『しゃ…しゃぶいっちゅーの(笑)』
今年は暖冬やなんてテレビでゆうてたのに
現実はこんなに寒い
11月に入ってから寒さも染みるし
日が落ちるんもめっさ早くなってきた。
その寒さ…
全身に染みるっちゅーーーの。
『はぁーーー』
ため息ひとつ
今日は久々に現場で失敗して真咲先輩に怒られ…
カメラマンさんに呆れられて…。
あたし何やってんのかなぁ…
一生懸命やってるはずやのに空回りの毎日。
結果をださんな生き残れないとまで言われるこの世界。
アシスタントからのし上がってチーフになってこそ好きなことが出来る
情けなさ過ぎてさっきまで会社のトイレで籠って泣いてた。
こんなん入社して何回目かな…。
あかんあかん ネガティプになったらどん底までいってまうやん
明日も仕事…仕事やんなぁ…
あたしこの仕事に向いてへんのかなぁ…
★★★
なんとか家へとたどり着く
ぱんっ ぱんっと両手で頬を叩き気合いを入れる
『大谷を心配させたらあかんっ 気合や気合!!』
さっきまでのネガティブを丸めて空に投げる(笑)
(そんなん形ないけど…)
『ただいまーーー♪』
『? ♪ ♪ 』
玄関開けたらお風呂場のあたりからご機嫌な鼻歌が聞こえてきた
あーこれって海坊主の新曲ちゃう?
ちょっとだけ顔が緩んできた。
あたしはコートを脱いでお風呂場に直行した。
『大谷ぃーーただいまーーー!!』
ドア越しに声をかけたら
『おーおかえりっ』って返ってきた。
ちびーーーっとドアを開いて…
『お風呂…一緒に入ってもええ?』
『おぅ 大歓迎や(笑)』
★★★
あわあわぶくぶくのバスタブ…。
今日はあわあわバブというのんが入ってるんやなぁ…。
『んーーーーきもちええーーあったかーー♪』
二人で入るにはちっと狭いけど(笑)
なんとか隣に身体を沈めた。
『で…なんなん?小泉一緒に入るんハズいって嫌がるのに
もしかして今日は甘えたい日ってやつか?』
『んーーー。』
目の前で笑う大谷
あたしはその笑顔を見た瞬間緊張の糸がはらりっと切れた。
そして涙が溢れてきた
『どうしたんや?なんかあったんか? リサ…』
めったに呼んでくれん名前呼びにあたしの涙腺は崩壊した。
大谷はあたしの頬を両手で包んだ。
『あんな…また現場で失敗して…真咲先輩に…』
『ん…。』
『あたしめっちゃ頑張ってる…つもりやねんけど…初歩的なミスで
カメラマンさんなんか呆れてしもて…それで泣けて…』
『うん。』
『泣いてるんは悲しいんやなくて自分がゆるせんくて…だけど…』
無意識につかんだ大谷の手に力が入る。
大谷は握り返してくれる
『あんな…大谷先生はこう思うねん(笑)おまえは成長できる』
『へっ これ以上背・・・』
『誰も身長の事はゆうてへんやろ』
『あーー』
『失敗して悔しいとかゆるせんとか思えるんやったら大丈夫やし
リサが頑張ってんのはオレも先輩も知ってるはずや!』
『そんな…わけ』
『あるっ。大谷先生がゆうんやから大丈夫や。リサは成長できる』
そう言い切ってあたしの涙を指で拭った。
大谷に大丈夫ってゆわれると…
ほんまに大丈夫であたしも成長できるんやって自信も生まれてくる
『とにかく 明日も明後日も…がんばれ応援すんでっ』
『あいっ大谷先生。あたし頑張るっ』
単純でもええ…
こうして大谷がいてくれて励ましてくれるなら
あたしは強くなれる
『大谷…ありがとう』
涙から一転の笑顔のあたしに大谷も嬉しそうに笑い返してくれた。
END
<おまけ>
『で…せっかく一緒にお風呂やから…なっリサ。』
『えーーーーーー』