ヴィクトル・ユゴーのレ・ミゼラブルに着想して生れた映画「キリマンジャロの雪」を観賞しました。
力強く、ゆったりと流れるジョーコッカーのメニー・リバース・トゥ・クロスも印象的。
フランス・マルセイユの港町。労働組合の委員長の男がリストラされる20人をくじで選ぶところから物語が始まります。自らもその対象として選び、失業した委員長が結婚30周年の記念にプレゼントされたキリマンジャロ旅行。しかし、強盗によりそのチケットも財産も奪われてしまいます。同席した妹夫婦も財産を奪われ、心に深い傷を負ってしまいます。
やがて、リストラされた青年の犯行とわかり、犯行の動機が、幼い兄弟との生活を支えるために借金と生活苦であることを知ります。残された兄弟のために、夫婦は大きな決断をすることになります。
リストラ、貧しい生活の中で懸命に生きる夫婦に襲い掛かる不幸。自らが決断した行動が、思わぬ事態を招いたことへの自責の念。細い糸を紡ぐように、傷づいた心を結ぼうとする夫婦の愛。
港町マルセイユにあふれる喜びも悲しみも分かち合いながら懸命に生きようとする人たち。憎悪や欺瞞と戦いながら、善良なる魂を持ち続けることが、生きていく上で、いかに尊いものかを優しく語りかけてくれる作品です。