≪ワールドプレミアムボクシング25 The REAL≫ ~両国国技館~
WBC世界バンタム級タイトルマッチ 12回戦
チャンピオン 同級6位
山中慎介(帝拳) ○ TKO 7R57秒 ● カルロス・カールソン(メキシコ)
具志堅用高の持つ13回連続防衛の日本記録。
これに挑む山中慎介が昨日、
12回連続防衛をKOで達成。
いよいよ具志堅の記録に王手をかけました。
前回の防衛戦で、
あの世界のビッグネーム、モレノとの再戦を見事なKO勝ちで飾った山中。
今回の防衛戦は、
ある意味『やり切った』前回の防衛戦の後で、
相手も無名とあってモチベーションの低下が心配されました。
いくら本人が『気合入っています』と言っても、
昨年は同じような状況であの内山チャンプがKO負けで陥落、
連続防衛記録を11回で止めてしまったということもありましたので、
ファンとしてはこの『いらん心配』が先に出てきてしまっていました。
そして試合前、
なんだか『山中の調子が悪いのではないか?』なんていうこともまことしやかに囁かれるのを耳にし、
『なんだかほのかに嫌な予感がする』
という雰囲気で始まったこの防衛戦。
しかし初回、
しっかりと立ち上がった山中の動きがいいのを見て、
なんだかちょっとホッとしながらの観戦でした。
相手のカールソンは、
頭を振りながら前に出てくる、
”はじめの一歩”のデンプシー・ロールを思い起こさせるような戦法で前へ前へ・・・・・
というタイプでしたが、
山中は冷静に相手に合わせてカウンターをヒット。
2Rですでに相手の目尻に裂傷を負わせ、
距離が合いだした3・4Rにも的確なパンチを当て続けました。
4R終了時の採点ではほぼフルマークでのリードを奪うと、
前への圧力を強めてきた相手に対し、
5Rには”神の左”をヒットさせて2度のダウンを奪いました。
しかし試合はここから、
急展開を見せます。
フラフラの体で立ち上がったカールソン。
まだ時間はたっぷりあったので、
山中は『あと一撃』に狙いを済ませてじりじりと迫っていきましたが、
そこに一瞬のスキが。
カールソンの捨て身のパンチが山中を捕らえ、
山中はまさかのダウン寸前に。
『大逆転か!』
と本当にヒヤッとしましたが、
そこは歴戦のツワモノ・山中だけに、
何とかクリンチでこの大ピンチをしのいで、
このラウンドをしのぎました。
本当にあと一撃食らっていたら、
危ないところでした。
それだけカールソンの若さと勢いは、
侮れないものがありました。
次の6Rに入る前、
『いったいどちらのダメージが大きいのだろう』
と思って冷や冷やでしたが、
立ち上がってみると山中は何とかインターバルの間に回復したようで、
この6Rでもダウンを奪うという展開となりました。
しかし。。。。
またものこラウンドの後半、
山中はカールソンの反撃の一撃を食らいピンチに。
『いったい何なんだ、この試合は・・・・・』
と思いながらの7R。
今度こそ・・・・と気合と体重の乗った”神の左”が4たび、5たびとカールソンの顔面にヒットしてダウン。
さしものカールソンもここで心を折って、
ようやく山中の12度目の防衛が達成されました。
正直、
『5度のダウンを奪って圧勝』
という気には決してなれない、
背中にびっしょりと汗をかくような試合…という印象でした。
山中の強みと弱みが、
なんだか凝縮されたような、
そんな試合となりましたね。
しかしさすがは山中チャンプ。
『相手をぶっ倒して勝つ』
という気迫はいささかも衰えるところはありませんでした。
さあ、
いよいよ13度目の防衛が近づいてきました。
あの具志堅さんの13度防衛と並ぶ・・・・・ってことです。
ボクシング好きのワタシにとっても、
具志堅さんは特別な存在。
カンムリワシと呼ばれたあの鬼神のような強いボクシングは、
忘れようと思ったって、忘れられるものではありません。
それほどに強いインパクトを残したボクサーでした。
ボクシング好きで知られる香川照之氏も、
具志堅に対する愛を何度もテレビで語っているように、
リアルタイムで具志堅を見た世代にとっては、
まさに『不世出の大チャンプ』です。
ボクシングが階級も団体も少ない時代のチャンピオンですから、
今の階級が細分化されて、かつ4団体もあるボクシングの時代とは、
チャンピオンの定義も全く違います。
当時の『ボクシング世界チャンピオン』とは、
まさに『世界最強の男』に近い響きを持っていました。
日本の中でも、
ボクシングの世界チャンピオン』とは【時代のヒーロー】そのものでした。
野球の長嶋・王、
相撲の北の湖・輪島・貴乃花らと並び称される存在でしたね、
当時の具志堅用高というチャンピオンは。
いま、
確実に時代が変わって、
『ボクシングの世界チャンピオン』
と言っても、
世間の人はその顔と名前が一致しないという存在にまで、
なってしまっています。(実感として)
この山中や長谷川、
内山や井上などは、
もっともっと、
世間の注目を浴びて『ヒーロー』になってもしかるべきだと思いますが、
なかなか世間の注目を集めることに成功はしていません。
この日も山中のV12という戦いであるにもかかわらず、
わずか1時間枠のテレビ放送で、
ほとんどの一般の人たちはそれをやっていることさえ、
知らなかったのではないでしょうか。
しかしこの日の山中のように、
『見たら絶対に面白い』
のが昔と変わらぬボクシングの魅力。
そこには【ホンモノの香り】がいつも漂っています。
日本のボクシング界は、
長期低迷の80~90年代を経て人気をじりじりと落とし、
00年代には『テレビ局が祭り上げたバラエティ王者』に好き勝手やられ、
その結果、他の格闘技の低迷と時を同じくして沈んでいったという、
苦しい時代が続いてきました。
しかし10年代以降、
本当に素晴らしいボクサーがたくさん現れ、
いま日本のリング界はかつてないほどの活況を呈しているといってもいいでしょう。
その牽引者の一人がこの山中慎介という素晴らしいボクサーです。
『13度目の防衛』の価値がどうのこうの・・・・・・・
聞こえる声にはネガティブなものも多いのですが、
【掛け値なしにすごい】このボクサーの金字塔を、
もっともっと注目してほしいと思います。
次のV13戦は、
たぶん今秋ぐらいに行われるかな?
テレビ局もド~ンと大きな花火を打ち上げて、
この快挙をバックアップしてほしいと思います。
それにしても、
気分良く帰ることができた、
いい夜となりました。
おめでとう!! 山中チャンプ