SBT薄膜を焼成すると
650度ではフルオライト
700度ではビスマス層状結晶が50%
750度ではビスマス層状結晶が90%
800度でビスマス層状結晶が99%
これが1時間で焼成して反応した結晶化速度としてとらえて
絶対温度の逆数と反応速度kでアレニウスプロットを書いた。
その結果、700度から750度までの反応は遅く、活性化エネルギーが大きい。
750度から800度は反応が早くなって、活性化エネルギーが小さくなっている。
これの物理的な意味は、
アレニウスプロットでは衝突が起こりやすいので、高温では反応速度が早いと言われている。
しかし、ゾルゲル法の焼成なので衝突よりも、
トランジション状態またはスタート状態が変化して活性化エネルギーが変化したと考えたい。
700度ではスタートがフルオライトで安定している。
そこから活性化状態の高いエネルギー状態(不安定)をトランジションで通る。
そのため、残された部分は、反応が完結しない。
750度ではスタートがフルオライトから始まり、高いエネルギー状態を同じように経過する。
しかし、次第に活性化エネルギ―が下がる。つまり、
1)スタート状態が不安定化する
2)活性化状態が安定化する
のどちらかが起きている。
2の活性化状態は、微結晶のフルオライトから別の経路でビスマス層状結晶が形成されることを意味しており、結晶の組み換えが別の経路で起こる反応が考えられる。
これは結晶化が進みやすくなっていることを意味していて、
実験結果の750度でBLSFになっていない事実と矛盾する。
1のスタート状態が変化して不安定状態へなっていくために
活性化エネルギーが計算上小さくなると考えられる。
このスタート状態の変化というのが、
微結晶のフルオライトからBLSF(ビスマス層状結晶)ができる反応に対して
微結晶がパイロクロアに変化してからBLSFに変化する経路が始まることに対応している。
微結晶のフルオライトからパイロクロアへの変化はTEM(透過型電子顕微鏡)で確認している。
重要なのは、
フルオライトに比べてパイロクロアはより高温で現れる結晶であることだ。
フルオライトからBLSFとパイロクロアからBLSFが同じ経路(同じ活性化状態)で結晶化するなら
750度で反応が完結しないのは、
エネルギー準位の高いパイロクロアがさらに準位の高いBLSFになる反応の
活性化エネルギーが小さくなっていることを意味していて、
その反応が進みづらい。
パイロクロアは幾何学的にフラストレーションが高く蛍石(フルオライト)より不安定らしい。
つまり、不安定なパイロクロアができると、エネルギー準位が上がるので、
経路が同じなら活性化エネルギー下がる。
実験上、活性化エネルギーが下がっていることが確認できている。
つまり、フルオライトからも、パイロクロアからもトランジション状態はほぼ共通の結晶化過程を含むと考えられる。
800度で反応が完結するのは、
パイロクロアが生じる前にフルオライトからBLSFになる経路が進む、
または、パイロクロアからもBLSFが生じるからと考えている。
750度で形成されるパイロクロアはフルオライトより不安定で、
BLSFと同じくらいエネルギー準位が高いと言える。
それが活性化エネルギーが下がっている結果と一致する。
ウィキペディアより
パイロクロアの結晶構造は立方晶系において一般に「パイロクロア構造」(Fd-3m) と呼ばれる。より一般的には A、Bを共に希土類元素又は遷移金属元素としたときに A2B2O6 および A2B2O7 と表される物質(例えば Y2Ti2O7)の構造のことを言う。
パイロクロア構造は単純な蛍石構造 (AO2 = A4O8) からなる超構造体で、陽イオン A と B が面方位 <110> に沿って並んだものである。また、隣接するBサイトの陽イオン間にある四面体状の隙間に陰イオンが入ることができる。
これは幾何学的フラストレーションを内在する格子系であり、特異な磁気効果を生み出している。
パイロクロア構造の物質は絶縁体 (La2Zr2O7)、イオン性導電体 (Gd1.9Ca0.1Ti2O6.9), 金属性導電体 (Bi2Ru2O7-y)、スピンアイス磁性体 (Dy2Ti2O7), スピングラス磁性体 (Y2Mo2O7)、ハルデン鎖 (一次元反
強磁性鎖) (Tl2Ru2O7)、超伝導体 (Cd2Re2O7)など、多様な物理的性質を示す。