ラグビー日本選手権。
今年の大会は、
トップリーグ1位~3位までの3チームと、
大学選手権優勝チームの4チームで争われます。
準決勝は21日、決勝は28日で、
準決勝のカードは、
サントリー(TL1位) vs 帝京大学(大学優勝)
パナソニック(TL3位) vs ヤマハ(TL2位)
となりました。
昨季プレーオフ出場すら逃したサントリーの、
リベンジの1年がハッピーな形で完結するのか。
それとも昨季のTL優勝のパナソニック、一昨年の日本選手権優勝のヤマハがその野望を止めるのか。
はたまた大学選手権8連覇の帝京大がTLの強豪をも食ってしまうのか。
興味は尽きません。
しかしながら、
その日本選手権の前の理事会で、
来季の日本選手権が大変革されるということを発表しました。
そしてその改革とは、
大学チームを日本選手権から締め出すというもの。
来季はトップリーグの上位4チームのみでの、
プレーオフのような形の日本選手権となり、
トップリーグのプレーオフとこの日本選手権を『兼ねる』1つの大会となる・・・・とのこと。
このことは少し前から取りざたされていたのですが、
現実になってみると何とも複雑な気分ですね。
問題の本質は、
『伝統ある大会を尊重するのか、それとも日本代表の強化を日本ラグビー界として何よりの柱に持ってくるのか?』
ということです。
昨年から日本ラグビー協会は、
日本代表を強化するために、
南半球のリーグである《スーパーラグビー》に日本代表クラスをたくさんそろえた日本独自のチーム、【サンウルブス】を参戦させました。
このリーグの参加で、
日本のチームを常に強豪と戦う場を設けることで強化していこう・・・・・
というのが強化方針。
これを強く推していたのが、
かの日本代表前監督であるエディ・ジョーンズ氏です。
この代表強化という協会の方針については、
ラグビーファンである私も『まさにその通り』と膝を打ちました。
実際昨年初参戦して惨敗を喫した【サンウルブス】ですが、
今季からはさらに【サンウルブス】ひいては【日本代表】を強化していくという旗をもっと大きく掲げ、
すべてのラグビーの日程や強化策などを、
このサンウルブスありきに整えようという試みが行われようとしています。
代表が強化されワールドカップで勝っていくことで、
その前までは世間に無視され素通りされていた『ラグビー』というものが、
あれだけ盛り上がり、誰もがその試合や選手を目にするようになりました。
一昨年からのその流れを単なる『バブル』に終わらせないため、
どんどんと代表を強化していくことは、
本当にラグビー界に求められていることです。
しかしながら。。。。。
今までのトップリーグ、大学リーグというものの戦いに、
新たにスーパーラグビーが加わると、
どうしても日程がタイトになってくることは仕方がありません。
協会はそこを調整する必要に迫られていたのですが、
どうしても調整がつかないところが出てきました。
そのしわ寄せを受けたのが、伝統の日本選手権なんですね。
協会としては、
昨年の轍を踏まないというか、
昨年で学習したといおうか、
とにかく2月末開幕のスーパーラグビーに向けて、
サンウルブスの強化期間を、
最低でも1か月は確保せねばならん……という大前提がありました。
『そのぐらいの準備期間がないと、チームができない。チームができないと、参戦して強化する意味が薄れる』
ごもっとも、ごもっとも。。。。
そこはぜひ外さないでほしい・・・・とワタシも思います。
となると、秋から冬にかけて行われるTL、大学のラグビーシーズンというものを、
1月末までには完全に終わらせなければならない・・・・・のは自明の理。
いや、選手の休養期間を考慮に入れると、
1月中旬には終わらせたい。。。。。
そんな日程が『大前提』となりました。
TLはこれまでも、
これでもかと毎年その日程やシーズン方式を変更してきましたから、
この方針に向けて日程調整等をするのは、
問題なかったようです。
しかし問題になったのは大学のリーグ。
伝統のある【大学ラグビー】としては、
ラグビーの歴史を作ったのは自分たちだという強烈な自負がありますから、
ころころと日程を変更させるなどということに、
首を縦には降らなかったようです。
日本ラグビーの礎を築いてきた早・慶・明の3チーム。
その対抗戦での対戦は、
早稲田vs慶応が11月23日。
早稲田vs明治が12月第1日曜日。
そう古くから決まっています。
そしてその日程を動かさないならば、
大学選手権の開幕は早くとも12月第2週、
今の日程そのままになってしまいます。
そしてそこから大学選手権を行えば、
やっぱり準決勝は1月2日、
決勝はその後1週間程度ということになってしまうのは致し方のないところです。
1月中旬までに全日程を終わらすということに照らせば、
TL優勝チーム vs 大学選手権優勝チーム
の一騎打ちというかつての方式に戻せば問題なく日程が組めるとは思いますが、
そこで出てくるのが『トップリーグチームと大学チームの実力差』という問題です。
『日本選手権決勝と銘打つことができないほど、現在ではTLと大学チームの間の実力差は広がってしまった』
という、厳然たる事実があるので、
この一騎打ちでの試合を『日本選手権決勝』と銘打って見たところで、
果たしてラグビーファンはもとより、一般のファンに受け止めてもらえるだろうか……というジレンマをかかえてしまったというわけです。
かつて1995年までは、
大学日本一vs社会人日本一
の一騎打ちとなる日本選手権は、
いつも大変に盛り上がっていました。
数々の名勝負が生み出され、
新日鉄釜石と同志社大の対戦など、
本当に『血沸き肉踊らせて』観戦したものです。
しかしながら90年代に入って日本がラグビーワールドカップに向けて代表の強化に本格的に乗り出すと、
社会人チームと大学チームの間には埋めきれない大きな差ができて、
90年代に入ったぐらいからはもう試合にならなくなってしまいました。
そんなことがあって試合方式が大幅に改正され、
97年からは社会人代表(のちにTL)の複数参戦となり、
そこから今日まで、
昨年を除いて(昨年は、前年にワールドカップがあって日程がタイトになったため、1年限りでかつてのTL王者vs大学王者の激突という形になった)すべて決勝はTL勢同士の戦いとなりました。
しかしこれもちょっと問題をはらんでいて、
トップリーグ王者を決める戦いをさんざん1月までやって『トップリーグ王者』を決めたにもかかわらず、
2月に入ると同じメンバーでもう一度『日本選手権』という別の名のタイトルを争うという形になり、
ファンをもってしても『いったいどっちが真の王者なの?』ということがわけわからなくなっている・・・・・
ということが起きました。
まさに『毎年のように』ころころと日程やら試合方式やらが変わって、
ワタシの心の中にも『いったいこの年は、どこがタイトルを獲ったんだっけ?』ということは印象に残らなくなったりもしました。
そして毎年取りざたされていたのが、
『実力の明らかに劣る大学勢が出ること自体に疑問があるのでは?』
ということ。
特に大学勢にとっては、
1月の早い時期に大学選手権が終わりその後は試験期間なども挟むため、
どう見ても2月の日本選手権の時には『大学選手権の時のコンディションの3割引き』ぐらいのチームになってしまっていて、
もともと差のあるTL勢と戦うのに、
なんで大学勢に不利な状況の中で戦わせなければならんのだ。。。。。。
そんなことも言われていました。
そんな中での今回の改革です。
ワタシこのニュースを聞いた時には、
寂しさ、モヤモヤ、いろいろな感覚がないまぜになっていたのですが、
書いているうちに頭の中が整理できて来た気がします。
やっぱり日本選手権は、大学抜きでやった方がいいのではないだろうか?
日本選手権は文字通り『日本の一番強いチームを決める』大会とし、
大学選手権を含む大学ラグビーは伝統を重んじて、
早慶戦は早慶戦の日に、
早明戦は早明戦の日に、
大学選手権は従来の通りで、
開催すればいいのだと思います。
時代に合わないミスマッチの試合の開催を守るために、
いろいろなものを失いタイトにタイトにと、
自分で自分を苦しめることもないでしょう。
野球でもサッカーでも、
『大学日本一』
で完結したって、
『プロと試合できなかった~』なんて学生の満足度が低かったなんてこと、
ありませんものね。
個人競技と違い団体競技ですから、
それでいいのではないかと思います。
(個人競技については、学生が・・・・・プロが・・・・・と区別をつけないでほしいと思いますが。)
その先に進みたい人たちにとっては、
きちんとトップリーグというものが用意されているラグビー界ですから、
日本一、そして世界で活躍を望みたいプレーヤーにとっては、
大学卒業してからさらに頑張ってもらうということで、
いいのではないでしょうか。
なんだかまとまりの全くない文章になってしまいましたが、
そんな感じで、
書き始める前と書き終わった後で、
見解が変わってしまったワタシです。
さあ、
今週末からの日本選手権、
てらいなく楽しむとしますか。