アクアコンパス3 続編

アクアコンパス3が容量一杯になったので、こちらで続きを開始します。

働くとは、何か 13

2025-02-10 15:01:26 | 社会

 


今回は、日本のありふれた惨めな「働く」状況を紹介します。


初めに、日本に君臨する経営者達の発言を紹介します。

 

 2004年、選手会の古田会長が球団側との話し合いを申し込んだ際、読売巨人の渡辺恒雄は、記者団に「無礼なことを言うな。分をわきまえないといかん。 たかが選手が 」と吐き捨て、さらに別の経営者が、ストをするなら「失う興行収入の損害賠償を請求するぞ」と脅した。
明治時代にタイムスリップしたかのようです。
これが日本を動かしていると自認するエリートの意識です。

 当然、組合のストによる賠償責任は法的に免除されています、大戦後以降ですが。
実は、この手法はかつて国鉄民営化の折に、絶大な力を発揮していた。
後にJR西日本社長になった井出は、国鉄民営化を牽引した三羽ガラスの筆頭でした。
彼は、当時、民営化に反対する国労と動労に対して、「ストの損害賠償202億円」の請求を思いついた(金額はふっかけ、現在では2倍の価値か)。
この莫大な請求額は、組合員に惨敗を強烈に印象付け、動労は日和見、国労から脱退者が続出し、数年で腰砕けになった。
この脅しが効いたのは、国が憲法でスト権を認めておきながら、後の法律で公務員、国鉄を除外したからです。注1
これを突いて、希代の策士だった井出は国鉄史上初めて賠償請求を行った。

 

実は、この井出が君臨した87年誕生のJR西日本で、時代遅れの風土が勢い付くことになった。

 信楽高原鉄道衝突事故1991年、服部運転士自殺事件2001年、福知山線脱線事故2005年、これら多数の死者が出た痛ましい事故には共通点がありました。

 どれもJR西日本の運転士が関わっており、その背景に壮絶な個人虐待の「日勤教育」がありました。
二つの事故後、井出や経営幹部は、口を揃え、事故は運転士に問題があったとし、謝罪することを拒否し続けた。
世論はJRの社風である異常な「日勤教育」に疑いの目を向けたが、結局、経営者の責任追求には至らなかった。
魚は頭から腐ると言われるが、日本だけは特別で、トップの責任は除外され、この状況は福島原発事故へと連綿と続くことになる。


日勤教育とは何か?

 


「テレビで取り上げられた日勤教育」

 事故やミスを起こした乗務員を、通常勤務から外し、再発防止の為に特別な教育過程を数日から1ヵ月間に亘り、実施する社内制度です。
これだけ聞けば、何ら問題は無さそうですが。

 実は、個人の過失を徹底的に責めることで意識改革を目指す、馬鹿馬鹿しい時代遅れなものでした。
例えば、運転手は、電車出発が50秒遅れた理由と、その反省文を何日間も書かされ続けるのです。この時、被告は1日中、一室で5人程の管理者に囲まれ、トイレ以外の自由を制限され、針の筵に置かれるのです。
もし彼が、それは「ルールが定まっていなかったので自己判断で安全確認を行ったので遅れた」とでも言おうものなら、会社への不備をあげつらった事へのみせしめとして、班長が教育日数を幾らでも引き延ばした。
さらに気に食わなければ、草むしり、また自分のミスを手当たり次第に他者に報告させる等のいじめが平然と行われた。
また口髭を生やしているだけで、剃る迄、何日も上役が説教し、挙句には「首をくくって死んでも知らないぞ」と脅迫し続ける。
口髭の件は社内規定に無いのですが、管理者は部下に絶対服従を強いる。注2.

 上記の三っの事件・事故は、運転士が「日勤教育」を非常に怯えていて、「余計な安全確認より、不安があっても決められた通りに行う」ように仕向けられいた事が原因でした。
ちなみに、服部運転士の自殺では50秒、福知山線脱線事故では90秒の遅れが発端となった。


この日勤教育は著しく愚策でした。

 現在は、小さなハットするような事故未遂が数多く起きた後に事故が発生すると考えます。
従って、事故を防ぐには作業に関わる、その人の精神的、物理的な危険要因を取り除くことに主眼を置きます。
作業者の不安や不満を和らげ、うっかりミスを防ぐ安全装置の設置を行う科学的手法が常識です。
むしろ個人の責任を追求することは、萎縮させるだけで、実際、ミスの報告が出なくなり、対策が出来ないと言う実害があります。


次回に続きます。

注1.公務員のスト権剥奪について、日本の労働団体がILOに訴えているが、ILOはこれを不適切としたが、複雑なので、日本政府に充分話し合い、改善しなさいと匙を投げられていた。

注2.「JR西日本の大罪 服部運転士自殺事件と尼崎脱線事故」鈴木ひろみ著、五月書房、2006年刊、に詳しく日勤教育の実態が描かれています。


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