誰が来てくれる…」やきもきしていた金正恩氏
閲兵式に中国から誰を呼べるのか。金正恩体制の世界に向けたメンツにかかわる重大問題で北朝鮮は中国側に数カ月前から要請をしていたもようだ。ところが中国側はなかなか回答をせず、「北朝鮮側をやきもきさせた」(朝鮮半島筋)という。
北朝鮮は5月下旬から要人を頻繁に訪中させた。軍トップの崔龍海・総政治局長が金正恩氏の親書を持って訪中したのが5月22日。6月19日からは金桂寛第一外務次官らが訪中して初の中朝戦略対話を開催。その後も党幹部を訪中させている。一連の中朝対話で中国側は北朝鮮を対話路線への転換に誘導、北朝鮮の6カ国協議再開に前向き姿勢を明言させてきた。
このなかで北朝鮮側が最も固執したのが「戦勝節」への要人の訪朝要請。中国側の発表は訪朝前日の24日だったが、「少なくとも前週まで回答がなかったようだ」(同)という
李源潮副主席は中国最高指導部の党政治局常務委員ではないが、25人の政治局員の一人で次期党大会(2017年)で常務委員入りが有力視されている人物。国家副主席という重要ポストで北朝鮮のメンツを立て、国際社会には「最高位ではないといい訳の利く」とのギリギリの人選だったようだ。
一方、中国は「歴史認識」で北朝鮮と一線を画した。北朝鮮は朝鮮戦争休戦60周年を対米戦争に勝利した「戦勝節」と呼び、故金日成主席の偉業とたたえている。だが、今回の李国家副主席訪朝に関して中国外務省は「朝鮮戦争休戦60周年記念行事に参加のため」と発表し、北朝鮮のいう「戦勝節」には乗らず、客観的な立場を明確にした。
ともあれ、北朝鮮側はホッしたであろう。26日には金正恩氏、李源潮氏の会談が行われ、金氏は「朝鮮戦争時の中国の支援を中国人民支援軍の勇士が参戦して打ち立てた遺訓を北朝鮮は永遠に忘れない」と述べ、李氏は「血で結ばれた中朝の軍隊と人民間の親善を引き継ぎ、固守し輝かせるという使命を帯び訪朝した」と語った。
米韓でも大々的な行事。中国では行事なし
朴槿恵韓国大統領は5月の訪米で、演説した米議会に朝鮮戦争に参加した退役軍人家族を招待して感謝の言葉を述べた。6月の訪中では、習近平国家主席から「北朝鮮の核保有を容認せず」との言質を取った。金正恩体制下の強硬路線が今春の第3回核実験で決定的となり、韓国は米中との連携で対北包囲網の外交攻勢をかけ成果をあげた。
そんななかでの休戦60周年だけに、米韓は同盟関係を強調する式典を大々的に行う。韓国はこの日、参戦国の要人を招いてソウル市内の戦争記念館で式典を行う。米側からはソン・キム駐韓米国大使を代表に、サーマン韓米連合軍司令官やズムワルト国務副次官補代理(東アジア・太平洋担当)らが出席する。
米ワシントンでも同日、朝鮮戦争参戦記念碑公園で記念式を行われるが、ここではオバマ大統領が演説する予定だ。式典には、ヘーゲル国防長官をはじめ韓国からも朴槿恵大統領の特使団や韓国陸軍のトップが出席。演奏会やレセプションなど催し物もめじろ押しだ。
米韓のこうした大がかりな催事を比較すると、中朝は北朝鮮の行事のみで中国での式典の予定は発表されていない。また、李源潮国家副主席率いる中国政府訪朝団も実は、「規模は小さく、特別機も使用していない」(韓国・東亜日報)という。李副主席は訪朝したが、大国のリアリズム外交を行う中国に、かつてのような中朝血盟関係への情熱はない。金日成時代の1993年夏、休戦40周年では胡錦濤・政治局常務委員が代表団を率いて訪朝したが、核問題でウラン濃縮疑惑のまっただ中だった金正日時代の2003年夏、休戦50周年には行事さえなかった。
今回、北朝鮮が威信を懸けて準備したのが過去最大規模の軍事パレードだ。「スカッド」「ノドン」「ムスダン」に加え昨年12月に発射成功した「テポドン2号」の登場や核弾頭の模型の公開なども観測されている。大歓声のなか金正恩氏は指導者としての高揚を感じるのだろうか。
しかし現実には、金正恩政権を締め付ける国際包囲網が今後、強まる一方だ。そんな北朝鮮を、時間をかけ生かさず殺さず手なずけようとする中国。休戦60周年への中国のかかわり方が今後の中朝関係を暗示しているようだ/font>。
閲兵式に中国から誰を呼べるのか。金正恩体制の世界に向けたメンツにかかわる重大問題で北朝鮮は中国側に数カ月前から要請をしていたもようだ。ところが中国側はなかなか回答をせず、「北朝鮮側をやきもきさせた」(朝鮮半島筋)という。
北朝鮮は5月下旬から要人を頻繁に訪中させた。軍トップの崔龍海・総政治局長が金正恩氏の親書を持って訪中したのが5月22日。6月19日からは金桂寛第一外務次官らが訪中して初の中朝戦略対話を開催。その後も党幹部を訪中させている。一連の中朝対話で中国側は北朝鮮を対話路線への転換に誘導、北朝鮮の6カ国協議再開に前向き姿勢を明言させてきた。
このなかで北朝鮮側が最も固執したのが「戦勝節」への要人の訪朝要請。中国側の発表は訪朝前日の24日だったが、「少なくとも前週まで回答がなかったようだ」(同)という
李源潮副主席は中国最高指導部の党政治局常務委員ではないが、25人の政治局員の一人で次期党大会(2017年)で常務委員入りが有力視されている人物。国家副主席という重要ポストで北朝鮮のメンツを立て、国際社会には「最高位ではないといい訳の利く」とのギリギリの人選だったようだ。
一方、中国は「歴史認識」で北朝鮮と一線を画した。北朝鮮は朝鮮戦争休戦60周年を対米戦争に勝利した「戦勝節」と呼び、故金日成主席の偉業とたたえている。だが、今回の李国家副主席訪朝に関して中国外務省は「朝鮮戦争休戦60周年記念行事に参加のため」と発表し、北朝鮮のいう「戦勝節」には乗らず、客観的な立場を明確にした。
ともあれ、北朝鮮側はホッしたであろう。26日には金正恩氏、李源潮氏の会談が行われ、金氏は「朝鮮戦争時の中国の支援を中国人民支援軍の勇士が参戦して打ち立てた遺訓を北朝鮮は永遠に忘れない」と述べ、李氏は「血で結ばれた中朝の軍隊と人民間の親善を引き継ぎ、固守し輝かせるという使命を帯び訪朝した」と語った。
米韓でも大々的な行事。中国では行事なし
朴槿恵韓国大統領は5月の訪米で、演説した米議会に朝鮮戦争に参加した退役軍人家族を招待して感謝の言葉を述べた。6月の訪中では、習近平国家主席から「北朝鮮の核保有を容認せず」との言質を取った。金正恩体制下の強硬路線が今春の第3回核実験で決定的となり、韓国は米中との連携で対北包囲網の外交攻勢をかけ成果をあげた。
そんななかでの休戦60周年だけに、米韓は同盟関係を強調する式典を大々的に行う。韓国はこの日、参戦国の要人を招いてソウル市内の戦争記念館で式典を行う。米側からはソン・キム駐韓米国大使を代表に、サーマン韓米連合軍司令官やズムワルト国務副次官補代理(東アジア・太平洋担当)らが出席する。
米ワシントンでも同日、朝鮮戦争参戦記念碑公園で記念式を行われるが、ここではオバマ大統領が演説する予定だ。式典には、ヘーゲル国防長官をはじめ韓国からも朴槿恵大統領の特使団や韓国陸軍のトップが出席。演奏会やレセプションなど催し物もめじろ押しだ。
米韓のこうした大がかりな催事を比較すると、中朝は北朝鮮の行事のみで中国での式典の予定は発表されていない。また、李源潮国家副主席率いる中国政府訪朝団も実は、「規模は小さく、特別機も使用していない」(韓国・東亜日報)という。李副主席は訪朝したが、大国のリアリズム外交を行う中国に、かつてのような中朝血盟関係への情熱はない。金日成時代の1993年夏、休戦40周年では胡錦濤・政治局常務委員が代表団を率いて訪朝したが、核問題でウラン濃縮疑惑のまっただ中だった金正日時代の2003年夏、休戦50周年には行事さえなかった。
今回、北朝鮮が威信を懸けて準備したのが過去最大規模の軍事パレードだ。「スカッド」「ノドン」「ムスダン」に加え昨年12月に発射成功した「テポドン2号」の登場や核弾頭の模型の公開なども観測されている。大歓声のなか金正恩氏は指導者としての高揚を感じるのだろうか。
しかし現実には、金正恩政権を締め付ける国際包囲網が今後、強まる一方だ。そんな北朝鮮を、時間をかけ生かさず殺さず手なずけようとする中国。休戦60周年への中国のかかわり方が今後の中朝関係を暗示しているようだ/font>。