第74回ベネチア映画祭特別招待作品のフランス映画「オーケストラ・クラス」を観賞
今のフランス映画の魅力は、そこに住む人々の日常や問題をストレートに描き感動を誘ういナチュラルな空気があふれているところが素敵です。
今回の作品は、演奏家として行き詰まった主人公が、国の音楽教育プログラムに携わることで、子供たちと音楽を通じて友情を結んでいく物語です。公開時に、子供たちのバイオリン演奏が素晴らしいと絶賛され話題となりました。
小学6年生の子供たちを相手に教育プログラムを担当することとなったバイオリニストのシモン。子供嫌いで気難しいシモンは、演奏経験がなく、多感で集中力に欠ける子供たちに演奏を教えるのは至難の業で、自信を失っていきます。
そんな中で、バイオリンの才能を持った少年アーノルドと出会いったことで、シモンは再び動き出します。それまでの考え方を改め、子供たちの家族を巻き込みながら、到達の舞台フィル・ハーモニア・パリを目指していきます。
ラシド・ハミ監督は、演奏経験のない子供たちをオーディションで選び、実際に行われる教育プログラムさながらに、撮影に挑んでいったそうで、その情熱がそのまま主人公と子供たちに注がれています。
異人種国家フランスが抱える生身の現実を子供たちの生活を映し鏡しながら、演奏を通じて人間的に成長していく姿は真実そのもので、ラストでその実が結び感動に導かれる、文化大国フランスの現実と理想を目の当たりにすると、音楽の素晴らしを改めて実感しました。