第7回は中国地方。
この地方で唯一のプロ野球チームを抱える広島は、
そのカープが市民球団であることからも分かる通り、
何しろ市民の野球熱が高いところ。
戦前も戦後も、この広島の代表が甲子園で暴れまわる姿は、高校野球ファンにはおなじみだ。
そして岡山、山口もきらりと光るチームが出現した時代もあったが、どうも最近は全国で分が悪い戦いが続く。
地盤沈下が叫ばれる中、復権はなるのか。
今夏の県予選出場校は273校。全国占有率はわずか7%。そのうち広島県の高校が、1/3にあたる34%を占める。
≪中国勢の記録≫
*記録の見方;春⇒選抜大会の成績 夏⇒選手権大会の成績
勝敗; 〇勝〇敗〇引分 勝率 優勝-準優勝-ベスト4-ベスト8
◇岡山地区戦績
2010~2015 春 0-6 .000 0-0-0-0 夏 5-6 .455 0-0-1-1 合計 5-12 .294 0-0-1-1
2000~2009 春 9-11-1.450 0-0-1-1 夏 9-10 .473 0-0-0-0 合計 18-21-1.461 0-0-1-1
1990~1999 春 11-9 .550 0-0-2-0 夏 10-10 .500 0-1-0-0 合計 21-19 .525 0-1-2-0
1980~1989 春 4-6 .400 0-0-1-0 夏 9-10 .473 0-0-0-3 合計 13-16 .448 0-0-1-3
36年合計 春 24-32-1.426 0-0-4-1 夏 33-36 .478 0-1-1-4 合計 57-68-1.456 0-1-5-5
◇広島地区戦績
2010~2015 春 4-4-1 .500 0-0-1-0 夏 4-6 .400 0-0-0-1 合計 8-10-1 .444 0-0-1-1
2000~2009 春 12-7 .632 1-0-0-2 夏 13-10 .565 0-1-0-1 合計 25-17 .595 1-1-0-3
1990~1999 春 14-8-1 .636 1-0-1-0 夏 11-10-1 .524 0-0-1-2合計 25-18-2 .581 1-0-2-2
1980~1989 春 12-13 .480 0-0-1-3 夏 15-9 .625 1-1-0-1 合計 27-22 .551 1-1-1-4
36年合計 春 42-32-2 .568 2-0-3-5 夏 43-35-1.551 1-2-1-5 合計 85-67-3 .559 3-2-4-10
◇山口地区戦績
2010~2015 春 1-4 .200 0-0-0-0 夏 3-6 .333 0-0-0-0 合計 4-10 .286 0-0-0-0
2000~2009 春 5-9 .357 0-0-0-1 夏 8-10 .444 0-0-1-1 合計 13-19 .406 0-0-1-2
1990~1999 春 3-6 .333 0-0-0-1 夏 8-10 .444 0-0-0-0 合計 11-16 .407 0-0-0-1
1980~1989 春 3-5 .375 0-0-0-1 夏 12-10 .545 0-1-0-2 合計 15-15 .500 0-1-0-3
36年合計 春 12-24.333 0-0-0-3 夏 31-36 .463 0-1-1-3 合計 43-60 .417 0-1-1-6
◇鳥取地区戦績
2010~2015 春 0-2 .000 0-0-0-0 夏 2-6 .250 0-0-0-0 合計 2-8 .200 0-0-0-0
2000~2009 春 1-1 .500 0-0-0-0 夏 1-10 .091 0-0-0-0 合計 2-11 .154 0-0-0-0
1990~1999 春 2-4 .333 0-0-0-0 夏 3-10 .231 0-0-0-0 合計 5-14 .263 0-0-0-0
1980~1989 春 5-3 .625 0-0-1-0 夏 4-10 .286 0-0-0-0 合計 9-13 .409 0-0-1-0
36年合計 春 8-10.444 0-0-1-0 夏 10-36 .217 0-0-0-0 合計 18-46 .281 0-0-1-0
◇島根地区戦績
2010~2015 春 0-2 .000 0-0-0-0 夏 2-6 .250 0-0-0-0 合計 2-8 .200 0-0-0-0
2000~2009 春 1-3 .250 0-0-0-0 夏 7-10 .412 0-0-1-1 合計 8-13 .381 0-0-1-1
1990~1999 春 1-4 .200 0-0-0-0 夏 2-10 .167 0-0-0-1 合計 3-14 .176 0-0-0-1
1980~1989 春 5-5 .500 0-0-0-1 夏 3-10 .231 0-0-0-1 合計 8-15 .348 0-0-0-2
36年合計 春 7-14.333 0-0-0-1 夏 14-36 .280 0-0-1-3 合計 21-50 .296 0-0-1-4
【中国地区戦績】
2010~2015 春 5-18-1.217 0-0-1-0 夏 16-30 .348 0-0-1-2 合計 21-48 .304 0-0-2-2
2000~2009 春 28-31-1.475 1-0-1-4 夏 38-50 .432 0-1-2-3 合計 66-81 .449 1-1-3-7
1990~1999 春 31-31-1.500 1-0-3-1 夏 34-50 .405 0-1-1-3 合計 65-81 .445 1-1-4-4
1980~1989 春 29-32 .475 0-0-3-5 夏 43-49 .473 1-2-0-7 合計 72-81 .471 1-2-3-12
36年合計 春 93-112-3.454 2-0-8-10夏 131-179 .423 1-4-4-15 合計 224-291-3 .435 3-4-12-25
中国地区と言えば広島県。”ヒロショウ”こと広島商と広陵の両校の輝きは、高校野球史に彩りを添えている。中国5県は、戦前から活躍の多かった広島、山口に、戦後岡山代表も加わり、昭和30年代から40年代にかけて、甲子園を席巻した。ここ36年間を見ると、そのかつての威光が弱まってきているのをはっきりと感じる。最近の4世代では、すべての世代で勝率は5割を大きく下回り、特に最近の6年間では、勝率はやっと3割を超えた程度。東北、北信越などかつて『弱小』と呼ばれた地域が大きく実力を伸ばしていく中、厳しい戦いが続いている。特に広島を除いた4県の戦績は芳しくなく、ここ6年ではいずれも2割台の勝率にとどまり、1勝をあげるのにも大変苦労する事態となっている。そんな中でさすがに広島県代表は、各年代で優勝を果たし、面目躍如。ひとりで地区を引っ張る形となっている。
県ごとに見ると、70年代までは、強豪県として毎年代表校が『優勝候補』に上がっていた岡山は、ここ36年間で1度も優勝を果たしておらず、決勝に進出したのも1回だけ。しかもその1回も決勝で大差負けを喫したため、ほとんど印象に残らない結末となってしまった。90~00年代に、一時関西が毎年いいチームを作ってきたものの、上位進出までは届かず。勝率を上げるためには、甲子園での勝負強さを見せるチームが代表になることが不可欠だ。
高校野球の強豪、広島県。その中でも高校野球の名門校に数えられる、広島商と広陵。昔から全国の強豪校として名をはせて、広島商は全国制覇7回、広陵は第3回の選抜高校野球大会を制した名門だ。しかし近年、この両校の歩みは対照的で、私学の優位性を生かして選手を集め、環境も整えた広陵が全国の舞台でいまだに輝きを放っているのに対し、県立の商業高校というある意味でのハンデを抱えている広島商は、近年全くと言っていいほど全国の舞台で輝きを放ってはいない。最後の咆哮は昭和最後の年である88年の全国制覇だが、それ以降は甲子園でわずか5勝しか挙げられていない。一方の広陵は、平成に入ってから復活が本格化。中井監督のもと、優勝2回、準優勝1回を含めて27勝を挙げている。そのほかでは、広島商の監督を務めた迫田兄弟が監督をする如水館、広島新庄などの新興勢力が力をつけてきており、広島県の高校野球界は現在でも隆盛を誇る。
山口は、戦後2度のピークを迎えた。一度目は58年~64年まで。池永というスーパースターをも生み、3度甲子園の決勝に進出。強豪県の名をほしいままにしている。2度目は72~74年。かつてとは違う”全員野球”のチームが出場して来て、柳井、防府商と2度決勝まで駆け上がった。そして戦後6度目の決勝進出を果たしたのが、『奇跡の宇部商』の名で呼ばれる宇部商。玉国監督に率いられて、何度も甲子園の舞台で”奇跡”を演出してきた好チーム。決勝ではKKのPLにサヨナラで敗れたが、あの最強軍団に最後まで食い下がった戦いぶりは称賛された。それ以降の山口勢。どうも大型チームが出現することがなくなったが、時折03年の岩国、05年の宇部商など、きらりと光る全員野球のチームが輝きを放つことがある。勝率は4割そこそこまで落ちてしまっているが、『何かをやる』というイメージは、当時のままだ。
鳥取と島根は、山陰地方という豪雪地帯にあり、練習環境、試合環境に恵まれない中、甲子園で何とか勝利をあげようと頑張っている。鳥取は80年代の倉吉北、島根は80~90年代の江の川(現石見智翠館)、90~00年代の開星などが頑張りを見せるものの、なかなか上位には食い込めていない。鳥取の勝率は.281、島根の勝率は.296で、各々4強には1度ずつ食い込んでいる(倉吉北、江の川)。そんな中で、83年春の大社、98年夏の浜田の8強進出は、その爽やかさとともに強く印象に残っている。