白い花の唄

笛吹カトリ(karicobo)の日記、一次創作SF小説『神隠しの惑星』と『星の杜観察日記』のブログです。

14.青い森の底には

2009年08月22日 20時16分50秒 | 神隠しの惑星
 キジローはまだ呆然として、ビスケットの味もよくわかっていないようだった。無抵抗にサクヤの差し出したお茶を飲み、渡されたビスケットを口に押し込んでいる。  イリスはエクルーに耳打ちした。「どうしてあの黒い男は、サクヤにべったりはりついているんだ?」 「サクヤが医者で、彼はもっか患者だから」 「それにしても、ずうずうしすぎやしないか。俺がひとこと言ってやる」  エクルーが慌てて止めた。「イリス。いい . . . 本文を読む
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13.スノーホワイトと7人のドラゴン

2009年08月22日 20時15分28秒 | 神隠しの惑星
「107全部閉じてたと思ったら、今度は一斉に全部開くなんて。この3年、こんなこと初めてだよ」  エクルーが言った。 「俺だって、17年生きてて初めてだ」  グレンは大きな息を吐いた。  ゲートが開いているかどうかは、一目瞭然だった。昨夜と泉の明るさが全然違うのだ。祠の上の縦穴から青く輝く光が漏れている。脊梁山地沿いに、少なくとも5つ向こうの泉の光まで見えていた。 「他の苗床の定点カメラ、ご覧に . . . 本文を読む
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12.Green flush in Dark eyes. 

2009年08月17日 18時08分37秒 | 神隠しの惑星
 岩山の中腹にある泉の祠は、外が砂嵐のせいで薄暗いにもかかわらず、明るかった。  泉の中から透明な青い光が漏れているのだ。  祠で車座になって、メンバーの顔合わせをした。キジローはちょっと落ち着かない気分だった。  工学博士という、いかにも素人臭いオッサン、髪に植物が棲むとかいう、ロクに口も利けない少女、しっぽと長い耳をもつ原住民の青年。  地球型でない異星人と出会ったり、一緒に仕事をしたこと . . . 本文を読む
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11.白い鳥

2009年08月17日 18時04分59秒 | 神隠しの惑星
 全く、辺境とは聞いていたが……ここまで最果ての土地だとはキジローも覚悟していなかった。  ボウズは最低限の情報しかくれなかった。宙港、宿、そこそこ食えるダイナー。着いたら連絡して、と一言だけノートがあった。  ところが、着いてみると磁気嵐で一切通信がつながらない。まだ誘導システムが使えるうちに、星に降りられただけでもラッキーだった。  宿のベッドは、マットはかび臭く、シーツは汗臭かった。これ . . . 本文を読む
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10. White flowers for you.

2009年08月17日 01時44分01秒 | 神隠しの惑星
 キジローはどさっとシートにへたり込んで頭を抱えた。 「キリコも……? その実験のためにさらわれたっていうのか? だが、キリコは普通の子供だぞ。能力者なんかじゃない」 「資質があったんだと思う。だって、あんたも直観力と感応力が強い」 「俺が……? 俺は……!」 「さっき、俺の思考に振り向いたじゃないか」  キジローは愕然としてしまった。 「俺のせいなのか……?」 「ちがうよ、たまたまそういう血筋だ . . . 本文を読む
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9.黒い男

2009年08月17日 01時37分35秒 | 神隠しの惑星
 俺は緑の壁に囲まれた窓も扉もないブースにいた。  大小無数のモニターがあるのに、知りたい情報を引き出せない。  ふいに、背後の壁をすり抜けて黒髪の少女が入って来た。おかっぱの髪がゆれた。一瞬、サーリャかと思った。  でも、もっと大きい。ずっと捜していた友人の娘だと気づく。  君の父さんも、隣りの船に来てる。一緒に帰ろう。  そう言おうとした瞬間、心臓に痛みが走って、気がつくと俺は床に転がっ . . . 本文を読む
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登場人物イメージスケッチ

2009年08月12日 18時45分59秒 | 連絡帳
主な登場人物のイメージです。 イメージが限定されたくない方は、見ないでくださいね。 画像があった方が話が追いやすい方はどうぞ。 『神隠しの惑星製作委員会』 そのうち、ストーリー内の場面なども描ければ、と思い修行中。 . . . 本文を読む
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8.HAPPY EVER AFTER

2009年08月12日 12時31分25秒 | 神隠しの惑星
 翌朝早く、グレンはルパを連れて集落に帰った。厄災について一族で相談するために。イリスは泣き疲れて、眠ってしまった。嵐が完全にやんだので、ジンはまた家に戻ることにした。イリスはまだ腫れぼったい目で起きてきて、ハンガーまで見送った。 「ギプスが取れるまでに、イリスがうちでも日光浴できるように温室を作っておくから。ここみたいに立派なのはムリだが。実は昨日もその設計図引いてて、来るのが遅れたんだ」 「ウ . . . 本文を読む
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7.不吉な予言の成就

2009年08月12日 12時15分37秒 | 神隠しの惑星
 昼近くまで寝こけているので、エクルーは二人を起すことにした。 「ジン、磁場嵐が弱って来たんだ。いっぺん自分ちに帰るなら、今がチャンスだぞ。夜、もう一回弱いのが来るらしい」 「ああ、スマン。しっかり寝ちまって。ちょっと帰って着替え持ってくるよ。お前の借りたまんまだもんな」 「別にそれはいいけど」  ジンが憮然と言った。 「サイズが合わないんだよ。いろいろと」 「サクヤが、こっちで洗濯するから汚れ物 . . . 本文を読む
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6.青い花の名前

2009年08月11日 01時29分01秒 | 神隠しの惑星
 ミミズクは温室を一巡して、岩山に戻っていった。ヘドヴィクがいなくなったので、水中に隠れていたホタルたちが飛び始めた。 「腹減ったな」ぽそっとエクルーが言った。 「あら、ホント。あなた、帰って来たままこの騒ぎだったわね。何か台所を見てみましょう。あの子もポタージュか何かだったら飲めるかもしれないし。ジン、ここ任せていい?」 「おう。で、何をしたらいいんだ?」  サクヤは温室の入り口に一番近いベンチ . . . 本文を読む
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