第94回全国高校野球選手権大会 予選展望3
【静岡】(参加118校)
春の勝者が夏勝てないジンクスは生きる。力のある常葉菊川がトップを走る。
◎ 常葉菊川
〇 静岡 静清
△ 静岡商 常葉橘 東海大翔洋
▲ 掛川西 沼津市立 富士市立
静岡県高校野球界で、古くから言われているジンクス。『春の大会の勝者は、夏には勝てない』。このジンクスは、今年も生きていそうだ。春の大会は優勝静岡、準優勝静清だったものの、いずれも東海大会では初戦敗退。地盤沈下の中行われる今年の夏の結末はどうなるのか。力からいうと、常葉菊川に分がありそうな気配。一時代を築いた積極的なバッティングは、今年も健在。今年はエース岩本にも大きな期待が寄せられ、2008年以来の夏をつかむ可能性は高い。静岡は打線はいいものの、投手陣に軸となる選手が出てきておらず、夏は手探りの状態で連戦をこなしていかなければならない。打ち勝って連続の夏をつかむか。静清は昨春の甲子園メンバーを残し、戦力的には上位。昨年の野村のような、投手陣の柱が欲しい。追いかける面々は、殆ど上位と差なく続いている。秋優勝の静岡商は、試合によって戦い方にバラつきがあるのが不安の種。常葉橘、東海大翔洋は実績のある選手をそろえて、安定感のある戦いぶりをする。掛川西、沼津市立、富士市立の公立勢は、いずれも水準以上の力。特に強化に力を入れる富士市立の戦いぶりはどうか。最後に、東海大相模の選抜準優勝投手・吉田の就任で活気づく浜松学院の戦いぶりにも注目が集まる。
【愛知】(参加188校)
絶体的な力を持つ愛工大名電が大本命。難攻不落の浜田を崩すチームは出るのか。
◎ 愛工大名電
〇 東邦 中京大中京
△ 愛産大工 至学館
▲ 豊田西 享栄 愛知啓成
なんといっても、大エース・浜田を持ち攻撃力もピカイチの愛工大名電の存在が光る。選抜では光星学院に悔しい負け方をしたが、その力は夏を迎えてピークに差し掛かる。驚くべきことに、就任以来ここまで夏の大会での白星がない名将・倉野監督も今年のチームには自信満々。『普通にやれば全国制覇に近いところまで行ける』と自信を見せる。浜田は安定感抜群。ただの剛腕ではない”勝てる投球”ができるところが彼の特徴。支える打線は、従来の足を使った攻撃にミックスして、今年は例年よりも”打てる”打線だ。いずれにしても、県大会で愛工大名電が敗れ去る姿、どうしても思い描くことが出来ない。その大横綱に立ち向かう精鋭は、かつての私学4強から中京大中京と東邦。そして昨年代表の至学館だろう。中京大中京は、今年のチームは実績に乏しいものの、なんといってもメンバーのスキルの高さはピカイチ。愛工大名電に対して、がっぷり四つで戦うことのできる数少ないチームだ。東邦は自慢の強力打線が火を噴くか。春の大会で丸山、竹中らの投手陣が自信をつけたのも好材料だ。至学館は、9人の甲子園組を残して昨夏の再現を狙う。監督は今年も自信満々。その他では低迷の続く享栄の巻き返し、春準優勝の愛産大工、豊田西、愛知啓成に豊田工、豊川らがVを狙う。
【岐阜】(参加67校)
春の東海大会制した県岐阜商に勢い。強力打線で夏も制す?!
◎ 県岐阜商
〇 大垣日大 大垣西
△ 中京 関商工 市岐阜商
▲ 岐阜城北
エース間宮の成長と強力打線で春の東海を制した県岐阜商の視界は良好だ。もともと強力打線を誇るチームだったが、春からは投手陣が予想以上に伸びて、すっかり戦える戦力となった。もとより夏の戦い方は熟知したチームで、今のところ死角を見つけるのが困難なほど充実している。その県岐阜商にライバル心を燃やす坂口監督率いる大垣日大。全国制覇狙いの昨年のチームと比較すると投攻守共にスケールは落ちるものの、しっかり仕上げてきている印象だ。同じく名門の中京も、久々の甲子園に向けて充実した練習を積んでいるようだ。春に結果を出した大垣西は、まだまだ全国で戦えるような戦力は備えていないが、エース大蔵を押し立てるだけに、上位校にとっては不気味な存在。好投手といえば市岐阜商のエース・秋田にも注目。監督の長男で、父子鷹を地で行く。昨年の快進撃と甲子園での戦いぶりが頭にこびりついて離れない関商工は、今年も守備の充実から相手を倒すすべを心得、連続での聖地進出を狙う。
【三重】(参加63校)
”高専初”の甲子園狙う近大高専は絶好調。選抜組の三重は巻き返せるか。
◎ 近大高専
〇 三重
△ 海星
▲ 菰野 いなべ総合
巨人の鬼屋敷を擁するなど近年目覚ましい成長を遂げてきた近大高専に、初めての夏をつかむチャンスがやってきた。今年は秋の4強からさらに成長を遂げた春、県大会を制して東海大会でもしぶとい戦いぶりで準優勝。更にその後の招待試合では、東海大相模とのガチンコ対決に完勝するなど、押しも押されぬ強豪に変身してきた。高専初の甲子園をつかむには、看板の強打線が火を噴き、不安の残る投手陣を援護できるかにかかる。そうはさせじと春夏連続の甲子園を狙うのが三重。選抜で好投したエース三浦は県内屈指の好投手。打線も強打ではないが得点力は高く、三浦を強力に援護する。春準優勝の名門・海星は久々の甲子園に思いをはせる。エース内橋、児島、田岡と枚数の揃う投手陣で試合を作り、タレントの揃う打線が火を噴くのを待つというチーム。3年ぶりを狙う菰野は、安定した戦いぶりをするチーム。2年ぶりを狙ういなべ総合とともに、大会の中心として位置づけられている。
【新潟】(参加92校)
今年も2強対決だが、日本文理の戦力が大きく上回る。全国屈指の投手陣で暴れまわる。
◎ 日本文理
〇 新潟明訓
△ 中越
▲ 北越 新発田中央
今年も日本文理、新潟明訓の両雄の対決が濃厚だ。両校ともにライバルに遅れてなるまいかと戦力をアップさせ、いまやかつての”弱小県”の面影はみじんも感じられない。押しも押されぬ”全国区”の強豪となった。その両校は昨秋、両校ともに決勝に残れず関係者を驚かせたが、春にはきっちりとチームを底上げして決勝対決。他校との力の差は歴然で、今年もこの【巌流島決戦】で甲子園の行方が決まりそうだ。日本文理は、昨年春夏と甲子園を経験した波多野、多村の両エースに1年生の飯塚も加わり、投手力は『かつてないほど充実』(大井監督)している。打撃陣も水準以上で、70歳の老将・大井監督に『もう一度夢を見させてあげられる』チームだ。ライバルの新潟明訓は、今年のチームはやや日本文理に水をあけられている印象だ。しかしこれは、エースと目される竹石を欠いてのもの。竹石が万全の状態で夏を迎えられれば、その差は一気に縮まる。打線の破壊力はいま一つのため、2年前の再現を狙うならば、ズバリ継投を駆使し、ロースコアによる接戦をつかんでいくということだろう。底上げいま一つの中越、北越あたりの名門を3番手には推すものの、逆転できる可能性は薄いとみる。新潟県央工なども、夢よもう一度と鼻息が荒い。
【長野】(参加94校)
やはり注目されるのは佐久長聖。藤原新監督が、PLのエキスをチームに注入。
◎ 佐久長聖
〇 長野日大 地球環境
△ 東京都市大塩尻 松商学園
▲ 上田西 松本第一
近年の長野県を見ると、まさに群雄割拠という言葉がぴったりくる混戦が続いている。なかなかリーダーになるような強豪チームが現れないためだが、そこに佐久長聖の新監督である藤原監督が殴り込みをかける。果たして王国を築けるであろうか。藤原監督はPL監督時代に激戦の大阪を勝ち抜いて3度の甲子園出場を果たした実績を持つ。佐久長聖は長年名将・中村監督が指揮を執り、長野県ではいつも上位に君臨してきたものの全国大会からは遠ざかり、さらに全国では実績を残せていないチーム。そこに、これ以上ないほどの”刺激”が与えられたが、果たしてこの試みはうまくいくのか、注目してみたい。戦力的にはトップといってもいい佐久長聖だが、すぐ後ろに控える『長野野球の生き字引』中原監督の長野日大や、長年県内に君臨してきた松商学園、さらに新興勢力で選抜出場の地球環境や昨夏出場の東京都市大塩尻など、多士済々の面々が”覇権渡すまじ”と牙を研いでいる。秋優勝の上田西なども加え、かつてないほどの”熱い夏”が演出される可能性は大。全国注目の大会となりそうだ。
【富山】(参加49校)
春の北信越制した富山第一、県制覇の不二越工が2強も、名門の巻き返しも十分に考えられる激戦。
◎ 富山第一
〇 不二越工
△ 富山商 高岡商 砺波工
▲ 高岡第一 新湊
富山第一の春の北信越大会での戦いぶりは、見事というほかはなかった。佐久長聖、日本文理などの全国区の強豪たちを向こうに回して見事に寄り切った戦い方は、彼らに初めての夏が訪れることを予感させるものだった。村上・宮本の2枚看板の安定感は富山県下ではNO1と言っていいだろう。全員が束になってビッグイニングを作りに行く攻撃も、見ていて楽しいものがあり、全国で見てみたいチームのひとつだ。その富山第一を県大会では破って優勝した不二越工は、久々の聖地に向けてスパークする。74歳のベテラン監督の采配の妙を楽しめるチームに仕上がった。名門の2校、富山商と高岡商は、久しぶりの夏に燃えている。両校ともに名門らしいソツのない好守が身上だが、爆発力という点ではまだまだ物足りない。夏に向けて最後にどう仕上げてくるか。気持ちの入った野球で甲子園を沸かせた昨夏代表・新湊と一昨夏代表・砺波工も虎視眈々。大会の波に乗れば優勝に近づくのはさほど困難なことでない戦力をそろえている。注目だ。
【石川】(参加50校)
壁を破れなかった星稜に、久々の夏はやってくるか。
◎ 星稜
〇 遊学館
△ 金沢 金沢西
▲ 金沢商
かつて『石川と言えば星稜』と言われた時代の長かった星稜が、捲土重来を期して逆襲に出る。毎年好チームを作りながら、金沢、遊学館の2強の壁に阻まれ続け、21世紀になってからはわずか1回しか聖地の土を踏んでいない。あのイエローのユニフォームが甲子園で躍動することを、ファンは待ち望んでいるはずだ。その星稜が、『今年こそは』の思いでマウンドに送るのが、187センチの剛球左腕・森山だ。この投打の中心となる球児は、エース山本・4番松井という星稜のかつて輝きを放ったOBの役割を一人でこなせるほどのポテンシャルを持つ。果たして、最後の機会に甲子園をつかめるか。対する遊学館は、山本監督率いる技術者軍団。理にかなったフォームから素晴らしい球を投げる黒萩をエースに仕立て、2年ぶりの甲子園は目前との認識だ。名将・浅井監督が引退した金沢は、昨年のチームと比べるのは酷というものだが、それでも甲子園を狙えるだけの戦力は整えている。甲子園組も随所にちりばめ、連続の夏を狙う。そのほかでは、選抜21世紀枠候補に名前を連ねた金沢西に注目。古豪の金沢商も、久々に”狙える”チームを作って夏に臨む。夏のVを獲ればなんと46年ぶりという”里帰り”だ。
【福井】(参加29校)
戦い方で結果は変わる。シード校の4戦にかける戦いぶりに注目。
◎ 敦賀気比
〇 福井工大福井 福井商
△ 鯖江
▲ 美方 藤島 北陸
センバツ出場の敦賀気比がトップに上がるものの、不祥事で1か月の対外試合禁止処分を受けた影響がどう出るか。対外試合の経験不足というより、選抜で不本意な負け方をしたすぐ後に事件を起こしたという心のスキが心配の種。一枚岩になって夏の大会に向かっていけるか。戦力的にはエース山本を擁して頭一つ抜ける存在だけに、心と体の”準備不足”に陥らなければいいが。そのライバルのすきを突くのは、名門の2校か。福井工大福井は、今年は実績を残せないまま夏を迎える。しかし百戦錬磨の大須賀監督のこと、夏に仕上げてくるのは目に見えている。北野監督から米丸監督へ昨年監督交代を行った名門・福井商は、夏には圧倒的な強さを見せる。今年は戦力的には2校の後塵を拝するものの、夏の大会になると不思議に負けない”夏将軍”ぶりを見せつけるので、他校としては最も嫌な相手だろう。そのほか、春の県大会では3強がいずれも敗退して、浮上した鯖江、美方、藤島、大野が4強入り。いずれのチームも波に乗れば・・・・との期待を抱かせる。特に福井県は参加校が29校。ということは、シード3校はわずか4試合の勝利で甲子園をつかむことが出来るということ。エースが絶好調ならば、そのエース1本を押し立てる戦い方も十分可能な大会のため、都市部の大会と違い、”大波乱”が起こってもよさそうなのだが。実際は例年通りの結果に終わることが多いが、今年はどうなるのか。