兵藤庄左衛門、批評

芸術、芸能批評

Ed wood, '18 1/27

2023-03-12 16:30:33 | エッセー
 史上最高、天才、英雄、優秀というのは、大体有名だし名声がとどろく。しかし、史上最低最悪というのは、あまり知られない。史上最低の小説や小説家、科学者、スポーツ選手、歌手、演奏家、作曲家、職人を問われてもわからないはずだ。大体史上最低レベルでは有名にもならず無名なまま歴史から消え去り、誰にも知られないはずだからだろう。しかしだが、映画ではある。史上最低最悪の映画監督とその作品というのがある種、有名なのだ。その名はEd Wood(Edward Davis Wood,Junior)、ハリウッドの映画監督、映画プロデューサー、脚本家、俳優であった。なので実際には、世界映画史上というよりハリウッドにおけるというべきだろうが、世界の映画中心地がハリウッドなので、一般的に世界映画史上最低といわれるようだ。まあハリウッド映画では有名で価値あるものとしては、アカデミー賞なんてのがあるが、その反対に最低映画作品や俳優を決めるゴールデン・ラズベリー賞という皮肉な賞が選定もされ、毎年、最低作品と俳優を皮肉るように、ハリウッドでは、こういう話を持ち上げるのが好きなのかもしれない。
 彼の作品は放映権料が安かったため1980年ごろテレビの深夜劇場で繰り返し放送され、一部でカルト的人気を得、再評価されるようになったそうだが、評価としては退屈でつまらない見る価値のない映画とされる。しかし本人はくそ真面目に面白い映画を撮りたいという熱意があるのだ。ただし幾つか撮っても全く評判を呼ばないので、本人も熱意を失い、アルコールに溺れ、赤貧の中、アルコール依存症で亡くなってしまった。詳細はネット検索するか、伝記本を探すか、ティム・バートン監督作「Ed Wood」を見るかすればよい。
ここで私が取り上げたい理由は、彼が才能も実力もない平凡だが熱意ある人間だったが、失敗続きで、アルコール依存症と赤貧にあえいだということだ。
私は映画を見るのが好きだが、その見たい映画は一流の映画に限っている。二流映画を見る暇はないといいたい。基本的には映画史上に残る名作ばかりを見たいのだ。まあ要するに歴史が好きなので、映画史も好きであり、映画史を俯瞰するには歴史に残る名作をやたら見るしかないということである。
しかしであるが、どういうわけか、このエド・ウッドなる人物に惹かれる。訳は、私自身がでくの坊のどうにもならぬ役立たずで、二流、三流のごくつぶしの凡人だからである。何も好きで凡人になったわけではない。しかし努力し続ける根性なし。腕や技、知恵を磨きぬく計画性もなし。ただ行き当たりばったりに生きてくしか能がない。そして自分のつらさに、一流映画を見て、好き勝手放題を書いてりゃ、それでささやかな満足をえるってわけでさあね。退屈だろうが彼の下らぬと評価される映画をせめて一本見てみたいものだ。
彼のことを考えると、凡人の悲しさみたいなのが、浮かび上がる。熱意はあれども、質を積み上げられない、行き当たりばったりでしか生きられないあほさ加減。小人閑居して悪事をなすの例えあり。そもしかり。


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