≪第89回選抜高校野球大会≫
【総合展望】
東京・大阪の2大都市決戦があるか?! そうはいかないと各校が入り乱れる戦国大会になるのか?!
毎年盛り上がりを見せている高校野球。
戦前からコンスタントに人気を博してきた大会ですが、
それでも昨今の人気はすさまじいものがあります。
アンケートで『好きなスポーツ』を聞いてみると、
プロ野球やJリーグを抑えて、
高校野球が堂々の第1位を飾ることも珍しくはありません。
昔から『汗と涙と全力プレーの甲子園』が人々の心を打つといわれてきましたが、
今ではちょっと質的な変化がみられる、
ここ最近の甲子園大会です。
今や昔とは違い、
私立校が出場校全体の7,8割を占め、
選手たちは幼少時から『チームとしての野球』を叩き込まれたエリートの集まる場となってきました。
昔の大会と改めて比較したりすると、
ワタシ自身も『確かに変わったなあ』と思うことがしばしばあります。
甲子園にかける思いは昔と一緒でも、
今の球児たちは昔の球児達のように、
『甲子園のグラウンドに入ったら、感激してぼーっとなってしまって・・・・』
というよりも、
『甲子園のグラウンドで、いかに自分のプレーを披露するか』
という感じで、堂々とプレーする球児たちが多くなってきたように思います。
そして熱狂は、
その分【周りの大人たち】に伝播しているような感じですかね。
感激して泣いているのは【周りの大人たちばかりなり】って感じを強く受けます。
甲子園に出て活躍することを現実的にとらえて努力してきた球児たちは、
大人が考えるよりもずっと落ち着いて、
普段の持っている力を出しているように感じます。
なんだか球児たちはとても、頼もしく見えます。
むか~し昔(昭和の後期、昭和40年代後半~60年代ぐらい)の高校野球中継を見直してみると、
顔、形は今の球児たちよりもず~っと”オッサン”が多いのですが、
甲子園で”あがって”試合の中でアタフタが止まらない………
といった感じの選手たちがとても多いですね。
今は全くそんな試合は見受けられなくなりました。
そんな感じの世相を反映していますから、
今の球児たちはなんだか戦う前から、
選手同士の間で、中学時代からのある一種の『序列』が刷り込まれているのも事実のようで、
それに準拠して戦っている感じで、
昔に比べるとあまり大波乱は怒らないような感じになってきている感じがしています。
ということで昔は大相撲の大阪(3月)場所とともに≪荒れる選抜≫とも言われていましたが、
現在では『勝てるカテゴリー』に入っているチームが、
波乱なくそのまま大会を制するということが、
かなり多くなってきているような印象です。
まあ、それでも、
野球という競技自体は波乱の起こりやすい競技ですので、
今でも選抜大会では、
必ず『まさか』という試合が大会中にいくつかは見られますけどね。
そんな感じで大会を眺めてみると。。。。。。。
履正社が優勝候補筆頭なのは間違いないが、大阪桐蔭の動向がどうにも気になる。
大会を展望すると、まず優勝候補と言って名前が挙がるのが履正社だろう。昨夏、剛腕・寺島を擁して夏の甲子園の話題を独占した履正社だったが、大旗には届かなかった。『やはり履正社は、大阪桐蔭に比べると、甲子園でどうも勝てないなあ』ということがまたも言われたものだが、その悔しさがあったからかどうか、それからの履正社の進撃はすさまじいものがあった。国体で憂さ晴らしの圧勝を遂げたのを皮切りに、新チームは秋の近畿大会、明治神宮大会を圧倒的な強さで制覇。『履正社強し!』を印象付けた。明治神宮大会決勝の早実戦は、清宮に話題が集中する中での直接対決だったが、この対戦で明らかになったのは履正社の圧倒的な強さ。安田・若林の3・4番を軸にどこからでも長打の飛び出す打線の破壊力は、『これが秋のチームなのか』と言われ驚かれた。早実も追い上げて形の上では接戦になったが、履正社が余裕を持って戦っていたのに比べて早実はいっぱいいっぱいの戦いだったのが明らかで、両者の間には拭いきれない大きな実力の差をワタシは感じた。そして履正社は、このまま順調に成長していけば、間違いなく全国制覇を狙える器のチームだということが強く印象付けられた。チームの強みは打線の破壊力だけではなく、エース竹田の安定感のある投球にもみられる。新チームの結成が遅れ厳しい秋季大会の序盤だったが、この竹田が履正社の屋台骨を支え、快進撃を続けたといっても過言ではないだろう。一冬超えて、目標の全国制覇に向けて、どれだけ選手たちが意識高く鍛えてチーム力を上げていったのか、とても楽しみな選抜となった。
一方昨年は春、夏ともに『らしくない』姿を見せた大阪桐蔭が、巻き返しを狙っている。もともと選手の質は履正社に決して引けを取るものではない好素材を集めたチーム。『高校野球の盟主の座』はおろか、履正社の後塵を拝するということは『大阪NO1の座』も譲るということと同義で、それだけは絶対に……という気持ちは強いはず。秋は大阪府大会で履正社に敗れ、近畿大会ではその履正社に到達する前に準決勝で敗退するという屈辱を味わった。しかしながら、持っているポテンシャルは非常に高く、この選抜でもMax140キロを超える剛球投手がチーム内に4人もいて、エースの座を競い合っているというのを聞くと、どうしても期待値は上がっていってしまう。エース徳山や香川など、『オール大阪』と呼べるぐらいの力を持った投手陣が持てる力を発揮しだせば、また『大阪桐蔭の時代』は継続すると見る。今年のチーム、ワタシの印象としては、1987年にPLが立浪・片岡らの打撃陣と3本柱の投手陣で春夏連覇を果たした時のチームに似ている気もする。このときもまだ、チームは秋の時点では全く仕上がっておらず、春の選抜で1試合ずつ接戦を制していって、無敵のチームに仕上がっていった。大阪桐蔭の今年のチームがその道程をたどれないということは、誰も言うことができない。きっかけさえつかめば、どこまでも登っていってしまうポテンシャルを持ったチームだろう。
持っている力からすると、今大会は大阪の2強の力が突出しているように見える。決勝での初めての『大阪対決』もあながち夢ではない気がするが、しかしまだ春の段階だけに、他校がつけ込むスキはいくらでもあるとみることもできる。そのスキを狙う一番手は、東京の伝統校2校、早実と日大三か。両校のうち、話題性でいうと、清宮を擁する早実の注目度がダントツ。今年の早実は、打線の破壊力は清宮と野村の三・四番を中心に圧倒的なものを誇る。その前後を固めるプレイヤーにも好選手が揃い、打ち合いになったらどこのチームにも引けを取らないチームだ。しかしながら、≪全国制覇≫ということに絞って考えると、なんとしてもその投手陣の弱さが気になるところ。早実が決勝に行くためには、ブロックのわかれる履正社、大阪桐蔭のどちらかを必ず倒さなければならない。そう思って眺めた場合、両校の猛打線に対峙できる早実の投手は、今のところ見当たらない。明治神宮大会決勝で履正社に完璧に打ち崩されたシーン、あの再現がないとは限らない。しかし早実には、他校にはない強みがある。それは、球場全体が早実の後押しをするという、あの雰囲気だ。清宮はそのあたりをつかむのが実にうまい『根っからのスター選手』であるので、対戦するチームにとっては実に厄介な相手、それが早実だ。
一方の日大三は、間違いなくチームとして持っているものは早実より上とみている。桜井・比留間の両スラッガーに挟まれて新四番を打つのが『日大のディカプリオ』こと金成選手。彼が冬場にどこまで成長できたかが、日大三が優勝を狙えるかどうかのカギとなるのではとみている。エースの桜井は、秋季大会で清宮から5打席5三振を奪ったことで一躍有名になったサウスポー。左腕からの切れのいいストレートとスライダーのコンビネーションは、はまれば今大会、打ち崩せる打線はいないだろう。しかし、力投派だけに連戦が続くときのスタミナに不安を残す。控え投手陣がどれだけ底上げできているかということも、日大三にとっては勝ち上がるうえで大きな要素となる。それから、どうしても力でねじ伏せる野球をするチームだけに、甲子園で接戦になった時に勝ち切れるのかという不安は常に付きまとうチームだ。大阪の2強と互角以上に渡り合うには、接戦になった時にバントや走塁を含めたミスを極力なくすという戦い方ができるかどうかがカギか。
東京・大阪勢を追う面々は精鋭ぞろい。近畿、関東中心に好チームが揃う。
4強を差なく追うのは、近畿、関東勢を中心に片手では足りないほどの精鋭たちだ。
4強を追う勢力で最も期待されるのは、三浦―古賀のスーパーバッテリーを擁する福岡大大濠か。三浦はまさに鉄腕。昨秋の九州大会では鹿児島実、秀岳館の強豪を、そして明治神宮大会では明徳義塾を完封。キレのある速球とスライダーを思うように操れる右腕は、大会でも注目の的だ。リードする古賀はすでにプロからの熱視線を送られている、身体能力抜群の捕手。この古賀と4番を打つ東の破壊力は九州NO1の迫力。しっかりと大会の雰囲気に慣れることができれば、優勝まで駆け上がるのも夢ではない。
その九州から連続出場の秀岳館と、四国から連続出場の明徳義塾は、今大会でも優勝に絡んでくる好チーム。両校ともに昨年は春夏連続での甲子園出場を果たし、経験は十分だ。秀岳館は昨夏甲子園で好投を見せた左腕エースの田浦と川端の2枚看板を擁する。そして昨年も見せたように、次々にピッチャーをつないで相手の気勢をそぐ継投を得意とし、それにこたえるだけの分厚い投手陣も健在。打線も昨年ほどではないが、きっちりと好機をものにする勝負強さを持っており、昨年破れなかった4強の壁突破に向けて、実力を上げている。明徳義塾も馬淵監督が気合を込めた今年の戦いになりそうな気配。盟友である済美・上甲監督の死去から3年。『3年以内に優勝旗を四国に持ち帰る』と誓った智将・馬淵監督が自信を持つ今年のチームは、左腕エース北本を軸に高い水準の投手力がチームの軸。2年生の本格派、市川も仕上がってきており、明徳が目指す『守り勝つ』野球に近づいている。打線は明治神宮大会で作新学院を破った試合に象徴されるように、破壊力こそないものの好機に畳みかける迫力は満点。そしてなんといっても明徳の強みはその守備力。総合的に見て、『打者優位』と言われる今大会にあって、明徳の守りは光を放つことだろう。
そしてこの3校に並び、例年甲子園で実績を残す関東勢、近畿勢が今年も元気だ。
まずは関東勢から。昨夏全国制覇の勢いに乗って今年も上位を狙うのは作新学院。昨夏の優勝メンバーはほぼ全員抜け、まったく新しいチームで戦いながら昨秋は関東大会を制して、『小針野球』の勢いが止まらないことを見せつけた。しかしながら、今年のチームはまだまだ仕上がっていないように見える。というよりも、作新がチームを仕上げるのは夏の大会になってから、だろう。選抜は『夏への一里塚』のような気がしてならないので、大きく期待はできないかもしれない。エース大関は『春向き』の切れのある左腕だが、打線の精度はまだまだ・・・・という段階か。春ということでいえば、実戦経験が浅い選抜で一番活躍できるのは、【機動破壊】という勝負手を持つ健大高崎か。今年も例年以上に足を含めた攻撃力は鋭そうで、継投に頼る投手陣が踏ん張れば、例年のごとく『悪くても8強』が狙える感じだ。同じ群馬の前橋育英も不気味だ。昨夏の甲子園で一気に乱れ敗れた悔しい経験を、どこまで糧にすることができただろうか。経験者が数多く残る投手陣にも打撃陣にも穴が少ない好チームで、面白い戦いができる可能性を秘める。昨春は関東大会を制したり、ワタシは必ずしもこのチーム、『夏型』ではないと思っており、コンディション良く選抜を迎えられれば、思わぬ快進撃が期待できるかもしれない。
ここのところ選抜を席巻し続ける近畿勢も精鋭ぞろい。まず秋に大阪桐蔭を破った神戸国際大付。力がありながらなかなか甲子園で活躍できなかったチームだが、今年は久々の躍進が期待できる。特にエースの黒田の安定感は抜群。大阪勢など、同じ近畿勢との対戦で『格負け』しないことも上位を狙う上では必要な要素だ。昨年の選抜を制した智弁学園は、連覇を狙う大会となる。今年は昨年の村上のような絶対的なエースはいないものの、智弁本来の『打ち勝つ』チームに変貌を遂げており、昨年の全国制覇で勝負弱さも払しょく。侮れない存在になっている。昨年の選抜で8強入りした滋賀学園は、バッテリーを中心にごっそりと昨年のメンバーが残っている。旋風を起こす可能性は十分だ。
伏兵ゴロゴロ。一気に上位まで駆け上がるのは果たして。。。。
ここまで挙げた13校が今大会の『上位のカテゴリー』を形成する見込みだが、その他の高校にも十分にチャンスはある。その中で最も期待が大きいのは仙台育英か。ここのところ仙台育英は、出場するときは必ず大型チームで、しかも明治神宮大会優勝という『金看板』を背負っての出場だった。そのためどこかのびのびできないというか、重圧のかかった試合に終始したという感があるが、今年は逆にそれが抜け落ちた分、持っている力をそのまま出せるかもしれないという期待感がある。今年のチームは速球派のエース長谷川を軸にしたロースコアでも勝ち切れるゲームができるチームに変身したという印象。その分打線の破壊力はいまひとつかなという感もあるが、キレのいい攻守で東北勢悲願の初Vも、ないとは言えない。公立校としてその取り組みに数年前から注目が集まっている静岡も2年ぶりの出場。ここも仙台育英と同じく、2年前は豪快な打線でねじ伏せるチームだったが、今年はエース池谷を軸にした守りの野球に変身。とはいえスピード&パワーを標榜する打線が一冬超えて大きく成長している可能性もあり、上位チームにとっては厄介な存在になりそうだ。北信越大会を制して連続出場を決めた福井工大福井も面白いチーム。打線の威力はおそらく今大会でも屈指。投手陣が踏ん張ることができれば、敦賀気比に続く福井勢の大躍進も期待できる。闘将・永田監督の最後の指揮となる報徳学園のモチベーションも高い。好投手と当たると力で抑え込まれてしまう打線に不安を残すものの、”粘りの報徳”を甲子園でも見せたいところ。面白そうなのが熊本工。伝統校ながら昨年は秀岳館に押されて県内でも優勝を飾ることはなかったが、そのライバル打倒で鍛えてきたチーム力は侮れない。特にエースの山口はMax149キロの剛速球を誇り、熊工に甲子園での新たな1ページを刻み込むつもりだ。
札幌第一は連続出場。今年は打線のチームだが、元横浜の『小倉メソッド』を取り入れて2年目。成果を形に残したい。盛岡大付は、甲子園で勝てなかったのがウソのように伸び伸びと戦い、昨夏は甲子園で2勝を挙げた。そのチームから残ったエースの三浦がどんなピッチングを見せるのか。打線は破壊力を誇った昨年のチームよりも若干小粒。東海大市原望洋は、注目のエース金久保を擁する。快進撃で勝ち進んだ昨秋の戦いを思い出したい。監督が交代したのがどのようにチームに影響しているか。至学館は嬉しい選抜初出場。得意の接戦に持ち込んで、後半の粘りを見せたい。高岡商はエースの土合に注目。明治神宮枠で選抜が転がり込んだ高田商は、そのラッキーを生かして伸び伸びと強豪に戦いを挑む。宇部鴻城はプロが狙う万能型ショートの嶋谷がチームを牽引。市呉は春夏通じての初出場。地元は沸き上がっている。3季連続の甲子園をつかんだ創志学園はエース高田の抜けた穴を全員野球でカバー。48年ぶりの出場となった帝京五は、かつての選抜準優勝投手である小林監督の采配に注目が集まる。東海大福岡も32年ぶりの出場。タテジマの系譜に1ページを加えたい。
21世紀枠からは3校が出場。なんといっても注目はあの”24の瞳”で選抜準優勝を飾って以来の出場となる中村だ。近年、箕島、土佐、池田らの『あの時代』を彩ったかつての強豪が次々に復活を遂げ、そのトリを飾るかのように出場を決めたのがこの中村。あの時よりも部員は4人増えて16人での戦いとなるが、昨秋の高知大会では高知、明徳の”両雄”を相次いで撃破。侮れない実力を持っているので、なめてかかると痛い目に合う。10人での出場になる不来方は、人数の面だけではなく、練習環境にも恵まれない雪国のチームだけに不利は否めないが、大舞台で思い切り自分たちの野球を披露してほしい。それは同じく初の甲子園を決めた多治見も同じだ。
今年は3月19日開幕の甲子園。
もう開幕も間近です。
WBCに沸くのと同時に、このセンバツも幕を開けます。
まさに球春到来。
今年は春の訪れが、少し早い野球界です。