ロシア生まれのフランスの画家。叙情的抽象絵画の始祖というべき存在。12月5日モスクワの富裕な家庭に生まれ、最初は法律と政治学を学ぶ。1889年ボロゴダ州に農村調査に出かけたときロシアの民族美術に感銘を受け、95年にはフランス印象派展のモネに啓示を受ける。翌年ドルパト大学(エストニア)の法学教授の席を提共されたが、絵画に専心することを決意し、ミュンヘンに出て絵画を学ぶ。1900年アカデミアでフランツ・フォン・シュトウックに就く。
01年芸術家集団「ファランクス(方陣)」を創立、その展覧会に出品。オランダ、イタリア、チュニジアなどを旅行後、06年セーブルに約1年住む。帰国後、ヤウレンスキー、クービンらとともに新芸術家協会を創立。このころの作品はもっぱら自然に即して描かれてはいたが、しかし、自然の与える情感を「心によって」描くこと筆触と色彩を強調する主観的傾向を強める。
彼が「抽象」に接近するのは、1908年、ガブリエル・ミユンターとともにミュルナウに住んでいたときである。ある夕方、アトリエに帰った彼は、壁面の一点の作品が「内的な輝き」に満ち、何が描いてあるかはわからないが、形と色だけで画(え)が成立していると感じる。それは彼の画が逆さにかかっていたものとすぐに気がつくが、以来、彼は対象が不必要だと悟り、色彩に表現のすべてを託し始める。『鐘塔のある風景』(1909・パリ国立近代美術館)などでは、ほとんど対象は原形をとどめていない。ついで10年『即興曲』あるいは『コンポジシオン』の水彩連作で、最初の純粋な叙情的抽象が成立する。油彩抽象の成立は11年。この前後、彼は新しい絵画についての理念を執筆していたが、これが『芸術における精神的なもの』としてミュンヘンで出版(1912)される。
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