選抜高校野球の出場校が1月29日に決定しました。
昨年選抜高校野球大会が中止になり、
今年は2年ぶりの大会となります。
去年1年間は、
高校球児にとってとてもつらい1年となりました。
今年の3年生、2年生(新学年)にとっては、
先輩たちのつらい姿を見ていますから、
より覚悟を持って野球というものに取り組んでいる代なのではないか、
そんな風に思います。
3月19日から始まる選抜。
そんな「たまった思い」を発露する、
溌溂とした戦いになることを信じて疑いません。
という事で今年も「ライフワーク」ともいうべき高校野球ネタ。
選抜出場校についての思い出をつらつら書き述べるという記事を、
やっぱりやりたくなってしまいました。
今年が6回目。
書いているうちに、
たくさんの思い出の扉が開かれ、
その学校のことが好きになっていくのが自分でもわかるのが毎年のこと。
書いていて本当に楽しいもので、
高校野球っていいなあと思わせてくれるものです。
いつも話が途中からあっちやこっちに飛んで、収拾がつかなくなることもたびたびなのですが、
そのあたりはご容赦を。
秋の大会終了から4,5か月のオフシーズンを経て、
桜咲き乱れるころ、
いよいよ「野球が始まる」といううれしさ、楽しさがあふれるセンバツという大会。
昨年の「休止時期」を経て、
そんなセンバツの原点を思い出させてくれる大会になることを、
期待しています。
それでは各校の思い出などを北から。
まずは北海道・東北地区です。
≪選抜出場校 思い出編 1≫
北海道代表 北海 13回目(10年ぶり) 準優勝1回
夏38回出場 準優勝1回 甲子園通算 33勝50敗
北海道随一の名門校である北海。春12回、夏はなんと38回もの出場を誇る”超名門校”です。戦前から70年代初めのころまで、それこそ年中行事のように甲子園出場を果たしていた北海ですが、71年の選手権を最後に、82年の選抜出場まで10年余りの「空白期間」がありました。それはワタシがまさに高校野球を見始めた時期とかぶっており、「北海」という名前がワタシの中に刻まれるのは、もうかなり北海道のたくさんの学校がインプットされた後です。しかしながら、その後の活躍、そして北海道の高校野球史を歴史を紐解くたびに登場する「北海」という名前、そしてあの純白に黒のアンダーシャツというまさに「トラディショナルスタイル」ともいうべき伝統のユニフォームを見るたび、心躍るチームとなりました。
さて、北海というと強烈に思い出すのは、やはり記憶にも新しい2016年の夏、大西投手を擁しての決勝進出ですね。松山聖稜戦ではサヨナラ勝ちしたものの非常にまずい試合運びで、上位進出は難しいなあという感想を持ったものでした。しかしこの試合で見せた「接戦をものにする精神力の高さ」はここから存分に発揮されて、日南学園を終盤突き放して勝つと、聖光学院戦では3点のビハインドをものともせずに逆転勝ち。さらに準決勝ではあの鍛治舎監督率いる秀岳館を1点差で振り切って決勝へ。本当に勝負強く、大西投手はピンチでも常に冷静に自分のピッチングをしていましたね。決勝では敗れましたが、この年の一つの華のチームでした。常に好投手と対戦したにもかかわらず、決勝までずっと二けた安打を続けた打線は、北国のどっしりとした安定感を感じさせてくれました。近年はずっと、甲子園に出てくると強豪とすぐに当たってしまう・・・・というイメージがありますが、常に接戦に持ち込んで勝負する姿に、北海道のリーダーたる矜持を感じています。95年の岡崎投手、11年の玉熊投手など、制球力と強気の内角攻めで8強まで勝ち上がった投手達も思い出しますし、また日ハムに進んだ鍵谷投手がエースだったチームで、その鍵谷が前半から滅多打ちされたのに、ひるまず大反撃に出て二けた得点を挙げた(10-15)試合などにも強烈な印象があります。「やっぱり北海が出ないとなあ・・・・」という北海道のオールドファンのつぶやきが聞こえてきそうな、道産子にとっては今も昔も変わらぬ「オレ達のチーム」ですね。
東北代表 仙台育英 14回目(2年連続) 準優勝1回
夏28度出場 準優勝2回 甲子園通算48勝40敗
近年毎年甲子園に登場してくる仙台育英。須江監督を監督に迎え、まさに黄金期を迎えようとしている注目のチームです。平成に入るまではまだ、どこかに「北国のひ弱さ」を残しているチームでしたが、竹田監督がそんなイメージを払しょくする大型チームを作り毎年のように甲子園に登場し、それを引き継いだ教え子の佐々木監督が大きくチーム力を伸ばしていきました。そして今、新たな時代に突入して、まさに「新たなアプローチによるチーム作り」を進める須江監督が、さらに一段上の領域に挑み続けています。仙台育英は、一度分厚い壁を破り全国制覇を達成すれば、その後何度でも日本一をつかみ取るチームになる、そんな予感もしています。まさに「北の大阪桐蔭」のようになるのではないかという期待、高いですね。
そんな仙台育英、70年代から80年代にかけては、ライバル東北と激しいつばぜり合いを繰り広げていました。今も続くこのライバル関係、今は仙台育英がかなり優勢ですが、当時は若干東北のほうが優勢でした。投手力では互角でしたが、打力で東北が上回るという年が多かったように思われますね。そんな中でワタシの記憶に残っているのは、78年のエース大久保ですね。まさに「巨漢」という体から、重い速球をグイグイと投げ込んでいくタイプのピッチャーで、その速球派”超高校級”の冠がついていました。寡黙ないでたちの、「東北地方の剛腕の系譜」を継ぐ投手という感じで、その年は東北にも薄木投手という剛腕がいたのですが、県大会では大久保が無失点(?)の好投を見せて甲子園に進出してきたのでした。甲子園初戦で激突したのは高松商。河地投手という好投手を擁する強豪で、試合前から「必ず投手戦になるのでは」と思われていましたが、まさに「思った通り」の両投手の素晴らしい投手戦になって、甲子園が揺れる”球史に残る一戦”となりました。選抜で牛島ー香川のバッテリー(まだ2年生)を擁する浪商を完封した河地が速球と変化球の切れで勝負する”柔”の投手なら、ビシビシ速球を投げ込む大久保は”剛”の投手で、見ているこちらの心臓が破裂するような、延長17回、1-0というしびれる試合でした。まさに三沢ー松山商の太田・井上両投手の投げ合いをほうふつとさせるような球史に残る投手戦で、その結末がサヨナラデッドボールというところもまた、ドラマでした。
もう今から43年も前の話となってしまいました。しかしいつまでたっても忘れることのできない、高校野球名勝負のうちの一つですね。さあ、仙台育英。数々の歴史を重ねてきましたが、いまだ「大優勝旗」には届いていません。何度も何度も、手をかけながらもするりと零れ落ちてしまうということがありましたが、今年はまた大チャンスといわれています。さあ、今年こそ悲願達成はなるのか。高校野球ファンならずとも、注目は高い学校ですね。
昨年の記事 ⇒
近年非常に充実した戦力を誇っている仙台育英。選抜は3年ぶりですが、夏は3年連続で出場し、3年前には”絶対王者”大阪桐蔭をサヨナラで下し、昨年は素晴らしい打線と安定した複数枚の投手陣で8強まで進出しました。すでに「出るだけ」はおろか「8強ぐらい」では全く満足することはなく、常に全国制覇を視野に入れながらの戦いを見せてくれているこの仙台育英。須江監督に代わってから、特に系列中学からの選手を【6年一貫】で育て上げることで実力を伸ばす新機軸を打ち出しており、いよいよ機は熟したと思わせてくれる最近の戦いぶりです。今年も戦力は充実。あの2015年の夏準優勝時よりも戦力は上ともみられており、「近畿一択」と予想されるこの選抜で、あっと驚く結果を見せてくれるかもしれません。その仙台育英についての思い出は、3年前に書いた記事をご参照ください。
前回の記事 ⇒
仙台育英といえば、昭和50年代からずっと宮城県では東北高校と2強時代を築き、いまだにその図式は崩れていません。そして平成に入ってからはすっかり強豪として甲子園常連となり、長く”東北の雄”として東北勢初の大旗を狙ってきている学校です。現在、これだけ強豪校をそろえて甲子園で毎年大活躍するのに、東北勢はまだ甲子園で優勝を経験したことはありません。あの沖縄、北海道、北陸など、優勝未経験の地域で『初優勝』が続々と生まれているここ20年。東北勢も何度も何度も初優勝に手をかけながら、最高成績は『準優勝』にとどまり続けています。しかし近年、3季連続甲子園準優勝という金字塔を立てた八戸学院光星や、菊池・大谷といったプロ野球の大選手を生んだ花巻東、ダルビッシュ等を擁して伝統のストライプが甲子園を所狭しと駆け回る東北、そして10年連続甲子園出場という途方もない記録を引っ提げて毎年優勝争いに顔を出すようになった聖光学院など、多士済々の強豪校が東北勢の『その時』をわが手に……と挑み続けています。しかしながら、そのどの学校よりも『優勝に一番近い』と言われ続けているのが、この仙台育英。何しろ平成に入ってからだけで、3度もの決勝進出を果たしているのですから。そしてその3度のいずれもが、『あと一歩』まで優勝校を追い詰めながらの惜敗・・・・・とあっては、ファンとしては期待はいやがうえにも盛り上がるというもの。その仙台育英の3度の準優勝。どのチームも素晴らしかったのですが、やはりワタシが一番思い出に残っているのは、エースで4番の大越が獅子奮迅の活躍をした、平成元年夏の準優勝でしょう。エース大越はまさにマウンド上でも気合の塊のような選手で、相手をにらみつけながらの『ちぎっては投げ』は見ているものすべてを”大越ワールド”に引き込んでいくような凄みを持っていました。 準々決勝ではあの元木・種田・宮田らを擁して『最強』の呼び声高かった上宮に対して、大越が選抜のリベンジとばかり熱投。見事に春の雪辱をした仙台育英が、このまま初の東北勢の優勝だと日本国中が湧きかえっていました。決勝は安定した戦いでここまで勝ち上がってきた帝京との対戦になりましたが、仙台育英は常に主導権を握り、ずっと押しに押す・・・・・という試合展開でした。しかし≪1点≫がどうしても遠い展開。その1点が取れず、連投の大越が延長に入ってついに捕まって、優勝に一歩届きませんでした。『東北勢が優勝旗に手をかけた・・・・・』と形容される戦い、古くはあの『延長18回引き分け再試合』の太田擁する三沢高校、そして『コバルトブルー旋風』の田村投手の磐城高校、菊池投手の花巻東高校、それらと並んで、この大越投手の仙台育英高校が上がります。
いずれも『あと1点』が取れずに涙をのんだ、そんな試合ぶりでした。しかしそれがまた、『東北勢らしい戦いぶりだ』という高校野球ファンの共感を呼んで、より以上の拍手を甲子園で受けることになるんですね。
さて仙台育英。近年は【好投手】だけではなく、【全国屈指の強力打線】をも引っ提げて甲子園に乗り込んでくるようになっており、『東北勢の悲願』はまさに『手を伸ばせばすぐそこ』にあるというところまで来ています。今年のチームも、堂々の優勝候補だと思います。仙台育英関係者としては、『どこでもいいから、東北に優勝旗を・・・・・』なんて言うコメントとは裏腹に、『他校に先を越されてなるものか・・・・』という本音、当然強く持っていると思います。果たして、悲願はいつ達成されるのか。他の部活動も常に全国レベルで戦う仙台育英高校。注目度が最も高い高校野球で、栄冠に輝くのは、いつのことでしょう。
東北代表 柴田 (宮城) 初出場
夏出場なし
このセンバツで、春夏を通じて初めて甲子園の土を踏む学校がいくつかありますが、この柴田高校もその一つ。昨秋の県大会では3位だったものの、東北大会で快進撃を見せて準優勝に輝き、甲子園のイスを射止めました。この柴田高校といって思い浮かぶのは、ワタシはロッテの小坂選手の母校というぐらいです語る言葉を何一つ持っていないのですが、そのほかに一つ特徴がある学校なのでそちらをフォーカスして。。。。
この柴田高校、体育科のある県立高です。近年、というかかなり前から、体育科のある公立校が各スポーツで目覚ましい活躍を見せることがあります。ワタシの中でパッと思い浮かぶのは、サッカー等で大活躍の市立船橋、同じくサッカーで選手権3年連続4強進出の強豪・矢板中央、そしてバレーボールで時代を築く神奈川の市立橘などです。しかしながら高校野球でも、たびたび甲子園で活躍する学校が現れていて、「さすがだな」と思うことしきりですね。思い浮かぶ学校としては、先にも上げた市立船橋、イチフナの甲子園での活躍は知られたところですが、その前にセンセーショナルだったのは大宮東ですね。埼玉県でも先駆けといわれた公立の体育科設置校でしたが、平成の頭のころ、その存在は光り輝いていました。まず山口幸次のいた88年のチームが強烈で、前年の鈴木健らのいた浦和学院をも凌駕する大型チームとのことで、大いに注目していました。埼玉出身のワタシにとっては、浦学、大宮東と続いていく「新たな大型チームの出現」は、それまでとかくこじんまりとしたチームの多かった埼玉県の、新たな息吹を感じたものでした。その山口のチームは甲子園には行けなかったものの、93年にはスラッガー平尾(元西武)を擁してセンバツに初出場して準優勝。この大宮東に浦学、春日部共栄ら、これでもかと出てくる「埼玉の新たな強豪チームの息吹」に、ワタシは小躍りしたものです。
・・・・おっと、話が完全に横道にそれましたね。そんな「公立体育科の強豪」の系譜には、阪神・矢野監督らの母校である大阪の桜宮高校や、池山を生んだ市立尼崎高校なども連なるのですね。そして最近でも、たくさんの学校がこの体育科をもとにスポーツで存在感を示してくれています。ワタシのイメージとしては、「公立の体育科」の学校の選手というのは、まさに「地元の野球小僧の集まり」という感じがして、なんだかワクワクしちゃうなあ・・・・・そんな感じです。
昨今の甲子園出場校を見ても、徳島の鳴門渦潮や、山形中央。宮城の利府はセンバツで4強にも進出しました。さらに近年、悲願の甲子園初出場を成し遂げた京都の乙訓や、長野の飯山もそのようですね。今年も21世紀枠で出場を決めた青森の八戸西がいます。
体育科といってもやはり公立校だけに、様々な制約はあると思われますが、強豪校に伍して、その力を甲子園でいっぱいに表してほしいと思っています。念願かなっての甲子園初出場。健闘を祈っています。
(つづく)