白い花の唄

笛吹カトリ(karicobo)の日記、一次創作SF小説『神隠しの惑星』と『星の杜観察日記』のブログです。

朱い瞳の魔法使い (その3)

2024年08月31日 10時44分34秒 | 星の杜観察日記
 東屋の横にはつくばいがあり、滝から水を引いて、いつでも綺麗な水が浅い水盤を満たすよう工夫されている。鹿威しはない。東屋に席を設けて茶会を行うこともあるので、つくばいには手水石の他に飛び石や前石を置いて、お着物姿の客が柄杓で手を洗えるようにしている。でも手水石の一番の客は野鳥だ。父は小さな鳥でも立てるように浅い水盤にしたので、今もキクイタダキが水浴びしている。つくばいの周囲はあまり和風とは言えない . . . 本文を読む

紅い瞳の魔法使い (その2)

2024年08月29日 16時48分02秒 | 星の杜観察日記
 私はニュートンの小惑星探査機の記事を開いた。何ごとも視覚イメージがあった方が理解しやすい。「瑠那、小惑星帯って知ってる?」「へ? 火星と木星の間にあるとかいう?」「そう。小惑星は互いに衝突してはより大きな天体になったり、消失したりを繰り返していて、鷹史が来たのは今では無くなってしまった準惑星のひとつからでした」「でも空気とか無いんでしょ」「そう。だから地 . . . 本文を読む

朱い瞳の魔法使い (その1)   (語り手: 咲也)

2024年08月28日 17時49分12秒 | 日記
 年の離れた妹がずっと待っていた人が、杜に現れた。妹といっても血は繋がっていない。私の祖母が、“私たちに絶対必要な子なの。私たちにはなかった因子……魔女の系譜を継ぐ女の子。それに……とても優しい子なの!”と言って見つけて来た少女だ。我が家の養女として迎えて8年になる。彼女のおかげで祖母……桜さん(私たちの杜は女性がやたら多いので、役割でなくファーストネーム . . . 本文を読む

白い花の唄 (その1)  (語り手: 都)

2024年08月26日 16時08分19秒 | 星の杜観察日記
 私は3度、竜宮に下りたことがある。一度めは私が生まれた時。もちろん覚えていない。母が竜宮まで下りて、竜宮さまに頼んで私をもらって来た、と話してくれた。二度めもあまり覚えていない。やはり母が一緒だった。竜宮に落ちた2歳の私を、母が迎えに来てくれた。その後、なかなか昏睡から覚めない私を起こしてくれたのが鷹ちゃんだ。 三度めは、鷹ちゃんが連れて行ってくれた。この時の記憶はと . . . 本文を読む

STOP! 桜さん! (その1)  (語り手: 葵)

2024年08月25日 22時14分21秒 | 星の杜観察日記
 14歳になる2ヶ月前のことだった。2歳上の姉、紫(ゆかり)と2人、母の自室に呼ばれた。母と話すのは苦手だった。姉といるのも緊張する。美人の母や姉と、私は似ていない。大好きな父と似ていると言われるのはうれしいが、でも参道町随一の美人と謳われる母と似てない、と言われるのは別の話だ。それに美醜とは別の問題がある。私の家は神社だ。それ . . . 本文を読む