彼の罪の根拠となっていた自白は警察による事実上の拷問によって作られたものだと。
また物的証拠とされた血の着いた衣類などは、警察と検察が彼に罪をなすり付けるためにわざわざこしらえた…
手の込んだ捏造品だったという事実が公に認められたということ。
44年間死刑囚として過ごし、罪が晴れたときには既に認知症を患い、残された時間もおそらくわずかとなった人への償いなど誰にもできません。
そして私たちにとって恐ろしいのは、警察、検察というものが…
いくら昭和の中期で、戦前戦中の特高上がりの捜査官や、そんな連中の薫陶を受けた捜査官がいた時代とはいえ…
(1966年の事件ですから私は3歳になるかならないかのころ)
何もしていない一般人を、犯人に仕立てるため、あんな手の込んだニセの証拠まで無理やり作り上げていたという、その事実です。
それが犯人を上げる=出世のためだったのか、それとも逃げおおせた真犯人を隠すためだったのかは、今となっては分かりませんが…
いずれにしても、そんなことをした、当時の警察や検察関係者の罪は一切問われないわけで。
改めて国家権力の恐ろしさを思い知らされます。
同時に、死刑というもの自体の是非の議論についても強いメッセージを発していると思います。
無実の罪を着せられて死刑が確定した後に、逆転無罪となった例は戦後に5件あるとの事ですが…
死刑執行されてしまった人々の中に、実際は無実だった例が皆無だと言い切る根拠など、どこにもないわけで。
まして「人権」などというものが、タテマエとしてさえ、まともに入っていなかった旧憲法下の警察・司法となると…
いったいどれだけ多くの無実の、また殺されるほどの罪のなかった人たちが、命を簡単に奪われていたか。
今から考えると恐怖の国家だったわけです。
他人事ではないです。
我々の暮らすこの国が「今」に行き詰まっていることへの打開策として「過去」へと時間を巻き戻そうという力は、確実に働いていると思うので。
その力に逆らわず流されたり、むしろおもねってそれに協力するようなことをしていたら、じきにどんな目に遭わされることか。
答えは、80年ほど前に、はっきりと出たはずなのに。
それについて、おとなとして自覚した人々は、もうみんないなくなってしまいましたからね。
人間は、歴史に学べるほど賢い生き物ではないということでしょうか。
まあ、私たちの国だけではないですけれどね、そんな風に情けない様相を呈しているのは。
アメリカなんか、さらにもっとひどい状況かもしれない。
トランプ再びとなって、中国、ロシアと同じような権威主義国家に変身するのか。
ハリス当選となっても、完全なる国民の分断が起きて、暴動と混乱の末、ひとつのコミュニティとして自壊の道をたどるかも。
世界の至る所で歴史の逆回転と社会の崩壊が「加速」されている気もします。
ネオコンもネオリベも、古典的リベラルもネオナチも、リバタリアンもコミュニタリアンも、全部まとめて押し流す…
そんな歴史の奔流、というか、滝つぼへの落下が始まりつつあるのかも。
人間は自分の生きている時代を特別と思いたがる、というようなことを言ったのは誰だったか忘れましたけれど…
間違いなく500年に1度の、いやもしかすると、数万年に一回あるかないかの大転換点を、私たちを取り巻く世界は迎えようとしているのかも。
必ずしも悲観的な未来ばかりではないとはいえ、やっぱり怖いです。とても怖くて不安。
ひとつだけ確実なのは「安定」の2文字を求めても、それは今、何をしても、どこへ行っても無理だということ。
一回ぐるりと回って、どこへ出ることになるのか。
大丈夫。メタでとても大きな視点から見れば、そうしたものは全部、おそらくささいな事で…
宇宙は引き続き円を描いて循環し回帰して…
無限に続いて行くのでしょう。
それを動かす力、原理は、愛なのだとダンテ・アリギエーリは『神曲』天国篇で書いています。
そういうこと、私の「推し」も、手で「〇」と「∞」のサインを作って言ってましたよ。
ほとんど全部のオタクは、理解してなかったと思いますけれど。
事大主義……もちろんそうでしょうけれど。
でもそんな戯言でも言ってないとこの不安な状況を生きられないですから。
今日のおまけは、こちらの動画にしましょう。