亡くなったジャニー喜多川の、凄まじい数に上る未成年者への性加害が取りざたされています。
最近になって文春が蒸し返してキャンペーン的に報道していたのに、他は動かなかったのが…
BBCが特番を組んで、世界の多くの国に知られるところになったとたん、こうなった。
結局、外圧というか、外的要因が無ければ何も変わらない国。
つくづく、私たちの社会には、自浄作用というものが欠けているのだなと。
でも、自浄作用云々は別として、ジャニー喜多川の性加害については…
いまになって指弾する資格が、私にはありません。
私だけではなく、マスコミ、特に芸能マスコミに関係していた人間は…
ほぼ全員が共犯者みたいなものです。
「それ」については、公然の秘密だということを誰もが知っていたのに、隠すことに加担してきた。
ジャニー喜多川の件だけではありません。
性的加害や、性的搾取に関しては、芸能界には、他にも「闇」がたくさんある。
未成年者相手ということ、それに加えて、数的規模の大きさということにおいては…
ジャニー喜多川問題には及ばないにしても。
でも、そうした「強者」の犯罪や反社会的行為に関しては、スルーして、隠蔽に加担して来たのに…
一方で、社会的には弱い立場のタレントに関しては、極めて個人的な問題で、正直言って…
第三者にはどうでもいい、取りざたするのは余計なお世話なラブアフェアであっても…
それを、さも「悪行」のように暴き立て、非難がましく人目に晒して来たのです。
そうやって他人の営業妨害をし、ときには人生を壊してさえ来ました。
自分たちは、聖人君子のような生き方をしているわけでもないのに。
それどころか、芸能人などより下衆なことをしている輩が、仲間内にいっぱいいたのに。
本当に、今になってこんなところに何か書いたところで、罪滅ぼしになんかならないのですが。
そういうのを見たり読んだりして、喜ぶ人間だって悪い、といいますけれど…
大衆はその世界の「強者」たちが、もっとひどいことをしている「闇」までは知らないわけで。
そこをつついたら、もっと喜ばれるのかもしれないけれど…
「強者」を怒らせて、タレントを出さないと言われたり、暴力的な実力行使をされたり…
裏から手を回して、広告をカットされたりしたら困ったり、怖かったりするから、やらない。
そういう「強者」のバックには、指定暴力団や、テレビ局の偉いさんや、大手広告代理店や…
さらには、保守系の政治権力までが味方に付いていたりするから。
強い者の大きな悪に手を出す勇気がないのなら、弱い者の小さな悪を晒し上げる資格はないはず。
なんて、今になって言うのも卑怯ですね。
反省して償いをしたいのなら、その世界から足を洗ったらすぐ、まず大きな悪を取材して…
それを世の中に晒すような仕事をするべきだった。
でも、少しだけ言い訳をさせてもらえるなら…
足を洗おうとする過程において、信頼していた人の手ひどい裏切りにあって、私自身が心を病んで…
悪に立ち向かえるような精神状態でなくなってしまった、という事情がありました。
それで、心を立て直す目的も兼ねて、また学生になって、留学して学び直して…
全く違う分野で、物を書く仕事をするようになったのです。
また、私が「大きな悪」に目をつぶっていた80年代後半から90年代初めにかけては…
「正しいこと」など鼻で笑われる時代でもありました。
どうせ人間だれも、結局は自分がかわいいのだから、自分の欲望にだけ正直になって…
自分がトクをするように、うまく立ち回るのが良いのだと…
「今だけ、カネだけ、自分だけ」という価値観に開き直り、居直るのが賢い人間なんだという時代でした。
それは「社会正義」を掲げて権力に反抗し、敗れた、前の世代へのアンチテーゼだったのかもしれません。
今でも忘れられないのは、当時流行った『俺たちひょうきん族』というテレビ番組の中に出てくる…
ビートたけし扮する「タケちゃんマン」の歌です。
「つーよきを助け、よーわきをくじく。行くぞ我らの、タケちゃんマン」という歌。
彼の芸は、時代に掉さしながら、風刺や批判とは全然違う、単なる開き直りの芸でした。
「オレもそう、お前もそう、みんなそうだよな?」
そうやって自己中心、自分有利でうまくやるのが「正義」で、それ以外は「バカ」だった時代。
それから30年余り経って、いま私たちの国と社会はこの体たらく。
様々な社会現象や、統計(それもこの12年ほどは信用できるかどうか怪しいのはご存じの通り)を見れば…
我々の社会の劣化が進み、崩壊する過程に入っていることは明白だと思います。
こうなってしまっては、もはや責任の取りようもありません。
もちろんジャニー喜多川の罪は、世に明らかにされ、検証され、被害者に償いがされなければいけません。
でも、それで社会が変わるきっかけになるかといえば、きわめて難しいと思います。
さきほども言った通り、芸能界の「闇」は他にもまだまだあって…
「ジャニーズ帝国」が消滅したところで、そこにあった闇が、どこか他の闇に吸収されるだけかもしれない。
他の闇……
せめての罪滅ぼしに、その具体的な名前をはっきり列挙しましょう。たとえば…
バーニング系列会社の闇(「バー系」などと業界の符丁で済ますのもやめます)、吉本興業の闇…
電通の闇、民放テレビ局の闇…
それから秋元康氏をめぐる闇。etc...
芸能界だけではありません。
報道の仕方もまた、あのころはコンプライアンスのコの字もないようなものでした。
若いアイドルが「闇」の犠牲になって自ら命を絶った事件の報道の仕方など、今では考えられない。
芸能界だけでなく、芸能マスコミもあのころは、闇に取りつかれていたのかもしれません。
「作っちゃえよ!」などと平気で言い放つ上司もいました。
今ではあり得ない…のだと思いたいですが、当時は本当にいました。そういうのが。
何もかもがめちゃくちゃでした。
もっとも今は、芸能マスコミに「作っちゃえ」などという人はいないでしょうが、その代わりに…
ネットの作り話、誹謗中傷がひどいことになっていますから。
ネットの中の一般人は、昔のたちの悪いプロよりもっと酷い。
それらがすべて浄化され、行われた様々な行為の償いがされる日など、来るのでしょうか……。
ただ音楽業界についてだけ言えば、芸能プロダクションやレコード会社のプロモートがきっかけではなく…
「ボカロ」のPや、歌い手から、つまりネット空間から出てブレイクする人々が増えてきたこと。
また、この業界の「黒船」とも言えるK-POP系の事務所を通じて、世に出る日本人グループも出てきたこと。
そうした新しい波もあります。
それでも、どうしても日本では、興行=音曲や大衆芸能、祭りの世界(昔の相撲もそうですが)には…
やくざの仕切りがついて回る、というところから、離れられない部分があるようです。
(米国の芸能の世界もマフィアとの絡みがいまだにありますが)
やくざ=右翼でもあり、そのバックには保守系の政治家たちがついている、ということも…
浄化を妨げる要因かもしれません。
ところで、いわゆる「芸能界」とは一線を画して、サブカル系のエンタメ企業というものもありました。
また、この前の記事でも書きましたが、いわゆる「声優業界」というものもあります。
こちらは、最初期の声優たちのほとんどが、どちらかというと左翼な、新劇系の俳優たちだったこともあり…
やくざと関わりの深い「芸能界」とは一応、距離がありました。
(「闇」ということでいえば、芸能界とはまた別の深刻な闇を抱えているのですが)
それでも暴力団というのは、シノギを求めて、カネの臭いがするところにはどこへでも出張って来ます。
時代が進むとともに、サブカル系エンタメ企業に、やくざと関わりのある資本が入ったり…
声優業の世界に、新興勢力として芸能プロダクションや、やくざの息がかかった音楽系企業が…
徐々に進出し、幅を利かせ始めています。
深夜アニメやゲームのコンテンツ数が爆発的に増えて来て、ひとつひとつのコンテンツに…
かけられる予算が、どんどん少なくなってきている昨今。となれば…
「声の芸」に熟練した中堅・ベテラン声優よりも、ギャラランクの安い新人が使われる傾向が強くなります。
そこに、新興勢力の「芸能系事務所」が入り込む余地ができるのです。
また声の演技だけでは、事実上食べて行けない人がほとんどの、声優業界の仕組みを前に…
声優のマルチタレント化、アイドル化が進んだことも…
この世界に芸能プロダクションが進出したり、音楽レーベルの力が増大する原因になっています。
今後どうなって行くのか。
これに関しては「うちの娘」のこともあり、心配しています。
もともと彼女を見出し、また現在所属する声優事務所の社長である、たかみゆきひさ(野口隆行)氏は…
サブカルの世界と芸能界の両方に、片足ずつ突っ込んだような形で、仕事をしてきた人でした。
ところが、芸能界の「闇」にほとほと愛想を尽かした結果、そちらから足を引っこ抜いて…
声優業界に立場を一本化したのでした。
それでも、特に声優ユニット「ゆいかおり」を巡っては、音楽レーベルとの関係に問題が生じて…
結果的には、二人を手放すことになったのですが…
夏織さんは、レーベルからリストラ同然の形で(半分は本人の希望だとは思いますが)放出されたときに…
すぐさま、たかみ社長の事務所に戻って来ました。
唯さんは、まるでメジャーリーグの選手みたいに、いろんな声優事務所を転々と彷徨いながら10年を過ごし…
(旅する声優とか、尻が落ち着かないなどと言われてきましたが…
それだけ居場所を変えても、途切れることなく売れ続けて来たのはすごいかも)
ソロデビュー10周年を機にレーベルを移籍して、それと同時にたかみ社長のもとへ帰って来ました。
これは想像ですが、ソロアーティストとしての契約書の中に「10年間の縛り」があったのではないかと。
「縛り」が解けると同時にレーベルをかえて、古巣にも戻れたのではないか…。
本人がラジオでのコメントで「契約書だけは細かく読まないといけない」と言っていたことがありました。
それで大変な苦労をしたから…なのではないでしょうかね。
また事務所を転々としたのは、セルフプロデュース、セルフクリエイトの志向がものすごく強い彼女が…
その「自由」が保障されるよりよい環境を求めて、試行錯誤した痕跡なのではないかと思っています。
その点で、たかみ社長は、タレントが自分自身で自分をプロデュースしたり、ものを作ったりというのを…
最初の時点から奨励する立場の人だったから、実は「ずーっと戻りたかった」のかも。
いずれにしても、先輩声優の井口裕香さんが「成長してなんだか『女社長』みたいになった」と言っていたのは…
そうやって、誰の指図も受けず、たったひとりでこの業界を泳ぎ渡ってきた…
唯さんの「孤独な航海」を知っているからなのでしょうね。
仲間の声優、瀬戸麻沙美さんは、唯さんと一緒のラジオで…
自分は悩みがちな性格で、いつも周りに「助けてほしい」と思っている、と話したとき…
すぐさま唯さんが「助ける!」というと、それに返して…
「(あなたの)存在に、いつも助けられてるんだよ」と口にしていました。
唯さんという存在のどこにいつも助けられているのか、そこでは分かりませんでしたが…
嘘を嫌い、長いものに巻かれず、妥協せず、自分の道をたくましく進む…
彼女の姿に救われる、のでしょうか。
たかはし智秋さんが「小倉唯ってかっこいいよね」「男前だと思う」と言っていたのとも、通じるかも。
いずれにしても、闇深き芸能の世界に侵食されつつある中…
せめて「うちの娘」には、闇に呑まれず、これからも雄々しくかっこよく、進んで行ってほしいです。
今日のおまけ動画。
次のライブのプロモ用フラッシュ動画です。
映像は7月にあったライブのものです。
(ナレーションの音量に注意)