アクアコンパス3 続編

アクアコンパス3が容量一杯になったので、こちらで続きを開始します。

働くとは、何か 12

2025-02-06 08:55:27 | 社会

今まで、日本とヨーロッパの歴史を「働く」視点から見て来ました。
日本では大戦までと国鉄民営化、ヨーロッパでは20世紀初めまでの組合運動史。
さらに私達が見過ごしている「働く立場」の異変についても指摘しました。
今回は、少し基本的な問題を語ります。


私達は、働いているのでしょうか? それとも働かされているのでしょうか?

 奈良時代から大戦後まで、ほとんどの民は労働の成果(米、賃金)の一部しか、自分の物になりませんでした。
成果の大半を、古代では天皇や将軍周辺に吸い取られ、近代では殖産興業、やがて自らの命と一緒に戦争に捧げる事になりました。
この状況は「働かせれていた」と言えるのではないでしょうか。
それは1400年もの長きにわたったのです。

「日本人は諸税と社会保険料で収入の約60(か50)%を納めている」
この率は上昇傾向にあります。注1

問題は、「働く人」国民が、この内の幾らを還元(再分配)されているかです。
北欧の国民は53~66%を納めるが、多くが無料(医療、教育、福祉)なので、これに比べると日本の還元は少ない。
この違いは、政府の腐敗に関係がありそうです。
北欧で汚職事件は聞きませんが、日本では日常茶飯事です。
議員が賄賂を貰って企業や業界に税等を優遇し、規制を外したり、また選挙地盤優遇の為に鉄道や道路の建設ルートを恣意的に行う事は日常的です。
しかも、徴収が「働く人」と金持ち、企業で公平に行われているとは思えない。

しかし問題は、これだけでは無い。

働く状況はどうなっているのでしょうか?

例1
AとBの二人が、一つの田で稲を育て収穫した。
地主は、お気に入りのAからは、他のBの値より倍の値段で稲を買ってくれた。

例2
ある田Cでは、地主が灌漑工事を行い、収穫量は以前よりも2割増えた。
別の田Dでは、灌漑工事が行われなかったので、収穫量は変わらなかった。
田CとDの両方の小作人は、同じ収穫量を求められた。

例3
網本が、多数の漁師に漁獲量を毎日競争させ、一番少ない者には罰としてその日の手間賃をやらなかった。

これは江戸時代の話ではなく、現代でも横行している。

例1は、正規と非正規雇用の問題です。
例2は、企業の設備投資による生産性や、高付加価値製品有無の問題です。
例3は、コストダウンの目標管理による社員間競争の問題です。

 

「同じハーネス組み立て作業ですが、左はドイツ、右は日本です」
違いが分かりますか?

私が35年前に北欧デンマークの工場視察をした時のカルチャーショックは凄かった。
女性作業員は大きな円テーブルを囲んで座り、電気回路基盤の目視検査をしていた。
彼女らは、それぞれ私服で、日本のようにコンベヤ上の流れ作業の立ち作業では無く、時間に急き立てられていなかった。
明らかに、何を優先しているかが明白です。
このような国が、現在も世界トップレベル(幸福度とGDP)に有り続けているのです。
日本の悲惨な状況に、多くの方は気にも留めない。

なぜそうなのか?

1.劣悪な「働く立場」へとじわりじわりと、追い込まれて来た。
2.今の「働く立場」が最良であると洗脳されて来たので気付かない。
3.今の「働く立場」が悪いとしても、改良が可能とは思えない。
4.より人間らしい「働く立場」が世界で実現されていることを知らない。
5.もしそうであったとしても、我々に変革など出来ないと諦めている。

これらを、一つ一つ解き明かす事が、この連載の役目だと思っています。
どこまで出来るか分かりませんが、分かり易く、語って行きたいと思います。


次回から、また具体的に見て行きます。

 


注1: 上のグラフから負担率の様子が掴めます。国は毎年赤字で、国債で借金し、徴収した額のほぼ倍を国全体に支出(還元)している。そこまでしているのに、税の役割である再分配、所得の格差を埋める機能をあまり果たしていない。さらに驚くべきことに経済が好転しない。結局、どこかで盗まれているか、無駄に捨てられているか、分配が歪められているのだろう。

 


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