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猿の惑星 創世記

2011-10-15 21:10:00 | 映画-2011年

「No!」
旧シリーズの『猿の惑星』が大好きなんで、今回の『猿の惑星 創世記』も期待してました。
っていっても、これは1作目の『猿の惑星』ではなく。
現在の地球に猿たちがやってくる、シリーズ3作目『新・猿の惑星』と4作目『猿の惑星・征服』の展開をモチーフとした作品となっています。

『猿の惑星』シリーズをご存じない方のために補足をすると。
1作目と2作目は、猿が支配する世界を舞台としていますが。
3作目以降は、人間が支配している現代の世界を舞台としています。

町山智浩さんの『<映画の見方>がわかる本』によると、『新・猿の惑星』以降のシリーズでは、製作会社が金穴に陥って、超低予算で作らざるを得なかった、とのこと。
そのため、特殊メイクが必要な猿を大勢出すこともできず、猿の居住地のセットを組むこともできなかったため、苦肉の策で現代の地球にしたらしいです。

今の制作陣が、当時のリベンジをしたかったのかどうかはわからないのですが。
『猿の惑星 創世記』は現代の地球を舞台にしながらも、見事な大作映画に仕上がっていました!
『猿の惑星』シリーズを見ていない人でも、きっと楽しめる内容になってます。
でも、『猿の惑星』シリーズが好きだった人なら、よりいっそう楽しめたんじゃないでしょうか。

というわけで、以下にネタバレを交えながら感想を。

主人公の猿シーザーですが、これは『猿の惑星・征服』の主人公にして、猿の支配者の始祖と同じ名前です。
でも、いきなりシーザーが登場するわけではなく、アルツハイマー治療薬の実験台となる母猿から生まれる、という形で登場します。
この母猿は治療薬の影響で、知能の高い猿となるわけですが。
賢い母猿からシーザーが生まれ、直後に母猿と死に別れる。そして、親代わりの人間の元で育てられる、というシークエンスは『新・猿の惑星』のラストから『猿の惑星・征服』に至るシークエンスと同様です。

この冒頭からもわかるとおり、『猿の惑星 創世記』は従来のシリーズとは別物とされながらも、従来のシリーズを踏襲しています。
じゃあ、やっぱり従来のシリーズを見てないと楽しめないのか、というと、そういうわけではありません。

シーザーが人間の家族で育てられる。
そこで起きる人間的な家族のあり方と、人にあらざるものの葛藤など、従来のシリーズでは語られなかった部分にウエイトがかけられ、「なぜ、支配者シーザーだけが他の猿とは違ったのか」がきちんと描かれています。
まあ、正直、この辺は退屈だったりもしますがw

でも、シーザーが家族を守ろうという意思から人間を傷つけてしまい(ここではシーザーはまだ自分の家族=人間のために戦おうとする)、動物保護センターに隔離されてしまうのですが。
このへんから物語のピッチが上がってきます。
この保護センターの連中が、人を人とも思わないというか、そもそもシーザーは賢いけど見かけは猿なので、猿並みのエテ公扱いというぞんざいな扱い方しかしてくれません。
ここでハリー・ポッターシリーズでマルフォイを演じたトム・フェルトンが、猿をいじめるチンケな男として登場するのですが、なかなか堂に入った小物ぶりでしたw

そんなシーザーの冷遇をよそに、外の人間の世界では、アルツハイマー治療薬をさらに強化しようと研究が進められます。
ところがこの薬、ウィルスを成分としており、猿の知恵は飛躍的に高めるんですが。人間はウィルスへの抗体を持っていないので、投与すると死に至らしめる、というモノでした。
ここではサラッと流されるように、でも無理矢理取って付けたように。アルツハイマー治療薬を吸い込んでしまった(ウィルスに感染した)研究者が、うっかり血液を他人に付けてしまう、なんてシーンがあります。

一方のシーザーは、マルフォイにいじめられて(プラス、人にあらざるものの葛藤から)、人間と決別して自ら猿のリーダーになろうと決意します。
(正直、ここの展開は急展開過ぎて乗り気にはなれなかったですが…物語の進行上仕方がないのでしょう)
ここで面白かったのは、同僚の猿たちを、まずは猿の流儀で従えて。さらにクッキーをあげるという、懐柔策でさらに自分への求心力を高めるところ。
『猿の惑星・征服』でもシーザーが自らのカリスマで仲間を従える、というシーンがありますが、なんかよくわからん展開でありました。
今作では、腕っ節の強いゴリラを先に懐柔するとか、クッキーを使うとか、いろいろ芸の細かいところが見られました。

んで、シーザーはアルツハイマー治療薬を研究所から盗み出し、そいつを使って同僚の猿たちも賢くさせます。そして、みんなで施設からの脱走を試みます。
このとき、自分を暴力で屈服させようとするマルフォイに対して、シーザーは初めて「No!」と人間の言葉で意思を表明します。
このシーザーの「No!」は、旧シリーズ内でも神話として語り継がれるほどに重要なシーンです。
今作でも非常に盛り上がる、映画のギアがトップに入るシーンとなっています。

それから施設を脱走した猿と、逃げる猿を全滅させようとする人間たちの争いとなります。
ここのアクションシーンが、かなり見応えがあります。
っていうか猿の身体能力がすさまじく、ニンジャとかアメコミヒーロー並みのアクションに仕上がってます。
ちなみに、ここで製薬会社の黒人のお偉いさんが殺されるんですが。
旧シリーズでは、黒人(猿と同じくマイノリティで、かつ猿に理解があった)が猿の仲間になって、白人が制圧されていましたが。
今回は黒人がやっつけられる立場になっています。

んで、人間の包囲網を突破した猿が森へ逃げおおせて、取りあえず猿的にはハッピーエンドかな。

なんて、思わせておいて。
エンディングロールが流れてすぐに、場面はシーザーの住んでいた家に。
そこには研究者から血液を付着させられたパイロットが、風邪っぽい症状のまま家から出て、空港へ向かいます。
実は、このパイロットもアルツハイマー治療薬=死のウィルスに感染していたんです。
んで、世界を股にかけるパイロットを媒介として、飛行機から空港へ、空港からまた別の空港へ、と世界中にウィルスが感染していく、というところで本当のラストを迎えます。
旧シリーズでは、犬と猫が絶滅するウィルスが猿が台頭するきっかけでしたが。
どうやら、今作ではウィルスで人間が絶滅しそうになるようです?

旧シリーズとは別のお話でありながらも、旧シリーズに寄り添う物語の展開。
特にシーザーの「No!」のシーンは、旧シリーズを知っていても知らなくても衝撃的なシーン。
もちろん、猿たちの息をつかせぬアクションの迫力も興奮できます。
取って付けた感のある伏線とか、なんでやねんと突っ込みたくなるシーン、そもそもご都合過ぎる展開とか、荒削りな部分も目立ちますが。
娯楽作品としてみれば十分許容できると思います。

ちなみにチラッとしか出てこないのですが、この世界では、どうやら火星に向かった宇宙船が行方不明になっているらしい、です。
さて、これに乗っているのは…? なんて、旧シリーズのファンならニヤっとできるシーンも、たくさん散りばめられています。
(探すとたくさんあるようですが、とても初見だけでは気づけませんでした)

猿の惑星 創世記』(映画館)
監督:ルパート・ワイアット
出演:リック・ジャファ、アマンダ・シルヴァー、他
点数:8点


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