アンを探して Looking for Anne

「赤毛のアン」の島、プリンスエドワード島でオールロケ!第5回AFFF(シンガポール)で最優秀監督賞、グランプリを受賞!

”世界で一番美しい島”で過ごした一ヶ月

2008年12月31日 | 映画製作日記

映画のリポートをさせて頂いている藤本紀子です。いつもブログにお立ち寄り頂きありがとうございます。今回は寒~いカナダ、モントリオールから2008年を振り返り、人生初の体験、プリンスエドワード島での映画ロケの個人的な感想を綴ってみたいと思います。

それは想像を超えた壮絶な世界でした...というのは冗談で...笑)でも半分は本当で、日常ではありえない程、色々な事が起こった濃~い一ヶ月だったことは確かです。

プリンスエドワード島へ行くのは3度目でしたが、いつ来てもこの島の自然の繊細な美しさに魅せられます。8月2日に島入りし、翌日からもう撮影に突入と余裕の全く無かった私ですが、週6日、撮影セットに通う慌ただしい日々の中でも、屋外のセットで、また移動の車窓からと疲れも一瞬でふっとぶような美しい島の自然を感じることが出来て幸せでした。

実は昨年までの夏はスポーツライターとしてMLB(メジャーリーグ)の取材で↓この黒山のような報道陣の群れの中に紛れておりました。(奥の方でお立ち台に立っているのは、去年レッドソックス入りした松坂大輔君。)



メジャーリーグと「赤毛のアン」の世界とは似ても似つかないと思われるかもしれませんが、モンゴメリの文学、特に「赤毛のアン」を読んでいて感じる印象の一つは、私が長らく馴染んだスポーツ競技の世界と共通するものであるという認識を個人的には持っています。それは一言で言うと「フェア」であるという事なのですが。(これについてはまたの機会にでも...)。そして映画のロケ自体は、もう絶対、"乙女な世界"とは無縁の、汗と涙の体育会系であると言い切れます。笑)



ちょっと脱線しましたが、まずは無我夢中で過ごしたクランクイン直後の頃の話しから。

多大なお金と人員が関わる映画のロケは、撮り直しの許されない一発勝負みたいなもので、一分一秒無駄には出来ません。だからそういう事を良く知っているクルーやキャストのクランクイン初日からの集中力、神経の遣い様は半端ではありませんでした。宮平貴子監督とは長い付き合いですが、ロケの間(特に最初の頃)の彼女は、後ろ姿から炎が立ち上がっているかのようで(暴露!)、近づいたり言葉を掛けるのもはばかられるようでした。

この映画「アンを探して」には企画段階から長くおつきあいして来ましたが、一旦撮影に入ったら、もう全ては監督一人の頭の中。何か現場で監督の手伝いが出来るかと思ったけれど、とんでもない。私はミニDVカメラのフレームの向うに居る貴子監督の孤独な背中をほとんど見ているだけでした。

そう、映画監督って大人数に囲まれて動いてはいるけれど、とても孤独な作業でもあると思いました。様々なスペシャリストが集まって、皆が自分の仕事にベストを尽くす。ロケでは誰もが自分との戦いですね。私もここで自分が出来る事を精一杯やろう...そんな風に思いつつ一日一日を過ごしていたら、あっという間に1ヶ月が過ぎました。

ロケの間、私はおもにレポーターとして、メイキング用のビデオと取材を兼ねたスチールカメラでの撮影風景のスナップを担当していました。
映画のセットでの撮影などもちろん初めての事でしたが、シャッター音にしても何にしても音が出がちなので、慌て者の私は大切な本番に音を出さないよう、神経を遣いまくっていました。モントリオールに戻ってからもしばらくは、本番中に音を出して奇跡のような瞬間を台無しにしてしまう...とか、突然自分のカメラのフラッシュが炊かれてしまう...とかいう悪夢にうなされました。笑)幸い、致命的な失敗はぜずに(あ、一度だけつまずいて物を倒しました...焦)何とか無事、撮影を終える事が出来たのですが。

今思うと、ロケ現場というのは、大掛かりな大人の学園祭のようでもありました。もちろんプロのスペシャリストである大人が集結し、体力、精神力、想像力を注ぎ込み、命を張るくらい真剣に一つの作品を作る場なので、学園祭と比べるのは語弊があるかもしれませんが、肩寄せ合って一つの作品を作るという部分で、仲間達と一緒に子供のように純粋に物作りに専念し、産みの苦しみと楽しみの両方を味わった学園祭の記憶が蘇ったりしました。

noriko fujimoto
写真は想い出いっぱいのコールシート(予定表)。毎日、撮影の終わりにプロダクションアシスタントさんから明日の予定として皆に配られます。
シーン番号と撮影時間、場所、それぞれの出演者、必要なセット小道具、お天気、お昼ご飯の時間、キャストをホテルにピックアップする時間や、その日にお誕生日を迎える人への御祝いのメッセージなど細かな情報が書かれています。「アンを探して」では、カナダ人クルーのための英語と仏語での日本語講座のページもアタッチされていて、こちらもとても好評のようでした。

最後に、こんな長い記事を最後まで読んでいただきありがとうございました。

来年も映画「アンを探して」及びブログの応援をよろしくお願い致します。


藤本紀子


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