≪第98回全国高校野球選手権大会≫
【大会総展望】
横浜・履正社・秀岳館の超大型3チームが優勝争いの軸!
春夏連覇狙う智弁学園と、精鋭そろう関東勢が追う展開か?!
昨年『100年の高校野球』をうたった特別な大会を行った甲子園。
今年は再来年の『第100回大会』を控える年の大会ではあるが、
甲子園には力を持ったチームがわんさかと出場を決め、
なかなか面白い大会になる予感だ。
地方予選では、
前半戦から強豪が敗れる波乱が巻き起こったものの、
『本当の強豪』はしっかりと地方予選を勝ち抜いて本大会への出場を決めた。
今年の一つのキーワードは、
『選抜はなかったことに!』。
選抜大会では、智弁学園が優勝。
高松商が大活躍を見せ、
近畿勢の大躍進、反対に関東勢の大不振が目立った大会であった。
『そのまま1年、この流れが続くかな?』
とワタシも思っていたが、
この夏を迎えてその戦力図は大激変。
夏の地方予選を勝ち抜いてきた中で、
その戦いぶりから3強に推したいのは、
横浜・履正社の『選抜不出場』の2校と秀岳館だ。
3チームともにその投打の充実ぶりは傑出しており、
堂々と優勝候補に挙がる戦力だ。
そしてその3チームを追うのが、
強豪がそろう関東勢と選抜優勝の智弁学園、藤嶋が健在の東邦であろう。
穴がないというよりも、相手を完ぺきに粉砕する3強の強さ
3強はそれぞれに強みを持つが、何しろその豪快な野球は必見で、甲子園を沸かせるのは間違いないところ。
横浜はドラ1をすでに確約されているエース藤平に左の好投手石川の2枚看板を持つ『投手力中心のチーム』とみられていたが、ケガで戦列を離れていた増田の復帰や1年生の台頭などの相乗効果で、この夏は打線の厚みが2枚も3枚も違ってきた。戸堀・遠藤らの足の速い1・2番が塁に出て、村田・増田・公家・石川らの破壊力満点の中軸で返すのがパターン。打線に関しては、昨年全国制覇の東海大相模よりも上回ると断言できる。そして見落としてはいけないのが、ここ数年にはなかった横浜の堅い守備。もともと堅い守備力が売り物のチームでもあったのが、近年は大事なところでミスが出るという野球になっていた。しかし今年のチームは守備からの破たんの心配がまずないぐらいに整備されている。横浜スタジアムと全くグラウンドの質が違う甲子園の最初のゲームで『グラウンド慣れ』できれば、今年の横浜は強い。波に乗れば、松坂世代並みのチームに昇華することも可能なほど、ポテンシャルの高いチームだ。その横浜に力で勝負できるのは何といっても履正社だ。こちらもドラ1で競合間違いなしの剛腕サウスポー・寺島を擁して投手力は万全だ。寺島は何といっても、球が速いだけではなく安定感が抜群で、勝負の夏に鍛え上げてきた。大阪大会でほとんどの試合をコールド勝ちしてきた打線は『履正社史上NO1』の破壊力を誇る。春の近畿大会では智弁学園をフルメンバーの試合で完膚なきまでに叩いてその力を見せ、その勢いのまま夏の経験を加えたこの履正社も、優勝候補の名にふさわしい戦力を整えている。そしてその2強に戦いを挑むのが、選抜でセンセーションを巻き起こした”鍛治舎野球”の秀岳館。
何しろこのチーム、春の時点でもう『出来上がっている』というぐらいの鋭い振りを見せて甲子園を席捲。その後熊本地震などでチームの仕上がりに一抹の不安を抱えていたが、熊本大会で『勝って強くなる』のごとく一戦一戦強くなっているのが実感できるような戦いぶりで制し、甲子園に帰ってきた。このチームの売り物は選手層の厚さ。大阪はもとより全国から好選手を次から次に集めて作ったチームだけに、試合途中から出てくるベンチの選手たちのスキルがものすごく高く、『18人の総合力』という点では上の2校には全く劣らない。むしろ連戦になる上位の戦いでは、『一人のスターに頼らない』投手陣などはむしろ上との評価もできるぐらいで、上の2校との『ガチンコ勝負』がたまらなく楽しみなチームだ。
春夏連覇狙う智弁学園のカギは、エース村上の復調
この3強が大会の中心になるのは間違いないような感じだ。過去数年間と比較しても、この3チームの力はかなり抜けているように感じられるが、追うチームも多士済々なのがこの大会の特徴。その中でまず名前が挙がるのが、選抜優勝の智弁学園だ。選抜では村上投手を擁してロースコアゲームをことごとくものにしてきた智弁学園だが、各校の打力が上がってくる夏の大会では、苦戦することがある程度事前に予想されていた。その通りの奈良県大会になり、智弁学園は毎試合苦しい戦いを強いられてきたが、それを潜り抜けてきたたくましさは、選抜時以上にチームにしぶとさを身につけさせている。しかし全国の舞台で勝ち上がっていくためには、村上投手の完全な復調がカギとなってくる。昨年選抜優勝して夏も登場した敦賀気比の平沼投手が、選抜では通用していた投球が夏はことごとく跳ね返されていたのを見てもわかるように、春と同じことをやっていたのでは夏は通用しないのは明白で、村上投手が『夏用の投球』で好投できるかどうかが、チーム浮上のカギを握る。もともと大型チームではないだけに、力勝負になった時の対応もカギになる。選抜出場校といえば、選抜では明石商の前に打線が沈黙して敗れた東邦は捲土重来を期す。1年時からの”スーパーエース”藤嶋も最後の夏を迎えた。相変わらず素晴らしい投球術で相手をほんろうする。こちらも智弁学園と同様、夏勝ち上がるためにはエースに頼らない打線の奮起が必要か。力は持っている打線だけに、はまれば上位進出も十分に期待できるが、頼りになる投手が結局藤嶋一人のため、どうしても連騰を強いられそうな場面は多くなりそうでそのあたりが心配のタネ。
今年の選抜大会では、代表チームがことごとく初戦で敗退の憂き目を見た関東勢。『なかなかのチームがそろっていたはずなのに・・・・・』という釈然としない思いを抱えて夏を迎えたが、『御大将』横浜以外にもたくさんのサムライたちが選手権出場を決め、上位進出を狙う体制が整っている。まず注目されるのが、3年前に初出場初優勝を果たしそれ以来の出場となる前橋育英。一冬越して、これほどまでに劇的に変化を遂げたチームも珍しい。春の関東大会では花咲徳栄、関東一、横浜を次々撃破。その力を見せつけた。4本そろう投手陣に決して破たんすることのない伝統の守備、そしてそこそこの打撃力。大型チームではないが、3年前に匹敵する『野球力』を備えて、『まさかの快進撃第2章』が繰り広げられるかもしれない。花咲徳栄も優勝候補。選抜で秀岳館の前に初戦敗退の憂き目にあったが、剛腕エース・高橋がそれ以降一切マウンドに立たず、夏一本に絞って力を蓄えた成果が夏に表れ、今が最もいい状態になって甲子園に臨めることになった。県大会無失点、ほとんど四球も出さない安定感抜群の高橋を、守備陣は無失策で支えている。ロースコアゲームで勝ち進むシュミレーション、岩井監督の頭の中には完全に出来上がっているようだ。千葉の木更津総合は、選抜では関東勢で唯一の8強入りと気を吐いたチーム。9回2死まであの秀岳館打線を完ぺきに抑え込んだサウスポーエース・早川がこの夏もマウンドに上がる。打線に破壊力がないのでロースコアゲームにならざるを得ないが、この夏はほぼすべての試合で1点差をしぶとく勝ち抜いてきたという自信も備わった。早川が気持ちよく投げることができれば、どんな重量打線でも完全攻略は難しい好投手だ。このところレベルの上昇が著しい北関東勢では、作新学院と常総学院も出場を決めた。作新学院は6年連続の夏で、勝手知ったる甲子園。過去3年と比べても今年のチームはまとまっていて、150キロの剛腕エース・今井につなぐ必殺継投が決まれば、上位進出の可能性は十分。一方選抜では優勝候補の一角に上がりながら完敗を喫して早々に甲子園を去った常総学院も、不調をかこったエース鈴木がようやく夏の大会の後半に本領を発揮。鈴木の完全復調が前提とはなるが、優勝争いに割って入る力をもともと持っているだけに、関係者の期待は大きい。そしてしんがりは山梨学院。清峰を全国屈指の強豪に導いた吉田監督就任3年目。今年はものすごい打線の大爆発で県大会を勝ち抜き、決勝では剛腕3枚を擁する東海大甲府に対し、完膚なきまでに叩きのめしての代表だ。実際に見ていないので何とも言えないが、勝負弱かったかつての山梨学院と違い、全国での勝ち方を熟知した吉田監督が率いるだけに、何かやりそうな雰囲気も漂っている。さあ、今年の関東勢。7チームが優勝に絡むポテンシャルを持つチームだと考えられ、どこが実際に勝ち進んでいけるか、大変楽しみな面々がそろった。
ダークホースもたくさん。波に乗ればまさかの上位進出も十分に可能だ
この上位が期待される優勝候補以外にも、力を持ったチームは数多い。まずは2年連続の夏を決めた広島新庄。昨年も注目されたエースの堀は、肘の下がった左腕から145キロの剛球を投げ込む。連投に一抹の不安を残すとは言うものの、彼が好調な時に当たるのは、各チームとも『ごめんこうむりたい』ところだろう。打撃では京都翔英、常葉菊川も各々4割打線を引っ提げての登場だけに、楽しみだ。東北では八戸学院光星の力が、やはり抜けている。投攻守に穴のない戦力で、全国大会慣れしているだけに安定した戦いぶりを見せてくれそうだ。春の北信越大会優勝の星稜も、堂々の進出。打線は県大会9本塁打の破壊力だ。樟南は2本の素晴らしい左腕がチームを支える。樟南得意のロースコアゲームで、何度も旋風を起こしている甲子園でその再現を狙っている。7年連続出場の明徳義塾は、特筆される特徴はないものの、やはり安定した戦いぶりと甲子園での強さが光る。10年連続の聖光学院も、過去9年のチームと比較するとポテンシャルは高くないが、戦い方を知っているという点において、他校とは全く違うチームである。力負けするチームとの対戦でなければ、今年もかなりやれるはずだ。一度負けてから甲子園が転がり込んできた創志学園は、そのラッキーを何とか活かしたい。好投手・高田を擁しているだけに、快進撃の可能性も十分だ。
その他では、個々にいい選手がいるチームに注目してみたい。まずは初出場・松山聖陵のアドウワに注目。196センチの長身から長いリーチを使って投げる146キロの剛球は、対戦相手としては『見たこともない角度から』放たれる球に見えることだろう。東北のエース・渡辺は”ノーモーション”から投球。打者を幻惑する。近江の145キロ右腕といわれるエース京山の安定感にも注目が集まっている。中京の4番は通算68本塁打の今井。一発の期待が甲子園の空気を変える。
各チームとも、最初の狙いはただ一つ。初戦突破での校歌斉唱だ
一方でチームの総合力で戦う各校も上位進出に狙いを定める。九州国際大付は3年連続の夏。今年も相変わらずの長打力がチームのウリだ。市尼崎はタフなエース・平林を軸になかなかの好チーム。展開がはまれば、甲子園でもかなりやれる力を持つ。いなべ総合は選抜では高松商を9回まで追いつめた過去を持つ好チームだ。長崎商の小兵エース・本田は県大会5試合をすべて完投のタフネス左腕。全国でいち早く代表を決めた嘉手納の、選手個々の運動能力の高さは特筆される。沖縄らしい”小粒でもピリリと辛い”好チームだ。5年連続の夏をもぎ取った鳴門は、過去3年間の初戦敗退の悔しい思いをすべてぶつける夏にしたい。尽誠学園は県大会決勝で高松商を破った完ぺきな戦いぶりを何としても甲子園で見せたい。激戦の東東京を3試合サヨナラ勝ちで飾った関東一は、一年間東京で負けなしの力を甲子園でも発揮したいところ。東北勢では、レベルの上がった岩手の力を見せたい盛岡大付、連続出場で昨年に続く初戦突破を狙う鶴岡東が出場。選抜21世紀枠から1年、力をつけて自ら代表をもぎ取った大曲工にも期待。北海道では創部3年目のクラーク国際が初。北海は2年連続の出場。両校ともに決め手がある戦力ではないが、1勝を狙っている。
悲願の初出場を決めた八王子は、清宮を抑え切った左右の2本柱に期待。中越・佐久長聖はいずれも甲子園経験が豊富で、自分の戦いができそうだ。富山第一は安定感のある戦いぶりで前回に続く8強入りを狙う。北陸の監督は日大三の懐かしい剛腕投手、谷津田監督。市和歌山は選抜に続きエース赤羽の投球で相手を抑え込みたい。境・出雲・高川学園の中国勢は、いずれも甲子園経験は豊富ではないが、全国の相手に名前負けすることなく戦い切ってほしい。唐津商は県大会準決勝不戦勝というツキにも恵まれた。何かを持っている学校だ。大分・日南学園はいずれも九州では今年一年しっかりと足跡を残してきたチーム。全国に名前をとどろかせたいだろう。
さあ、いよいよです。
各都道府県のレベルが底上げされてきた現在の甲子園で、有力校と言えども”絶対”はない戦いです。
今年もまた、大激戦が繰り広げられそうな気配濃厚といったところでしょうか。
昨年で言えば早実、関東一の東京勢の躍進は、ほとんど予想されていませんでした。
一昨年は三重の大躍進に、甲子園がわきました。
そして三年前、だれが前橋育英の初出場初優勝を予想できたでしょうか。そして宮崎県勢として初めての、
延岡学園の決勝進出。
さかのぼれば07年の佐賀北の全国制覇や、09年の日本文理の決勝進出など、『サプライズ』が後を絶たないのが、
甲子園、特に夏の選手権の歴史だと思います。
今年は果たしてどこが、
甲子園を沸かせる学校になっていくのか。
実力通りにはいかないのが定番中の定番。
リオ・オリンピックよりも、
ずっと激戦が多い甲子園の夏もすぐそこ。
どの学校も、頑張れ!!!
最新の画像[もっと見る]
- さあ リーグワン開幕! 5日前
- 2024.10.26 オールブラックス戦観戦記 2ヶ月前
- 大の里 圧巻の2度目のV! 令和の怪物が相撲界を変える! 3ヶ月前
- 大の里 圧巻の2度目のV! 令和の怪物が相撲界を変える! 3ヶ月前
- 大の里 圧巻の2度目のV! 令和の怪物が相撲界を変える! 3ヶ月前
- 大の里 圧巻の2度目のV! 令和の怪物が相撲界を変える! 3ヶ月前
- ラグビーパシフィックネーションズカップ 日本代表 決勝に進出 3ヶ月前
- ラグビーパシフィックネーションズカップ 日本代表 決勝に進出 3ヶ月前
- おめでとう玉鷲。 1631回、連続出場の記録を更新! 4ヶ月前
- 第106回 全国高校野球選手権地方大会 クライマックス 5ヶ月前
「高校野球」カテゴリの最新記事
- 今年最後の野球 明治神宮大会は、大学は青学大の春秋2冠。高校は横浜が、あの松...
- 神宮の森がすごいことに。。 そんな中、明治神宮大会観戦記
- さあ各地区の優勝校決まった! 明治神宮大会で腕試し。
- 高校野球秋の陣 今日6地区で準決勝 ほぼ選抜の出場校が見えてくる
- ふと、ふと感じちゃったことなんだけど・・・・・・
- さあこい大尊時代! 幕内では大の里が、十両では尊富士が全勝でトップをひた走る!
- ヤクルト青木 ついに引退。
- 侍ジャパンU18 壮行試合 まあ、やっぱり実力の差は顕著だわなあ。。。。
- 100年の甲子園 第106回全国高校野球選手権を振り返る。
- 夏の甲子園2024 京都国際初優勝。 関東一、無念。あと一歩。