兵藤庄左衛門、批評

芸術、芸能批評

芸能批評、オペラ-2

2014-03-22 13:52:18 | 舞台芸能批評

☆DVD厳選コレクション珠玉の名作オペラ

・第1巻「魔笛」モーツァルト作曲、2001年、158分、イヴァン・フィッシャー:指揮、ベンノ・ベッソン:演出、パリ国立歌劇場管弦楽団・合唱団、ピョートル・ベチャーラ、ドロテーア・レシュマン、デトレフ・ロート、マッティ。サルミネン、デジレ・ランカトーレ、
 演出、衣装ともに楽しく、愉快、おとぎ話らしい、明るい華やかな原色系色彩が、日本人にとっても親しみやすい。ジングシュピールだとミュージカルやオペレッタのようにして見ていける。オペラ入門に最適。モーツァルトのメロディが伸びやかで、かつフリーメイソンの儀式音楽に配慮しているそうで、フリーメイソン思想の音楽化といえるらしい。

・第2巻「リゴレット」ヴェルディ作曲、06年、127分、ネッロ・サンティ:指揮、ジルベール・デフロ:演出、チューリヒ歌劇場管弦楽団・合唱団、ピョートル・ベチャーラ、レオ・ヌッチ、エレナ・モシュク、ラースロー・ポルガール、カタリーナ・ピーツ、
 舞台・衣装ともに変に古風や前衛を気取らずすっきりしつつも必要なけばけばしさはあり、必要な清楚さは強調されるというネオ・モダンで好ましい。抑え目な演出、歌、演奏ともに必要な抑制感があり好ましい印象を与える。人間の嫌味と純情さをサスペンスフルに哄笑と憎悪、冷徹さで見せる。最後はヴェルディいつもの通りの悲劇だが、妙に現代的なアイロニーに富んだサスペンスで、喪失感を最後に覚える。ヴェルディにとってのヒロインは純情一徹でそれが理想的女性像で、創作意欲をかきたてるのだろう。チューリヒ歌劇場の小作りな舞台が好ましい。

・第3巻「タンホイザー」ヴァーグナー作曲、94年、192分、ズービン・メータ:指揮、デイヴィッド・オールデン:演出、バイエルン国立歌劇場管弦楽団・合唱団、ルネ・コロ、ヤン・ヘンドリク・ロータリング、ベルント・ヴァイクル、ナディーヌ・セクンデ、
 出だしの荒涼とした孤独な風景の中に一人、次いで悪夢のような群集劇、モダンコンテンポラリーな演出に現代人の自分に引き付けて共感を誘う。メータの指揮は質実剛健でじわじわ盛り上げよい。現代演劇的な演出で歌手にも演技を要求するので、歌手は演技に苦労しただろう。

・第4巻「ラ・ジョコンダ」アミルカーレ・ポンキエッリ作曲、1986年、169分、アダム・フィッシャー:指揮、フィリッポ・サンジュスト:演出・装置、ウィーン国立歌劇場管弦楽団・合唱団・バレエ団、エヴァ・マルトン、プラシド・ドミンゴ、マッテオ・マヌグエッラ、ルドミラ・セムチュク、クルト・リドル、
 ポンキエッリの音楽は朗々としつつ、合唱に迫力があり、甘さと壮大さのブレンドが見事で聴ける。台本の構成はボーイトがヴェルディ「オテロ」を真似したようだが、ヒロインの雰囲気はなんだか「トスカ」を思わせるのは、私の見当違いか。ドラマティックにあまやかにいかにもイタリアン。

・第5巻「フィデーリオ」ベートーヴェン作曲、1991年、150分、クリストフ・フォン・ドホナーニ:指揮、アドルフ・ドレーゼン:演出、コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団・合唱団、ガブリエラ・ベニャチコヴァー、ヨゼフ・ペロチュカ、ロバート・ロイド、マリー・マクローリン、モンテ・ペダーソン、
 音楽がベートーベンでちょっと硬くて厳しそうで重いところが、既成の甘く叙情的に盛り上げるのと違い、ハードかつヘヴィーでよい。無実の罪で囚われ殺されそうになる夫をすんでの処で救う妻というスリルとサスペンスに富む展開と、硬質な音楽が絡んで、好きな人にはよい。自由を希求し権力に屈しないという話がベンちゃん好みだったので作曲したのでしょう。ただし彼のオペラがこれ一つなのはこの自由主義的で反権力的な態度のため依頼しにくかったようです。ちょいとコミックなところもわざとはいっていて一応オペラらしく娯楽っぽい雰囲気は出している。



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