長野アートの旅、諏訪篇の二回目は、アールデコ、アールヌーボのガラス工芸で有名な北澤美術館、その新館で開催中の「樋口主明・樋口真一展」です。
僕自身、ガラス工芸と言えば、アールヌーボのガレ、ドーム、またティファニーのステンドグラスやラリックのクリスタルのある作品が、頭に浮かびました。また、日本の工芸作家としては各務鑛三や藤田喬平の代表的な作家として挙げられます。
今回のガラス工芸作家、樋口主明と真一兄弟は、幻の技法パート・ド・ヴェールを再現した作家で海外でたいへん評価の高い作家です。
パート・ド・ヴェールは、古代メソポタミアとエジプトで栄えた技法で、アールヌーボ期に再発見されたそうですが、その技術は工房の秘伝とされ幻の技法とされていました。
その技法を兄弟の研究と長年の試行錯誤により甦り、氏のジャパニーズスタイルが加わることにより新しいパート・ド・ヴェールとして生まれ変わりました。
正面を飾るキャベツの葉の一群や色とりどりの花々と昆虫など自然の中にある美しさを取り入れた造形は、アール・ヌーボ期の作品とは違う新鮮さを感じます。
また、日本の伝統美とモチーフにした作品には、観賞を超えた用の美を持っていました。
個人的な印象としては、主明氏の作品は曲線美をいかした優美さを感じ、真一氏の作品は、意匠的なデザインを生かした力強さを感じました。
両者の共通点は、やはり色彩をふんだんに取り入れた色ガラスの深みのある華やかさを持ち、二人の作品並ぶと会場は、パート・ド・ヴェールと言う共通の旋律をなかで豊かなハーモニーを奏でていました。
ガラス工芸の世界に知識がなくとも、視覚的にその美しさに魅了されると思います。ぜひこの機会に、パート・ド・ヴェールのキング、クイーンの世界を体験してみてください。