作り出したありとあらゆる汚いものが流れ込む。カエルはいつかはゆであがる。それも五右衛門ぶろの下で火を燃しているのは湯につかっているカエル自身だ。風刺漫画のネタとしては特上の部類だろう。
といっても、お先真っ暗というわけでもない。無農薬の野菜が好きな人は多い。「奇跡のリンゴ」に登場する木村さん※2の講演会は受講者で満員だった。米も無農薬で作っている人がいて、注文が殺到しているという。
※1 PCB (ポリ塩化ビフェノール) へその緒から100%検出される先天異常発症の
一因子(「へその緒が語る体内汚染」(森 千里 戸高恵美子共著))
※2 田舎ぐらし(16)注参照
( 次回は ー 春 耕 ー )