2回目のアート紀行は、サントリー美術館で開催された「若冲と蕪村」展です。
江戸絵画をテーマにした展覧会は、最近では頻繁に開催されるようになりました。もとより、印象派に影響を与えた浮世絵版画の人気は以前よりあったものの、これほどまでに江戸絵画が注目を浴びたことはなかったと思います。その牽引力となったのが、伊藤若冲なのは誰もが認めるところですが、美術ファンの中では、むしろ若冲よりも与謝蕪村の方が認知されていました。
今回の展覧会の特徴は同い年である若冲と蕪村にスポットをあてた展覧会は、僕の記憶では初めてではないかと思います。
蕪村は、松尾芭蕉、小林一茶と並ぶ江戸時代の三大俳人と称されており文学者であり画人である天才エリートであり、若冲は青物問屋の長男に生まれながら絵を描くこと以外にはまったく興味がなく、若くして隠居を決めて俗世世間から離れた一生を過ごした異端の天才でした。
こうした点からも、二人が並び称されるようなことは、二人の人生から考えればありえないことだと思います。その点でもこの展覧会は新しい試みであると感じました。
二人の生涯を追いながらの展示は、改めて若冲と蕪村の画風を知る上で有意義なものでした。蕪村の緻密な画風の中に壮大な思想性を感じる屏風絵の数々、若冲の画風にこだわらない、変幻自在、大胆不敵な作風など、まったく異なる性格を持った画風を観るにつけ、細密な筆致で深く積みあがていくような哲学的な雰囲気を持つ蕪村と常に新しい試みを持って挑みクリエーターとしての要素も持つ若冲。二人の作品が対峙することで、観る人は新しい発見を感じることと思います。
東京での展覧会は最終日でもあった10日で終了しましたが、7月4日より滋賀県のミホミュージアムで開催されます。