「北海道博物館」は“北東アジアのなかの北海道”と“自然と人とのかかわり”をコンセプトとして、北海道の自然・歴史・文化を5つのテーマで紹介する博物館。「北海道開拓記念館」と「アイヌ民族文化研究センター」という2つの道立施設を統合して2015年4月にリニューアルオープンした施設です。 現在、特別展示室では、アイヌの伝統工芸品を軸に据えつつ、それらが生み出された背後にどのような人びとの暮らしがあったのかをテーマとする第18回企画テーマ展「アイヌのくらし―時代・地域・さまざまな姿」が開催中です。
今日は約1年ぶりの「北海道博物館」です。特別展示室で開催中の第18回企画テーマ展 「アイヌのくらし―時代・地域・さまざまな姿」を鑑賞すべくやってきました。併せて常設展示の総合展示も見学しました。アクセスは地下鉄東西線の東の終点「新さっぽろ駅」で北レーン10番乗り場よりJR北海道バス「新22「開拓の村」行(30分間隔)」に乗り換え「北海道博物館」で下車です。バス乗車時間は約15分でした。
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“森のちゃれんが”「北海道博物館」。
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玄関正面の内壮夫氏作《はばたき》。“この付近で手を打つと鶴が羽ばたくような音が聞えます”ということでパンパンと手を打つと“うぃいんうぃいん”というような音が聞えました。
今回の主目的は企画テーマ展「アイヌのくらし」なのですが折角の機会で久しぶりなので総合展示も見学します。総合展示では北海道の自然・歴史・文化を5つのテーマで紹介しています(「 第1テーマ 北海道120万年物語」「 第2テーマ アイヌ文化の世界」「 第3テーマ 北海道らしさの秘密」「 第4テーマ わたしたちの時代へ」「 第5テーマ 生き物たちの北海道」)。
総合展示「プロローグ 北と南の出会い」
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展示室に入ってすぐにナウマンゾウとマンモスゾウの全身骨格(レプリカ)がお出迎えです。
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2階から見ると床には衛星写真がプリントされており北からマンモスゾウ、南からはナウマンゾウがやってきていた様子が表現されています。北海道の地で共存していた時期があったそうです。
「第1テーマ 北海道120万年物語」
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第1テーマでは、およそ120万年前から開拓が始まった19世紀の終わりごろまでの北海道と、そこで生活していた人々の歩みが紹介されています。
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余市町のフゴッペ洞窟の紹介ビデオ。1950年(昭和25年)に札幌市から小樽市蘭島へ海水浴に来た中学生が発見したとか。是非一度現物を見たいものです。
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北海道唯一の国宝の「中空土偶」の複製(函館市南茅部縄文遺跡)。これも現物を見たいものですが展示されているという「縄文文化交流センター」 はちょっと遠いようで・・。
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動物形土製品(複製)美々4遺跡(千歳市)。こんな土偶もあるのですね。
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蝦夷地の頃のトドやクマの皮などのアイヌ民族と和人の交易品。
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「オムシャ」のジオラマ。
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“このジオラマは、1808(文化5)年にサハリン(樺太)で会津藩が行ったオムシャを再現したものです。オムシャとは、もともと旧知の人に再会した際の贈答挨拶のことでしたが、しだいに和人が定めた決め事をアイヌの人たちに読み聞かせ、酒やタバコ、米などを与える政治的儀礼となりました。建物の中にいるのは和人のアイヌ語通訳で、建物の前に座っているのはアイヌの長老たちです。儀式のあとには、酒宴が行われました。”
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蝦夷地から北海道の時代に変わった頃。屯田兵の制服と銃に鍬。
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1878年(明治11年)に現在の札幌市東区に入植した家族の物語。最後の和歌が泣かせます。開拓者のご苦労が偲ばれます。
「第2テーマ アイヌ文化の世界」
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アイヌ民族の昔の道具、楽器、歌などアイヌ文化の今と昔を紹介しています。
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アイヌの伝統的な住居建築“チセ”。
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内部も精巧に再現されており鮭などが干されています。
「 第3テーマ 北海道らしさの秘密」
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北海道の産業や名産品、寒い冬を快適に過ごす工夫などの“北海道らしさ”が集まったコーナーです。
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北海道農業に欠かせない馬。神社等で頻繁に馬頭観音碑を見るのは家族同様に暮らした馬への感謝の想いなのでしょう。
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昭和10年代頃の炭鉱(切羽)のようす。
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大正時代の長万部~小樽間の車内の様子が音声込みで再現されています。
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ストーブ類。
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2階の木村捷司氏作壁画《開拓》。1971年(昭和46年)開館の「北海道開拓記念館」から依頼を受け制作されたものだそうです。大作です。
「 第4テーマ わたしたちの時代へ」
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第4テーマでは20世紀の初めから現代までの歩みを紹介しています。「高度経済成長の時代」コーナーにはレトロな家電や自動車などが置いてあります。
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「こんな家電品、昔あったなぁ」という世代になりました。博物館世代?
「 第5テーマ 生き物たちの北海道」
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第5コーナーは北海道の生き物たちの視点で人と自然の関係を見つめるコーナーです。
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シカ注意!
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海の動物です。以上で「総合展示」の鑑賞終了です。「企画展」に参ります。
令和3年度アイヌ工芸品展/北海道博物館/第18回企画テーマ展
「アイヌのくらし―時代・地域・さまざまな姿」;2021.10.16(土) - 12.12(日)
「アイヌのくらし―時代・地域・さまざまな姿」;2021.10.16(土) - 12.12(日)
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企画展のチラシ。ちなみに企画展のみは入場無料です。
“2018年の北海道命名150年、2020年の民族共生象徴空間ウポポイのオープンを経て 、国内ではこれまでになくアイヌの人びとの歴史・文化への注目が高まっています。
一方で、アイヌ文化を象徴するものとして取り上げられる工芸品や伝統的生活文化が、それらの大部分が収集・記録された近世・近代の歴史的状況の中でいかに形作られ、どのような地域差を持ちつつ展開していたのかといった点については、紹介される機会は少ないのではないでしょうか。
そこで今回、近年のアイヌ史・アイヌ文化研究の蓄積を踏まえ、工芸品を軸に据えつつ、それらが生み出された背後にどのような人びとの暮らしがあったのかをテーマとする展示を企画しました。
アイヌ文化は北海道・樺太・千島に閉じていたわけではなく、近世以来、本州産の各種宝物の流通、アイヌの人びとが作り出した品物の本州への流通も相当な規模に及んでいたことが知られています。本展示会では、そのような側面にも焦点を当て、近世・近代以降の政治社会情勢の中を生きたアイヌの人びとのあゆみをご紹介します。”
一方で、アイヌ文化を象徴するものとして取り上げられる工芸品や伝統的生活文化が、それらの大部分が収集・記録された近世・近代の歴史的状況の中でいかに形作られ、どのような地域差を持ちつつ展開していたのかといった点については、紹介される機会は少ないのではないでしょうか。
そこで今回、近年のアイヌ史・アイヌ文化研究の蓄積を踏まえ、工芸品を軸に据えつつ、それらが生み出された背後にどのような人びとの暮らしがあったのかをテーマとする展示を企画しました。
アイヌ文化は北海道・樺太・千島に閉じていたわけではなく、近世以来、本州産の各種宝物の流通、アイヌの人びとが作り出した品物の本州への流通も相当な規模に及んでいたことが知られています。本展示会では、そのような側面にも焦点を当て、近世・近代以降の政治社会情勢の中を生きたアイヌの人びとのあゆみをご紹介します。”
【序章】
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イラクサ繊維製衣服(樺太広地村多蘭泊)
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上掲の衣装を着る樺太の男性の写真です。従来のアイヌのイメージと異なる髪型、靴、漁船等だとか。新聞の紹介記事ではアイヌ民族への先入観を変える写真との説明がありました。
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展覧会場の風景です。
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同上。
第1章:北海道日本海沿岸の人びと
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札幌県治類典/土地測量第二(明治19年)。解説に注目しました。
第3章:アイヌ社会と和人社会の「交易」
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山刀(平取町荷負)。「交易」とは生活に困窮したアイヌ民族の人達が伝統工芸品を和人に売却したことのようです。そうして残された品々が展示されていました。
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飾矢筒(平取町荷負)。
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木箱ほか(根室穂香)。
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棒酒箸と椀(根室市穂香)。
第4章:北千島と樺太の人びと
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“千島アイヌの子孫であることを公表する者が一人もいない”とは切ないです。
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ロシア風衣装(色丹島)。
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イラクサ繊維製衣服(樺太・相浜)。
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木椀(樺太・落帆)。戦争最末期のソ連軍の侵攻で樺太を追われた人たちが持ち帰った貴重な品々だそうです。
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荷縄(色丹島)。
第5章:北海道太平洋沿岸の人びと
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狐神の船(お守り用の船)(長万部町)。噴火湾沿岸の漁師の人達が狐の頭骨をお守りに出漁したとか。
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儀礼用冠(八雲町落部)。
第6章:群馬のケズリバナとアイヌのイナウ
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ジュウロクバナ(小正月用の飾り)(上野村乙父)。アイヌのイナウによく似た“削りかけ技法”による群馬県のケズリバナ。“削りかけ技法”はユーラシア大陸から東南アジアまで広く分布するそうです。
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ハナ(桐生市黒保根町)。
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「北海道博物館」鑑賞後は「野幌森林公園」の「百年記念塔」へ。記念塔は1970年(昭和45年)に北海道百年記念事業の一環として建てられた100mの高さで8階(高さ23.5m)には札幌市街など石狩平野を一望できる展望室が設置されているそうです。現在は危険防止のため百年記念塔及びその周辺への立ち入りを禁止しており撤去方針が決まっているとか。それに反対する運動も続いているようです。
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「野幌森林公園」から見た市街の様子。近くのバス停から帰路につきました。
「北海道博物館」は総合展示や企画展とも北海道の歴史や文化に関する展示物に見応えがありました。とりわけアイヌ民族の歴史や工芸品などと共に今日の北海道を築いたの先人の体験・苦労と両者の相互作用などを学ぶことができました。観光客の方々にも機会があれば訪問をお勧めしたい施設です。勉強になりました。ありがとうございました。
「北海道博物館」
札幌市厚別区厚別町小野幌53-2 011-898-0466
開館時間 5月〜9月 9:30〜17:00 10月〜4月 9:30〜16:30
※入館は閉館の30分前まで
札幌市厚別区厚別町小野幌53-2 011-898-0466
開館時間 5月〜9月 9:30〜17:00 10月〜4月 9:30〜16:30
※入館は閉館の30分前まで
料金(総合展示室) 一般 600(500)円/大学生・高校生 300(200)円
*高校生は土曜日・こどもの日・文化の日は無料
※( )内は10名以上の団体料金です。
※中学生以下、65歳以上の方は無料。入館の際に年齢のわかるもの(生徒手帳、健康保険証、運転免許証、マイナンバーカードなど)をご提示ください。
※障がいのある方は無料。入館の際に障害者手帳・障害者手帳アプリをご提示ください。(その手帳をお持ちの方1名に対し引率者1名は無料)
※7/17(土)の「道みんの日」は無料。
休館日 毎週月曜日(祝日・振替休日の場合は直後の平日)、年末年始(12/29~1/3)、ほか臨時休館あり
http://www.hm.pref.hokkaido.lg.jp/
*高校生は土曜日・こどもの日・文化の日は無料
※( )内は10名以上の団体料金です。
※中学生以下、65歳以上の方は無料。入館の際に年齢のわかるもの(生徒手帳、健康保険証、運転免許証、マイナンバーカードなど)をご提示ください。
※障がいのある方は無料。入館の際に障害者手帳・障害者手帳アプリをご提示ください。(その手帳をお持ちの方1名に対し引率者1名は無料)
※7/17(土)の「道みんの日」は無料。
休館日 毎週月曜日(祝日・振替休日の場合は直後の平日)、年末年始(12/29~1/3)、ほか臨時休館あり
http://www.hm.pref.hokkaido.lg.jp/
(2021.11.24訪問)