安田幹彦 『御産の祷』
将来間違いなく『聖徳太子』並みに伝説上の人物になられる上皇后陛下をお迎えされる為、妃殿下は、玄関の外を出られて人力車で、こちらに来られる上皇后陛下をお迎えをなさろうとされましたが、
しかし・・・・・・
本多錦吉郎 『観梅の図』
妃殿下が玄関の所へ行かれた時には、もうすでに上皇后陛下は、ご到着されておられました・・・・・・・。
それをご覧になられた、妃殿下は直ぐに唐糸を従えられて、人力車に乗られたままの『日出ずる所』の上皇后陛下に向かい深々と黙って頭を下げられました。
上村松園 『菊寿』
・・・・・・・上皇后陛下は黙って頭を下げ続ける妃殿下をじっとご覧になられていました。そして少し間をおいて、
「君ちゃん・・・・・・頭を上げてちょうだい。わたくしの顔が見られないのかしら?」
「・・・・・・恐れ入ります。上皇后様には、ご機嫌よう、こなたに(こちら・御所言葉)にならしゃって頂きまして、有り難う。恐悦至極に存じ上げます」
梶原緋佐子 『老妓』
「有り難う・・・・・。騒がしい事があるけども、君ちゃんの可愛らしいお声をこうして聞くことが出来ただけでも、わざわざ早朝から、人力(車)を走らせてもらって、こちらに来たかいが、ありました」
そうおっしゃられた、上皇后陛下は妃殿下の華やかな色彩の浴衣に羽織を召されたお姿を上から下までじっとご覧になられた後、
「君ちゃん、この装いは、少し派手では、ないかしら?いわゆる皇嗣妃という立場になって浮かれていると、こんな派手な君ちゃんを見たら、また一段と嫌われてしまうとわたくしは、思うのよ。そしたら、皇嗣さんのおためにならないと思うの。だからね、もっと控え目な地味なお色を、例え日常でも着た方がいいと思うのよ」
それを言うと、外に居る若い皇宮警察官を『慈愛』に満ちたお目でご覧になられた後妃殿下に
「・・・・・・・ねぇ君ちゃん。人力を走らせてくれた、皇宮の人にお礼を言ってくれると嬉しいのだけど・・・・・ね」
菱田春草 『黒猫』
皇嗣妃殿下は、早朝から上皇后陛下の強い『ご希望』で人力車を引いてくれた、皇宮警察のまだ若い男性に向かわれて、深くお辞儀をなさって、
「朝のうちから、上皇后陛下をお運び頂きまして、本当に有り難う御座いました。さぞお疲れでございましょう?・・・・・恐れながら、上皇后様、皇宮のこの方は、お早く走られたようで御座いますから、この方を少し休ませた方が良いと思うのでございますが」
休ませるのも何も先程からまだ若い皇宮警察官は、上皇后陛下と妃殿下のやり取りをじっと聞いて、小刻みに振る経て、巳の置き所もない顔付きでいたのでした。
妃殿下は勿論、後ろに控える唐糸もその様子には、気が付いていました。早くこの若者をこの場から遠ざけなければと、思ったのです。御用地内ですので、ずっと付き添う必要もないのです。
「さすが、君ちゃん。皇嗣さんから国民に『更年期障害』による『体調不良』だから『休養』をさせたいと、言わせて頂いても、こういう気配りは、きちんとお出来になられるなんて、相変わらずお利口さんね。いくら『体調不良』だなんて伝えても、誰も信じないでしょう。あの時、お上がおっしゃた、皇后さんの時と違ってね」
「恐れ入ります」
妃殿下は、また深々頭を下げられました。しかしその一方で、唐糸に、皇宮警察の人を・・・・・と小声でおっしゃられましたが、目で合図をしたという方が、正しいのかもしれません。
上村松園 『古代汐くみ』
唐糸は、上皇后陛下に
「恐れ入ります。皇宮警察の方を、わたくしどものいる部屋にご案内致します」
そう言いますと、孫のような若者を、庭周りから、何時も奥の職員達いる部屋に案内しましたが、その若者に
鴨下晁湖 『老妓』
「御所内のことは例え、親兄弟でも話してはならない事は、ご存知ですね。ましてや、皇族方の事なればなおさらです。・・・・・分かりましたね」
そう唐糸は、改めて釘を指しまして、直ぐに妃殿下の元に向かいました。お側にと言いながら、妃殿下の側を離れるとは・・・・何て情けないと思いながら、唐糸は、皇嗣妃殿下の元に急いで、戻りました。
妃殿下に後ろ髪を引かれる思いで、唐糸が、皇宮警察官を奥の職員用の部屋に連れて行っている最中、上皇后様は、
「君ちゃん、人力から、降りるのを手伝ってくれるかしら」
「・・・・・はい」
妃殿下はそう、おっしゃられますと、上皇后様のお手を取られて、上皇后様が、人力車から降りられるのを、手助けをされました。そしてお二人は、そのまま玄関の内に入られたましたが、上皇后様はそのまま妃殿下のお手を握りながら・・・・・
「どうもありがとう。ねぇ君ちゃん、皇嗣さんの昨日の『発言』は、君ちゃんはテレビでもやっぱり・・・・・」
そう、おっしゃいました。妃殿下は、上皇后様に正直に・・・・
「恐れながら、今朝初めて、テレビを見まして恐れながら、皇嗣殿下がわたくしを『休養』されるお考えでいらっしゃると、知りました。事前には、全く知らせては頂いては、おりませんでした」
しかし上皇后陛下は、皇嗣妃殿下のお言葉は『無視』されて、今度はもっとはっきりと、同じお言葉で、仰せられたのでした。
「君ちゃん、わたくし達は『家族』なのだから、辛いことや悩んでいることでも、お互いに相談して解決した方が、いいと思うのよ。君ちゃんは、勿論知っているでしょうけど、わたくしは民間人で初めて、皇室に上がらせて頂いたのね。その後、香淳皇后様お始め、今は亡き、君さん(妃殿下・御所言葉)方から、わたくしはね、それはそれは、とても辛い思いを受けたのですよ」
そうおっしゃられた上皇后陛下は、妃殿下のお手を八十路を過ぎているとは、思えないほど、強く握り絞められました。
「だからね、君ちゃんには、わたくしと同じ思いをして欲しくなくって、この30年、わたくしなりに君ちゃんを大事にしてきたつもりよ。ねぇ君ちゃん、どうして・・・・・あんな『大事・おおごと』になるような、しかも畏れ多くも、お上と同じ『御発言』を皇嗣さんに、言わすような、そんな『たわけた』事をなさったのかしら」
「わたくし達は、家族なのだから、お互いに『理解』して助け合ってゆきましょう・・・・・『あの子達』が産まれる前までのようにね・・・・・・。わたくしもあの子達は、可愛いの孫よ。とてもね・・・・・でもね、あの子達が産まれてきたせいで、何もかも皇室の歯車が、可笑しくなったのよ。誰も望んでもいない子を、君ちゃん・・・・・」
そう上皇后陛下がおしゃられると、皇嗣妃殿下は、その場に崩れるように座り込んでしまいました。
しかしそんな妃殿下に上皇后陛下は、
「まぁ、君ちゃんどうしたの?笑顔が消えているわ。君ちゃんはいつも笑顔でいるのが、基本でしょ。ねぇ君ちゃん、わたくし、貴方の笑顔が大好きなのよ。見せて、貴方の可愛らしい笑顔を・・・・ね」
心から尊敬し、何よりの『お手本』としてきた上皇后様。この方の義理の娘として、又この方の皇子様のお妃として恥ずかしくないよう、『過剰適応』などと揶揄されながらも、背いっぱい努力をして、積み重ねてきましたが、もう限界が来てしまわれました。
何年も前から、同じ言葉を大なり小なり尊敬する方から言われ続けてきました。大切な我が子の存在を否定される事に比べれば、週刊紙やネット等の自身の悪口やバッシングなど比べるべきもありませんでした。
(二の姫宮、そして若宮。私は子供達を産んだ事を一時も後悔なんてしていない、出来ればもっと宮様の子供をお産みしたかった・・・・)
浅見松瑩
佐藤光華
(私に強さがなかったばかりに・・・・・そうすれば、若宮、あの子はもっと・・・・・・楽な人生を歩ませたのに、何もかもの重いものを背負い込んで、雲の上に上がられることになってしまって・・・・)
菱田春草 『菊慈童』
日出ずる処の上皇后陛下は、日嗣(ひつぎ・太陽を継ぐ)皇子の妃殿下に憎しみと怒りの目付きで、睨み付けられまして・・・・・
「貴方のせいよ。君ちゃん。わたくしの愛しいみーや(皇嗣殿下)の心を奪ったうえ、望んでもいない(上皇后様が)あの子達を産んだせいで、わたくしのみーや(皇嗣殿下)と可愛い宮ちゃま(お上)との兄弟仲が、悪くなったのよ。わたくしはね、その事を生涯絶対に許さないわ。絶対によ。例えわたくしが、武蔵野の陵(りょう)に入っても、地の底から貴方を怨んでやるわ」
「・・・・・・・・」
「貴方の産んだ子が、雲の上に上がられるなんて、わたくしは、絶対に認めないわ。いい、頭に切り刻んで、良く覚えておくのよ。『雲の上にお上がり遊ばすのは・・・・・』わたくしのお上の、御子であらしゃられる、女一の宮さんなのよ。貴方の産んだ、息子じゃ無いのよ。いいわね・・・・君ちゃん。国民だって8割が、それを望んでいるものね。それは、良く分かっているわよね。君ちゃん。それより何よりの重要なのは・・・・・・」
「わたくしが皇室よ!!わたくしの意思が、皇室の意思なのよ」
妃殿下は、ヒステリックに捲し立てる、上皇后陛下のお言葉を聞きまして、ふと・・・・・
(戦前の軍部が、畏れ多くも昭和天皇の平和への強い御意思を考えもせず、自分達の身勝手な行動を『大御心」としてそれを『錦の御柱』として全てを押さえ付けたのは、こんな風であったのだろうか・・・・)
と、お考えになられました。そして又、
(戊辰の時の会津もきっとそうだったのだわ・・・・『錦の御柱』の元で会津はどれだけ悲惨な思いをしたか・・・・・)
『ならぬものはなりませぬ』妃殿下は、その言葉を思い浮かべながら、
「・・・・・・上皇后様、わたくしは、若宮をお産み参らせた事は、何の罪悪感も抱いては、おりません。わたくしは、正しい事、親王妃としての、当然の役目を果たしただけで御座います」
「その結果、畏れ多いことでございますが、若宮がいずれ、天皇にお成り遊ばすことは、皇室の長い歴史なかでは、何の不自然な事は御座いません。その流れを変えては、決してならぬことと、わたくしは、強く思うので御座います。二の姫宮の時も同じです。あの子を産んだことも、一度も悔やんでなどおりません。それに、皇室に多くの御子様方が、いらっしゃる。それは皇室の繁栄に繋がる、良き事で御座います」
伊藤小波(いとう・しょうは)『十三詣』
(伊藤小波の絵のなかでは一番よく知られた作品です)
皇嗣妃殿下のお言葉を聞かれた上皇后陛下は・・・・・・
(この女はどうかしている。頭がおかしい。一体今の時勢で良くこんな考え方ができるというの・・・・・信じられない・・・・・)
上皇后陛下は、思わず頭を抱え込んでしまいました。
(皇后も相当物の役にも立たない人間だが、しかしこの女は、それ以上だわ・・・・・・わたくしの愛しいみーやと、可愛い宮ちゃま。わたくしの二人の皇子達の妃は、揃いも揃って、とんでもない人間達よ。そんなのを妃に迎え入れて、しまった・・・・・!!!)
「君ちゃん、貴方のお考えは良くわかったわ!!そうね・・・・だから一の姫宮は、普通の女だったら、まずは一緒になろうとも思わない、あんな男を3年も諦めもせず、遂に一緒になったのよ!!しかも、盛大な結婚式まで上げて・・・・・!!それでどれだけ、皇室の品位を貶めたか。分かってるの!!勿論、わたくしは、君ちゃんは、二人の結婚には、最後まで結婚に反対していたのは、承知しいるわよ。でもね・・・・・・」
そう捲し立てた上皇后陛下は、皇嗣妃殿下に静かにそしてゆっくりと毒を注ぎ込むように・・・・・・
「君ちゃん。貴方ののお話をお聞きして、わたくしの可愛い初孫の一の姫宮が、何故、あんな男と一緒になってでも皇室を出て行きたかったのかが、わたくしは、良く理解できたわ。本当に・・・・・。貴方のような母親だったら、まともな娘だったら、どんな事をしても離れたくなるわよ」
「そんな時代錯誤的な考えをしたうえ、周囲に同情を受けたくって、夫を使ってあんな事を言わせる、そんな母親の言うことを聞き入れるわけないでしょう・・・・・・あの子はね、間違いなく不幸になるわ。誰が見てもそれが分かる相手と一緒になってしまったものね。なんて可愛そうな子なんでしょう・・・・・・。貴方のせいなのよ。本当に『毒親』という言葉は、貴方のような、貴方のような・・・・・君ちゃん、貴方のような人間の為にあるのね」
そして、上皇后陛下は・・・・・あの女流作家が妃殿下を称してのあの言葉を・・・・・・。
「え~~~~また~~もう、いい加減にしてよー◯◯◯」by女流作家
「『私の周りの女性で妃殿下を好きだと言う人は一人もいない』本当にそうね。・・・・君ちゃん、わたくしもその一人よ・・・・例え『家族』で・も・ね」
「・・・・・・・・」
上皇后陛下のお言葉で、完全に日嗣の妃殿下のお心は・・・・・・
岡本更園(おかもと・こうしん)『初盆』
以下、参考画像
アニメ 『鬼滅の刃・第20話』
(絶望に打ち砕ける主人公の竈門炭治郎。そして原作を読まないままでこの回を見た視聴者・・・・)
竈門炭治郎
「首を切ったのに!」
累
「僕に勝ったと思ったの、可哀想ー」
累
「哀れな、妄想して幸せだった?」
累
「僕は自分の糸で首を切ったんだよ。お前に首を切られるよりも先に」
累
「もう、いい・・・・・お前も妹も殺してやる。こんなに腹が立ったのは久し振りだよ・・・・・💢💢」
炭治郎
「立て早く!立て!呼吸を整えろ。急げ!早く!」
累
「そもそも何でお前は燃えていないのかな~~僕と僕の糸だけ燃えたよね~」
累
「妹の力なのか知らないが・・・・」
累
「イライラさせてくれてありがとう💢💢」
累
「何の未練もなくお前達を刻めるよ」
炭治郎
「正しい呼吸ならどんなに疲弊しても関係無い」
炭治郎
炭治郎
「焦るな、息を乱すな、落ち着け、落ち着けば・・・・・」
炭治郎
「腕が上がらない・・・・」
其の22に続きます。
菊池契月 『供燈』
(一番場面です)