先日、名古屋市博物館へ「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」と題したユニークな展覧会を観賞しました。館内は、名古屋ウイミンズマラソン開催と悪天候にもかかわらず老若男女多数の来館者でにぎわっていました。
内容は、江戸後期に活躍した歌川国芳と国芳の弟子であり多数の弟子たちを育んだ月岡芳年を中心に幕末から明治に連なる奇想の系譜をたどるものです。本展は、全ての作品が写真撮影可能ですので、気に入った作品を保存し後日じっくり見てみると新しい発見があるかもしれません。
一般には、東海道五十三次や富嶽百景などや風俗美人画が広く知られている浮世絵。今回の浮世絵は、そんな概念を打ち砕く国芳の新しい発想の浮世絵が並びます。作品の中心は、武者絵の国芳と言われる時代を彩る合戦や中国の水滸伝や八犬伝を題材した独自の発想で生まれた躍動感ある浮世絵。時代の英雄が見事に表現されています。
他にも美人画や幽霊や妖怪などの怪奇画、風俗画を動物にたとえた擬人画に、洋風感覚の美人画など多種彩々です。国芳の晩年は、天保の改革により質素倹約や風紀粛清で浮世絵の世界にも弾圧が加えられます。そんな中で生まれたのが後期の作品で、幕府に対して皮肉を織り込みながら画で反抗を試みています。
そうした国芳の権力に対する自由な発想により生まれる反抗心が、芳年へ、そして数々の弟子たちによって脈々と受け継がれていることが今回の展覧会で読み取ることができます。
歌川国芳をリーダーとし、その継承者となった芳年を中心にした反骨の絵師集団の奇想の系譜を目撃してください。