≪第101回全国高校野球選手権大会≫
- 予選展望9 九州 -
【福岡】(参加134チーム)
西日本短大付が筑陽学園に挑戦状をたたきつける!
◎ 筑陽学園 西日本短大付
〇 九州国際大付 福岡大大濠
△ 真颯館 飯塚 九産大九州 東筑
▲ 東海大福岡 自由ヶ丘 折尾愛真 沖学園
昨夏は初めて選手権に2校を送り出した福岡。2校の代表はいずれも初出場校で、新たな時代の息吹を感じることができた。今年はどんな大会になるのか。まずは2校が大きくリードする展開になっている。昨秋の九州チャンピオンで選抜ベスト8の筑陽学園は、西、菅井、西舘の投の3本柱が素晴らしい。夏の厳しい大会を見据えると、この投手陣はチーム全体に安心感をもたらす。打線も破壊力があり、自力では他校を一歩も二歩もリードする。一方今春の九州チャンピオンに輝いたのは西日本短大付。日章学園、明豊、熊本西の選抜出場校と宮城擁する興南を破っって優勝した九州大会は、まさに完璧な戦いぶりだった。本格派のエース江崎は全国制覇した時のエース森尾をほうふつとさせるプレースメント投球が素晴らしい。打線も強力で、ライバルを破り甲子園に登場すれば、優勝候補の一角を張るだけの力を持つチームとみた。両校の力が抜けた存在の大会になりそうだが、追ってくる各校も力は持っている。代表格は九州国際大付。エース下村は筑陽の3本柱、西短の江崎にも劣らない好投手で、力を発揮できれば十分に2強とも互角の戦いを挑めそうな気配だ。打線は相変わらずどこからでも長打が飛び出る打線で、もろさも同居しているとはいえ破壊力はハンパじゃない。秋の4強から春は決勝に進出した真颯館は打線が活発。主砲の竹内はマウンドも守る二刀流。福岡大大濠は2年生エース山下が軸。エースの系譜を継ぐ好投手で、打線の援護も期待できるチームだけに快進撃も。飯塚も秋春8強とかなり戦えるチームだ。九産大九州、東筑らとともに、上位で力負けしない野球で甲子園を目指す。名門の東海大福岡、自由が丘は夏の戦い方を知り、昨夏悲願を達成した折尾愛真、沖学園も連覇へ照準を定める。
【佐賀】(参加39チーム)
佐賀商、佐賀学園がゆるぎない2強を形成。宿命の対決で決着をつける。
◎ 佐賀商
〇 佐賀学園
△ 鳥栖商 北稜 佐賀北 唐津商
▲ 神崎清明 早稲田佐賀 東明館
連続出場を狙う佐賀商が春の県大会を制覇。追っていく佐賀学園とともに2強を形成する。佐賀商は昨夏のメンバーが5人残りチームの中心に。それだけどっしりとした試合運びができるのが強みか。2年生エースの野田がしっかりと投げることができれば、打線はいいだけに昨年の再現は可能とみる。佐賀学園は秋優勝、春準優勝と実績を残す。2本柱の投手陣とそこそこ打てる打撃陣は、県内ではかなりのレベル。ライバル佐賀商との直接対決で、どれだけ試合を支配できるかが焦点。鳥栖商は春4強入りして、優勝争いに絡んできそうだ。同じく4強入りした神崎清明も久々の甲子園へ待ったなし。鳥栖商は打線に、神崎清明は投手力に自信を持つ。北稜は秋決勝にまで進出し、隙のない野球で頂点を極めるか。名門の佐賀北は甲子園優勝投手の久保監督が率い、話題のチーム。2年ぶりを狙う早稲田佐賀も狙いは一つで、県内屈指の好投手、川口を擁する東明館もひょっとするとの期待を持たせるチームだ。
【長崎】(参加55チーム)
創成館沈み、名門、新鋭が入り乱れる大混戦へ。7,8の有力チームがひしめく大混戦の大会。
◎ 長崎商 長崎日大 九州文化学園
〇 創成館 佐世保実 長崎南山
△ 波佐見 海星 長崎総科大付
▲ 清峰 瓊浦 鎮西学院
とにかく本命なき大混戦の大会になりそうだ。昨年は圧倒的な力を持った創成館が秋に続いて夏も圧勝し、その力を見せつけて1年を終えた。しかしその創成館は、今年は小休止の年になりそうで、投打の軸になっていきそうな1年生を起用して経験値をアップさせるということも視野に入れた大会となりそうだ。そこで浮上するのは、片手では足りないほどの精鋭たち。まずは春を制した長崎商。スモールベースボールが基本のチームだが、安定した試合運びは買える。長崎日大は監督交代を経て、チームがまとまってきた印象。こちらも相手を粉砕する野球ではないが、しぶとく勝ち切る野球で夏の頂点を目指す。初の甲子園を狙うのは九州文化学園。まだまだ攻守に粗さはあるが、スケール感では県内屈指。ついた愛称が”ゴリラ打線”で、長崎の夏を席巻するか。名門の佐世保実は復活を狙う。長崎南山は秋の優勝チーム。投手力を中心に守り抜く野球。波佐見、海星の強豪も本命のいない大会で勝ち抜く覚悟は十分。エース復活の瓊浦や甲子園優勝経験もある清峰、鎮西学院らが追い足を見せる。いずれにしても、本命と呼ばれるチームのいない大混戦の大会。果たして栄冠に輝くのはどこか。
【熊本】(参加58チーム)
まるで信長亡き後の大混乱の様。どこにもチャンスがある大会で、かなり面白いことになりそうだ。
◎ 熊本西
〇 有明 熊本国府 球磨工 熊本工
△ 九州学院 秀岳館 東海大熊本星翔
▲ 専大玉名 濟々黌 城北
鍛治舎台風が去って2年目。一時代を築いた秀岳館に、かつての面影はない。個々に素質のある選手を揃えるも、戦いに賭ける執念や総合的な野球力などという面で、大きな差がある印象で、今年も優勝争いには絡んできそうにない。そしてその鍛治舎なき後、まさに群雄割拠の様相を呈する夏の陣だ。まず挙げなければならないのが、選抜に21世紀枠で出場した熊本西。選抜では智辯和歌山に全国の野球を見せつけられ大敗したが、立ち直りも早く続く九州大会では見事に2勝を挙げ4強に進出した。エース霜上は大舞台の経験ですっかり自信をつけ、夏を任せられるエースに成長。85年以来の夏の覇権も見えてきた。今大会の注目株はもう一つ、有明だ。高校日本代表候補のエース・浅田は注目の投手。春は本調子ではないといいながらも決勝までしっかりと投げ切り準優勝。もしかすると、今年の熊本は”浅田の夏”になるかもしれない。一方実績を残すのは熊本国府。秋と春の県大会後のRKK杯を制し、県下NO1の力との評価が高い。悲願の初制覇には、2枚看板の投手力と打線がうまくかみ合うことが肝心だ。球磨工は春の県大会を制覇。九州大会でも好ゲームを展開し、自身みなぎっている。新鋭校ばかりに任せてはおれんと、名門2校も虎視眈々。熊本工は昨夏から準優勝、4強、4強と”外さない戦い”を続けている。これといった特徴がない代わりに、穴のない戦力は夏の戦いでは有利に運ぶことも。九州学院も好選手が揃っていて、秀岳館に抑えつけられた苦い経験を糧に、はじけ飛ぶように甲子園への道を模索中。昨夏の甲子園をもぎ取った東海大熊本星翔も甲子園出場時のクリーンアップを残して勝負に挑む。専大玉名、濟々黌ら夏は何かを起こす面々の戦いぶりにも注目だ。
【大分】(参加44チーム)
改めて全国制覇を狙う明豊の投打が充実。選抜で自信つけた大分も戦力アップで肉薄。
◎ 明豊
〇 大分
△ 情報科学 日本文理大付 藤蔭 大分工
▲ 柳ヶ浦 津久見 大分舞鶴 三重総合
投打に圧倒的な力を持つ選抜ベスト4の明豊。選抜ではドラ1候補の横浜・及川をボコボコに打ち砕き、次戦では明治神宮大会優勝の札幌大谷を接戦で撃破。準々決勝でも近畿優勝で選抜でも優勝間近かとみられた龍谷大平安を撃破。4強への進出という以上に、その戦いぶりが大きく評価され、今年の明豊が全国で一目置かれるようになっている。とにかく01年に初代表となってから、大分代表はほぼ明豊が出ないと甲子園で活躍できない・・・・という流れにもなっていて、明豊は3回の8強入りを果たしている。2000年以降の大分代表では、明豊以外の代表で甲子園勝利を挙げたのは07年の楊志館ただ一校だけ。それ以外は0勝13敗となっており、勢い明豊に期待する声も大きくなろうというものだ。2年生エース若杉はすでにこの時点で全国屈指の好投手。さらに大畑、寺迫、狭間らが絡み、常に4,5枚の投手が出番を待つ他校にはうらやましい陣容。そしてそれを支える打線は言わずと知れた10点打線。明豊はあの今宮(現SB)を擁したチームが歴代No1と言われるが、ついにそれを超えるチームができた感じで、本気で全国制覇に照準を絞っている。例年なら本命の位置に座るであろう実力を備えているのは、選抜で見事に1勝を挙げて自信をつけた大分だ。その自信は大きく、九州大会でも2勝を挙げて昨秋に続いて4強入り。明豊に肉薄する戦力を整えつつある。投手陣に故障者が相次ぎ九州大会は3試合ともに乱打戦となったが、打線が大爆発して投手陣の不安をものともしなかった。投手陣の整備が進めば明豊にも対抗できる。春優勝の大分工、準優勝の情報科学あたりが追っている。大分工はエース日高がなかなかの投球を見せる。情報科学は打線の力が上回る。日本文理大付は、何かとお騒がせな元八重山商工監督の伊志嶺氏が監督に就任して3年、エース翁長を中心として、ようやく上位で優勝を争えるレベルまでチームを引き上げてきた。昨夏代表の藤蔭は、開幕戦で敗れた昨夏の雪辱に燃える。久しぶりの代表を狙う名門の柳ヶ浦と津久見も面白い存在。春には4強入りした大分舞鶴、三重総合も初出場を狙い鼻息は荒い。
【宮崎】(参加49チーム)
本命は不在。秋春決勝進出の小林西が、レベルを上げて選抜の日章学園を追いつめる。
◎ 小林西 日章学園
〇 宮崎一 延岡学園 日南学園 聖心ウルスラ
△ 都城東 都城西 宮崎日大
▲ 富島 高鍋
ここ数年複数の好投手が県内に散らばり、激しいたたき合いを展開してきた夏の県大会。しかし今年は何とも静かな様相で、本命なき県内の勢力図に、息をひそめながら有力校が「今年は行ける」との思いを強くしているのかもしれない。とりあえず有力校として挙げられるのが、選抜出場の日章学園と秋準V、春Vと実績を積み重ねてきた小林西か。日章学園は昨秋の九州大会から、今年の選抜、そして春の九州大会と公式戦3連敗を喫した。いずれも看板の打線が沈黙した試合で、相手が強かったとはいえ好投手を崩す打撃力の再構築が急務か。小林西はエース鶴田が大黒柱。しかし九州大会ではこの頼みのエースが打ち込まれ、打線が援護するも追いつかなかった。できれば夏は鶴田が毎試合2失点ぐらいにまとめて、打線の援護を待つ展開にしたいところだろう。春準優勝の宮崎一も、エース左腕の川島の出来がチームの命運を握る。招待試合では明石商を完封したこともあり、期待は高まっている。甲子園経験の浅い上位3校に、強豪校が絡む展開になることが十分予想される夏だ。延岡学園は昨春の選抜出場後、何か落ち着かない時を過ごしてチームも全く成熟していないが、夏の強さは折り紙付きで一気の浮上も考えられる。日南学園にも同じことがいえる。今年は全く県内での実績はないが、夏はどの学校の監督も警戒感を強める”夏将軍”だ。聖心ウルスラも狙いは一つ、2年ぶりの聖地だ。常連校の地盤沈下に伴って浮上してきたのは都城勢。都城東はエース武藤をはじめ数の揃う投手陣に、打線も破壊力があり面白い存在だ。都城西は攻撃力が高く波に乗れば一気に突っ走る可能性も。宮崎日大もタレントぞろいのメンバーがまとまれば一気に花開く。
【鹿児島】(参加70チーム)
神村学園が、2年ぶりに向けて盤石の体制を築く。鹿実、樟南の両強豪に、鹿児島城西や鹿屋中央、尚志館らも絡み激戦になるかも。
◎ 神村学園
〇 鹿児島実 樟南
△ 鹿児島城西 鹿屋中央 尚志館
▲ 鹿児島商 れいめい 枕崎 大島
県内では無敵を誇る神村学園は、そのド迫力の強力打線が看板。九州大会では初戦敗退も、強豪の興南に一歩も引かぬ戦いを展開して、かえって評価を上げた。エース田中に桑原、中川原が揃う投手陣もその精度は高く、死角は今のところ見当たらない。打線は古川、田中と長距離打者が揃い、2年生主体なだけに今年甲子園に出場して、是が非でも経験値を上げ来年の全国制覇に向けてのリハーサルを行いたいところだ。追っていくのはやはり名門の2校と思われる。鹿児島実は2年連続の甲子園を狙い戦力が充実。U-15日本代表のバッテリーが揃い、神村学園に対して一歩も引かない構え。一方の樟南は春は2回戦で神村学園に敗れたものの、その潜在能力は高い。十分に覇権争いに絡んできそうだ。鹿児島城西は元プロの佐々木監督に率いられ、チーム全体のグレードがアップしている。あとはどう夏の戦い方を実践できるのかどうか。秋準優勝の鹿屋中央は、全体の野球レベルが高い好チーム。尚志館は春準決勝で神村学園と互角の打ち合いを見せた打線が看板だ。鹿児島商、れいめいらの各校も上位へ自信満々だ。
これで101回大会の予選展望、終了です。
もうすでに、沖縄と北海道、愛知で大会が開幕。
西日本は6月下旬になってようやく遅い梅雨入りをして、
これからやっと「野球の季節」という感じに水を差されないといいですね。
そんな令和の夏。
そして101回目という、何もかもが新しいの夏。
今年もたくさんのドラマが、待っていることでしょう。
例年書くことなのですが、
高校野球はファンにとっては「甲子園」が中心ですが、
本のタイトルではないですが多くの高校球児にとってはまさに「甲子園だけが高校野球じゃない」のはまさに自明の理。
それぞれの心の甲子園は、
まさにこの各地方の球場の中にこそあります。
4000にならんとする高校の中から、
甲子園に登場できるのはわずか49校。
甲子園を前に敗れ去り、涙にくれるチームは3900有余校。
その現実が、
毎年夏になるたび、
ワタシの前に姿を現してきます。
そのあまりにもドラマチックな現実に、
時には打ちのめされ、時には涙しながら、
粛々とこの夏の2か月を過ごす、高校野球オヤジです。
日本の夏は、誰が何と言っても「高校野球の夏」。
決して甲子園だけではない地方大会からのドラマが、
今年も日本中を熱くしてくれることでしょう。
高校球児の皆さん、特に最後の夏を迎える3年生にとっては、
やはりこの夏「完全燃焼」してほしいと思います。
グラウンドに立っていようがいまいが、
そんなことはどうでもいい。
自分の中で「完全燃焼」して「やり切った」という充実感を味わい、
それを明日からの糧にしてほしい、
そう強く願っています。
新しい時代に、
新しい人たちが、
また集ってくるニッポンの夏。
今年も、堪能しましょう。
頑張れ~~~~高校球児たち!!!!
〈了〉