美しいいのちが ゆきました。
ラーくん 7歳と10ヶ月。
夜中、急に下半身が動かず這い、吐いて、叫び始めました。
突然の異変に救急動物病院へ連れて行き
血栓が詰まったゆえの症状で、心臓や肺、腎臓も弱っているとのこと。
いつどうなってもおかしくはない状態に、
頭真っ白目の前真っ暗。
6時間の処置の後、帰宅。
2時間待ってかかりつけ医へ。
そこでも同じように命の残り時間の短さを聞く。
命を見届ける時間
時に激痛に叫び
痛み止めの注射を打っては
沈黙
穏やかに見つめあう
声をかけあう
なんという時間
人と猫
私とあなた
彼からはこれまでにも
沢山の豊かな時間をもらってきたのだけれど
最期に
こんな濃密な時をくれるとは
昨日のわたしは知らなかったのだ
よもや
突然別れがくるなんて
昨日のわたしは知らない
発症から26時間ちょっとで
みごとな死にざま
だった
激痛の合間に
豊かなまなざしで見つめる彼
すごい
すごいねえ ラーくん
彼からは日ごろ
普段のあたりまえのしあわせを教えられ
日常様々なものに囚われるわたしに
大事なものから出発してごらんと
何度も立ち止まらせてもらった
かあちゃんラーくん大好きやねん
ラーくんおって しあわせ
ラーくんありがとーね
毎日繰り返し
彼に声をかけ
かあちゃんラーくん大好きやねん
ラーくんおって しあわせ
ラーくんありがとーね
自分の大切なものを確認させてくれた
彼の猫鳴り、ゴロゴロ
部屋の中
彼の残像だらけに
困惑と微笑みと感謝と涙
ぐっちゃんぐっちゃんなった顔と心に
彼の声が聞こえてくる
空っぽな〈今〉に
どこかから聞こえる彼の声が
言葉を、音を育み、つむぎ、奏ではじめる
風が流れるよ、ラーくん
歌うからね、ラーくん
ありがとう
ありがとうね
向こうでメイちゃんに会ったら
かあちゃんがよろしくって伝えてください。
あなたのいない時間が
今日から始まります
残像を愛おしみながら